第308回2月定例会 予算特別委員会質問(企画県民部1)
2011年3月2日(水)
1 総合政策室長の役割について
(1) 県政のシンクタンクとしての役割について
本件については、我が会派が、昨年度における当初予算申し入れにおいて「各部局において策定される各種の事業計画を実効性あるものとするためには、部局を越えた取り組みが必要であることと、県政全般に関する政策立案を担当する企画県民部政策室の調整機能の強化が必要ではないか」と訴えてきたことをはじめ、昨年度の予算委員会における私の質問等においても、度々とりあげてきました。
総額3兆1,703億円にものぼる巨大な県の行政機構にあって、今後より一層厳しさを増す行革の中で、選択と集中による施策の優先順位や県政全般を見据えた施策の整合性やダブりチェック等で、効率化とスリム化への取り組みが欠かせません。
県政では既に、少子化対策や自殺防止対策等全庁的なプロジェクトが設置されていますが、まだまだ縦割り行政が主流であることは否めません。
企画県民部所管の各セクションの中で、今ひとつ担当分野のはっきりイメージ出来ないのが総合政策室長ですが、企画県民部の施策体系図には「県政策の総合的推進」として「政策の企画・総合調整と地方分権」と位置づけられ、重要施策等の総合調整の推進が掲げられています。
そうした役割を生かすためにも、総合政策室長は各部局から提出された政策を選択と集中を中心に精査・調整するシンクタンク的な役割を果たすべきではないのかと考えます。
しかしながら、緊急的な経済対策として昨年10月と12月にそれぞれ編成された補正予算約900億円についても各事業別配分にあたって既存事業との重複は無かったのか、事業選別の根拠は何か、といった説明を聞くことができませんでした。
例えば、深刻な雇用不安に応えるため、国の交付金により造成した総額345億円の基金を活用して平成24年度までの4年間にわたって実施する「兵庫県緊急雇用就業機会創出事業」等の取り組みがあります。
平成22年度までで約490の総事業計画を見込んでおり、これまで雇用実績も約9千人に及んでいるという実績から雇用対策自体においては一定の成果に繋がってきたという評価も可能ですが、こうした施策に関してもオール兵庫県の施策に結びつけて考える視点も欠かせないと考えます。
すなわち緊急雇用創出事業は、各部局がそれぞれの課題に応じて、事業化しそれを集約したものであろうと思いますが、そこに県政全体をトータルとして鳥瞰し、各事業計画部局に方向性を示していく仕掛けが必要であると考えます。
各部局が計画する個別事業も、国の実施要領・基準に基づいて集約された各事業を、財政課が査定するという手順に終始しており、そこには総合政策室長による最終チェックなど介在する余地が殆ど無いように思えます。
そこでまず、「政策の企画・総合調整」と位置づけられるとともに、県政の重要施策等に関する総合調整の推進を図る総合政策室長が、どのようなスタンスで県政全般に関する政策・企画の調整やマネジメントを行おうとされているのか、あわせて各部局に対しては、どのように指針を示して、メリハリのある政策調整を図ろうとされているのかについて、所見を伺います。
(2) 総合政策室長のPRについて
平成23年度の予算状況を見ますと、企画県民部では、地域振興、長期ビジョン、生涯学習、青少年育成、芸術文化、参画と協働、男女共同参画、地域安全、交通安全など多岐にわたる事業を展開されています。
しかし、一般県民にとって「総合政策室長」という呼称からは、明確にイメージできるものがなく、相変わらずわかりにくいのではないかと考えます。
先程も申しあげましたとおり、私は、県民生活に関わる総合的な施策を展開する、いわゆる県政における頭脳、シンクタンクとしての機能を担うべきと理解しており、その期待をしているところですが、PR不足によることもあって、県民はその働きを十分認識できていないのではないかと考えます。
例えば、岐阜県の総合政策課のホームページなどを見ますと、総合政策ポジションとしての同課の果たす役割について、ポイントを押さえて的確に記載されているとともに、その目標や具体的な方法などにも一定の説明が加えられ、県民に理解しやすい構成になっているように感じます。
このように、少なくとも県民に対しては、県政のどういう部門を担っているかについて、特徴的なものをアピールし、周知を図り、県民に理解が得られるわかりやすい県政を進めるべきであると考えます。
県の政策の企画・調整を総合的に担う立場として、総合政策室長の役割をどのようにわかりやすく情報発信をしていこうとしているのか、また今後どのように県民にPRを行おうとされるのかご所見をお伺いします。
2 NPOと行政について
(1) 兵庫県における「新しい公共」について
昨年6月に内閣府が策定した「新しい公共宣言」によれば、「新しい公共」とは、「「支え合いと活気のある社会」を作るための当事者たちの「協働の場」であり、そこでは、「国民、市民団体や地域組織」、「企業やその他の事業体」、「政府」等が、一定のルールとそれぞれの役割をもって当事者として参加し、協働すること」とされています。
申し上げるまでもなく、これまで本県の各地域においても、市民活動、NPO活動、ボランタリー活動など数々の活動が地域の中で重なり合いながら、展開されてきましたが、地域活動の中にこそ、立派な参画と協働が根づいていることをまず行政がしっかりと認識することが必要で、そのうえに立って、NPO等の自立的活動を支援していくことが必要となります。
県行政の中にあっても、NPOへの認識が全ての部局で充分であるとは言い難く、部局によっては温度差があることも又否めません。
同様に県内の市町、特に職員レベルにあっては、NPOや協働に対する理解や認識度に相当の格差が見られ、従って取り組み姿勢にも、当然大きな影響が出てきます。
そうした中で今回「新しい公共」として、NPOとの協働を展開することが打ち出されていますが、兵庫県としての「新しい公共」とはどのような理念に裏付けられ、どのように理解すべきかについて、分かりやすい説明を求めたいと思います。
同時に、この「新しい公共」の理念について、県庁各部局や市町に対し、どうアプローチしていくのか、NPOとの協働の促進について、県下市町の実態把握とレベルアップについて、県として今後どのように取り組んでいかれるのかについて伺います。
(2) NPOと行政の協働について
県民のニーズが多様化する中で、地域づくりやまちづくり、福祉施策や教育・文化の推進のほか、環境、国際協力などといった様々な分野で、NPOによる様々な社会貢献活動が広がっています。
より活力があり、豊かで安心できる社会を築く上で、多様な県民参加のつながりをもたらすNPOは、新たな社会づくりの担い手として今後とも重要な役割が期待される存在です。
平成10年3月25日にNPO法が公布されて以来、県下のNPO法人は、2月18日現在で、1,608を数えるに至り、各分野でさまざまな活動を展開しています。
民の力が、存分に発揮できる場の提供を通じて、コストに比して、住民の満足度の高いサービスを提供できる担い手として、NPOを位置づけていくべきであり、NPOと行政と、ボランティア組織、企業などが渾然一体となって、地方自治や協働を行っていくことが、時代の要請といえます。
NPOと行政の協働とは、相互の立場や特性を認め、双方が役割分担を理解したうえで協働を進めることにより、公共サービスの内容をより豊かで効果的なものにしたり、効率化してコストを低減するなどの効果が期待できるのです。
NPOと行政の協働のあり方については、共催・事業委託・資金助成・後援・政策提言などの形がありますが、県としてこれまで取り組んでこられた主な事業実態とそれらに伴う課題をどのように認識されているのかについて伺います。
(3) 適切な協働のあり方について
NPOと行政は、普段は独自に活動している場合が多いので、事業によっては、協力できるものと競合・対立してしまうものもあるかもしれません。
従って、それぞれが、お互いの役割分担を明確にしたうえで、協働によって、公共サービスの質や量の充実あるいはコストの削減などを図ることができるかどうかをよく検討のうえ取り組む必要があります。
近年行政サービスの民営化・民間委託などが進んでおりますが、NPOに行政が担ってきた役割や、責任の肩代わりを期待したり、ましてや NPOを行政の下部機関のようにみなす事業のあり方は論外といえます。
「NPOとの協働」が「予算が足りなくなったからNPOを上手に使おう」と或る会合で聞いたことがあり、地域でNPOが「行政の下請け」になっていると思えるケースが多いのが現実です。
自治体側は、必要な予算や人件費まで削られている一方で、仕事量が増えているともいわれますが、NPOとの協働が行政にとってメリットがあるかではなく、住民にとってどのようなメリットがあるかという視点が大切で、各部局内にもしっかりとした認識に基づく協働の機運を盛り上げていただきたく思っています。
和歌山県では、行政機関、NPO及び営利団体が相互の理解を深め、連携することにより、県民に対して より効率的、効果的な公共サービスを提供するためのパートナーシップが構築できるよう、定期的な協議の場である「行政とNPO等のパートナーシップ協議会を設けるとともに、職員一人ひとりが「NPO」と「協働」について正しく理解し、共通認識を持ったうえで協働を進めていく必要があることから、職員の手引きとなるガイドラインを策定するなど、県全体でNPOとの協働を円滑に推進していこうとしていると伺っています。
今後、指定管理者制度など、NPOへの事業委託の増加が予測される中、協働のあり方をどう確立していくのか。
事業委託の場合、業務の最終責任は委託元の行政にあることから、事業の実施運営について行政の指導に従って下さいということになり、どうしても上下関係にならざるを得なくなります。
しかし、それではNPOの持つ柔軟性や専門性が充分発揮できず、活動する範囲を狭めることにもなりかねません。
そこで、本来の目的に沿ったNPOとの協働を確かなものとする制度として、近年耳にしております「協働契約」の導入についてどのような見解をお持ちなのかについて伺います。