第344回 定例県議会 一般質問要旨
質 問 日:令和元年6月19日(水)
質 問 者:相崎 佐和子 議員
質問方式:分割方式
1(1)~(2),2(1)~(2),3~4
1 広報の充実について
(1)広報官を活用した広報の強化について
1点目の質問は、広報官を活用した広報の強化についてです。
私は、前職が伊丹市議会議員でございますが、その前は兵庫県の広報専門員を務めておりました。わかりやすく親しみやすい県広報を進めるというミッションの元、テレビやラジオや広報紙など様々なツールを通して県の広報に取り組んだものです。そのため、県広報には思い入れがあり、今回質問に取り上げた次第です。
現在の県広報は、昨年度に外部からの専門家である広報官並びにメディアディレクターと編集・デザインディレクターを設置し、積極的で戦略的な広報を展開中です。「兵庫五国連邦(U5H)プロジェクト」や「ヒョーゴアーカイブス」など、これまでにないユニークな県の魅力発信も始まっており、注目を集めているところです。
そもそも行政の広報は、2種類がございます。情報提供と魅力発信です。
1つ目の情報提供は、県民に届けるべき情報を確実に提供することです。県では、様々な媒体を駆使してタイムリーに県政情報を発信していますが、ともすれば行政広報は難しい・硬い・分かりにくいと指摘される中、兵庫県の情報提供は適切・的確に実施されているのでしょうか。そこで情報提供について、ノウハウとアイデアを持った広報官がアドバイザーになってほしいのです。助言や研修などを通して、庁内全体のメディアリテラシーを向上させ広報力のレベルアップを図る。デザイン力の向上、SNSなど時代にあったツールの活用、住民を巻き込んだ参画と協働型の手法など、様々にあります。職員全員が広報の意識と力を有するようになればと思います。
行政広報は2種類あると申し上げました。2つ目は魅力発信です。街の魅力を戦略的な方法でPRして地域を活性化させるという広報です。
これにはまず、何を目指すかという明確な目的が必要です。私は兵庫県の場合、移住定住を促進する、つまり「住みたい兵庫、住み続けたい兵庫」を目指したいと考えています。
この目的を実現するには、県民愛を高めることが重要と考えられ、私は現在実施されている「兵庫五国連邦(U5H)プロジェクト」で進めるのも効果的な取組と捉えています。
戦略的広報の成功例として、弱点を逆手に取るという手段があります。兵庫県は旧国が五国存在し統一的な広報が難しいとされてきましたが、多様性に富んでいることを前面に押し出した「兵庫五国連邦プロジェクト」は、私は面白いと思いました。“面白い”“あるある”の段階である現在から、今後どう展開するかがカギだと捉えています。
そこで伺います。県広報について、まず情報提供については、広報官を中心に県庁全体の広報力アップを図るべきと考えますが、これまでの取り組みの効果と今後の展開をどう考えておられるのか、また、魅力発信については、住みたい街兵庫、住み続けたい兵庫の実現につなげるために効果的と考える「兵庫五国連邦プロジェクト」について、次の展開をどのように進めようと考えておられるのか、当局のご所見を伺います。
(2)地域創生における戦略的広報について
次に、具体的な取組における広報について伺います。
先程も言いましたように、私は兵庫県を「住みたい兵庫、住み続けたい兵庫」にしたいと考えており、そのために移住定住の促進に関する取組の情報発信が重要と考えています。
まず、「住みたい兵庫」にするには、移住促進をはじめ様々に取り組んでいるコンテンツを加味し、兵庫県に住みたいと思ってもらえる全体的・戦略的なPRを打ちたいところです。そして「住み続けたい兵庫」にするには、実際の兵庫県での生活を県民に満足をしてもらうことであり、福祉・労働・医療などが実際に充実していることが肝要です。
県では2015年10月に「兵庫県地域創生戦略」を策定し、少子高齢化の進展や本格的な人口減少の中にあっても、活力ある地域社会を実現するために、様々な施策を展開されておりますが、その取組を知ってもらわないと意味がありません。そのためには、広報官にアドバイスを受け、戦略的な情報発信に努める必要があります。
そこで伺います。「住みたい兵庫、住み続けたい兵庫」を目指し、どのような情報発信に取り組まれてきたのか、また、今後の展開をどのように考えているのか、お伺いします。
2 男女共同参画の推進について
(1)推進に向けた取組状況について
2点目の質問です。男女共同参画の推進についてです。
男女共同参画社会とはどんな社会でしょうか。2002年4月に施行された兵庫県の「男女共同参画社会づくり条例」には、「男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」だと定義されています。この定義の通り、女性や男性などの性別にとらわれることなく、全ての人が1人の人間としてその個性や能力を十分に発揮できる男女共同参画社会をつくりたいと考えます。
しかるに現状、女性の出産育児によって職を離れ、30代を中心に働く人が減るM字カーブは年々改善されていますが十分ではありません。また、男性の育児休業は地方公務員や民間企業においては、国が第4次男女共同参画基本計画に示す取得目標値に半分にも至っていません。兵庫県が昨年実施した「人権に関する県民意識調査」では、男女の性別による固定的な意識(男は仕事、女は家庭など)に問題を感じている人が34.8%、昇給・昇進の格差など職場での男女の待遇の違いに問題を感じている人が30.6%で、3割を超える県民が男女共同参画の現状に問題を感じています。
もちろん様々な考え方や生き方があって当然です。大事なことは、その生き方や考え方が性別によって阻まれることなく、その人が望むカタチが選択できること、多様性を認め合えることではないでしょうか。それには制度の改善と意識の醸成の双方からの取り組みが必須であり、行政はそれを進める役割と責任があります。
県条例にも「男女共同参画社会の形成についての基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施するものとする」と、県の責務として取り決めています。
そこで伺います。兵庫県では男女共同参画社会の形成について、現状をどう認識し、今後どう取り組むべきと考えているのか、当局のご所見を伺います。
(2)男女共同参画の推進に向けた県庁職員の環境整備について
続いて男女共同参画について、具体的な取り組みを掘り下げます。
男女共同参画社会を形成するには、特効薬はなくあらゆる分野であらゆる取り組みを進めることが肝要です。ただ、多岐にわたるため「隗より始めよ」ということで、形成の責任と役割を担う県庁内での取り組みをピックアップします。
私が気になるのは、まず県庁男性職員の育児休業です。国では男性育休取得率の目標値を2020年で13%としていますが、6月4日に発表された2018年度の速報値は6.16%で約半分にも至っておらず、取得が進んでいない現実が明確化しています。内閣府が実施した2016年度の都道府県別の常勤の男性職員育児休業取得率の調査では、兵庫県が3.8%。上位の岐阜県32.6%、愛知県29.3%、福島県26.4%。広島県22.1%には遠く及ばず、近畿圏内でも下から3番目です。
産後女性の死亡率の原因の1位は自殺であり、産後うつの問題が顕在化している現状下、産後の家庭における男性のサポートは重要です。そのためには、男性の育休取得は推進したいところであり、兵庫県庁で高い取得率を示すことが県下の企業等に大きな波及効果を与えると考えます。
男性の育休取得が進まない一般的な要因として、制度が不十分であること(休暇中の給料が保障されないなど)、仕事内容や昇進に影響が生じること、取得しにくい風土があることなどが挙げられます。県庁において、このような要因が存在することなく、男性職員が育休を確実に取得できる状況が整備促進されなければなりません。
もう1つ取り上げたいのが、非正規職員の休暇です。実態として、非正規職員における女性の割合が高いと捉えていますが、男女共同参画の推進において、女性が希望すれば働ける、働き続けられる環境の整備が大変重要だと捉えています。現状を鑑みますと、正規職員や大企業の正規社員は産休育休、介護休暇などの環境が整いつつあります。また、離職して子育てに専念するという選択は、1つの選択肢として尊重されるべきです。課題は、妊娠出産育児や介護などのライフステージと並行しながら働きたい、働き続けたいと希望する方が、制度が整っていないからと雇い止めになった、前例がないからとか子育てに専念するべきだとの圧力で退職を余儀なくされたりなど、制度や意識の壁に阻まれてその希望を選択できないことです。
この課題は、非正規労働者において顕著です。兵庫県庁で約15,000人おられる臨時職員・非常勤職員などの非正規職員が、希望すれば働き続けられる制度と風土にあるのでしょうか。来年度から会計年度任用職員制度への移行が予定されていますが、休暇をはじめ処遇がどうなるかを懸念しています。
そこで伺います。男女共同参画の推進における県庁職員の働き方において、まず男性職員の育児休業について現状をどう認識しており、今後どんな手法で取得率向上を進めるのでしょうか。あわせて、非正規職員の休暇についての制度整備や意識醸成について、不十分な面もあるのではないかと感じていますが、来年度からの会計年度任用職員の制度構築において十分な考慮がなされるのか、当局のご所見を伺います。
3 伊丹空港の今後の展開について
3点目の質問は、伊丹空港の今後の展開についてです。
5月11日、関西3空港懇談会が開催されました。関西国際空港、大阪国際(伊丹)空港、神戸空港の関西3空港の最適活用法、今後のあり方について官民で協議する懇談会です。3空港が関西エアポート株式会社の民間企業による一体運営となった事、インバウンドの増加により航空需要が拡大している事、昨年の台風被害の教訓から災害時における3空港の相互補完が求められている事などを背景に、懇談会では伊丹空港と神戸空港の国際線就航を含む規制緩和が焦点となりました。結果は、神戸空港は発着回数上限1日60回から80回に引き上げ、運用時間22時から23時までの延長、国際線就航は2025年の大阪・関西万博を見据えて検討となり、一方の伊丹空港は現状据え置きとなりました。
関西3空港の将来像や神戸空港については、先の代表質問でも取り上げられておりますので、私からは特に伊丹空港について伺います。
伊丹空港は、都市部に存在する利便性の高い空港です。運用時間7時~21時、発着回数上限1日370回なる枠組みの中で、2018年度1,630万人の方にご利用いただいています。地元として、安全と環境(騒音)の観点から、現在の時間や便数の運用について大幅に拡大することは、慎重な議論が必要と捉えています。
一方で、現在就航が規制されている国際線については、安全と環境に万全を期したうえで、就航可能にできればと考えます。今後、予定されている大阪・関西万博などによる今後ますますのインバウンドの増加に対応するために、また災害時に海上空港である関空や神戸空港の利用が困難になった場合に対応するために、伊丹空港は国内線に限るとの規制を緩和するのが望ましいと考えます。これは伊丹空港のみの利益誘導や活性化を目論んでの話ではなく、オール関西での航空需要拡大への対応と経済活性化を鑑みて申し上げております。
伊丹空港の課題である騒音については、一部地域では環境基準値を上回っていますが、今後低騒音機の開発が進む中で、いっそう課題の緩和が進むであろうと予測されています。安全と環境に万全の配慮をした上での国際線就航への規制緩和は、地元の伊丹市議会でもコンセンサスが取れている事柄です。
もちろん、今回の関西3空港懇談会の結論を否定はしておりません。知事をはじめ関係者の方々が尽力されたことに感謝をしており、神戸空港の規制が緩和されたことにおいて「扉は開いた」「まずは第一歩」と認識しています。ただ、伊丹空港においては、オール関西の活性化・災害時のリスクマネジメントの観点から、引き続き国際便復便のスタンスを変えずに主張していただきたいと願っています。
そこで伺います。今回の関西3空港懇談会における伊丹空港の方向付けについて、どのように捉えておられるのか、そして今後も伊丹空港については国内線に限定されている規制の緩和を要望するというスタンスを維持し、引き続き国への働きかけ等に取り組んでほしいと考えておりますが、当局のご所見を伺います。
4 特別支援教育人材への支援について
4つ目の質問は、特別支援教育人材への支援についてです。
未来を担う人づくりは重要であり、教育の充実は兵庫県において全力で取り組むべき施策です。「子どもを学校に行かせるなら兵庫県」と、教育の視点で選んでもらえる兵庫県にしたいと思っています。
私は市議時代12年、教育について様々な要望等を伺ってきました。子をもつ保護者、見守る地域の方々、学校現場の先生方からの要望等についてです。全てが貴重で大事な内容ですが、中でも学校現場から特別支援教育の人材が不足しているとの声を多くお聞きしました。ある公立小学校の校長先生が仰った話が印象に残っています。
いわく「近年、特別な支援を必要とする児童が急増している。我々はきめ細かく適切な支援をしたいが、人材が不足しており、目が届かず手が回りません」とのこと。実際に現場を視察し、その通りだと実感したのを覚えています。さらに伊丹市内の学校の校長先生や教頭先生に「特別支援教育の人材は足りていますか」と聞くと、異口同音に「足りていません」と回答されたのも、現場の悲鳴を聞いた気持ちになったものです。
このように、公立小中学校において、特別支援学級の在籍児童生徒、通級指導を必要とする児童生徒が急増している現況下、現場では特別支援教育の人的支援を必要としています。ではどんな対策ができるのか。基礎自治体である市町では、地方財政措置されている特別支援教育支援員・独自措置である介助員などの増員を進めています。しかし財政負担が大きいこともあり、県からのいっそうのサポートが望まれるところです。
では県でどのような充実策が可能か。2つあると考えます。
1つは学校生活支援教員の充実です。LD・ADHDなどの障害のある児童・生徒を支援する通級指導担当教員である学校生活支援教員は、現在県内で地域拠点校に151名配置されています。すべての市町に2人以上は配置されている状況ですが、通級による指導を希望する児童・生徒が増加している中、ニーズに対応できていない状況です。国では2017年度から10年かけて加配定数を基礎定数化する、つまり希望する児童・生徒の人数に応じて、通級担当教員を配置するという事ですが、現場は待ったなしであり、国に要望を上げつつ県でも取組を進めなければなりません。
県ができる2つ目は、特別支援教育コーディネーターの充実です。保護者や関係機関に対する学校の窓口、学校内の関係者や福祉・医療等の関係機関との連絡調整の役割を担う「特別支援教育コーディネーター」は、現在各学校の校長が校内の教員の中から指名し、担当になった教員は担任業務に加えて特別支援教育に関する連絡調整をしています。現場では、教員の多忙化によりコーディネートまで手が回らないとの声を聞きます。対策として、ベストは加配措置によるコーディネーターの専任化です。国では、教育再生実行会議第10次提言(H29年)にてコーディネーターの専任化が盛り込まれていることを受け、国に対して要望するとともに、県でも取組を検討していただきたいと考えます。
そこで伺います。公立小中学校における特別支援教育の人材が絶対的に不足している課題の対策として、まずは通級指導担当教員である学校生活支援教員について、国に加配定数の基礎定数化を早く進め、充実した内容にすること、及び特別支援教育コーディネーターについても、国に対し専任加配を強く要望していただきたいと考えますが、加えて、県においても現場の実態を踏まえてどのように市町と連携して支援を進めようとされるのか、当局のご所見をお伺いします。