代表質問
1.第2次行財政構造改革推進方策の今後の推進について
2.平成23年度予算編成の基本方針と今後の取り組みについて
3.地域主権改革を先導するための関西広域連合の取り組みについて
4.将来へつながる雇用の取り組みについて
5.児童虐待防止の支援体制の充実について
6.国の農業政策転換に伴う今後の兵庫農業について
7.公立小・中学校における特別支援教育の充実について
8.治安向上のための優秀な人材確保・育成について
質問全文
第308回定例会(2月)代表質問
2011年2月21日(月)
1 第2次行財政構造改革推進方策の今後の推進について
兵庫県では、疲弊した財政の改善を図り、安全・安心な社会を求める県民の要請に的確に対応できる持続可能な行財政基盤を確立するため、平成20年10月に新行革プランを策定し、定員・給与、事務事業など、行財政全般にわたる改革を進めてきました。
新行革プラン策定から3年目にあたる本年度は、「行財政構造改革の推進に関する条例」に基づき、行財政全般にわたる総点検が実施されました。これにあわせて、県議会においても、行財政構造改革調査特別委員会を設置し、精力的に議論を重ねてまいりました。7月に示された「課題と検討方向」を踏まえ、11月8日には企画部会案が提示され、その後、1次案・2次案と検討を加え、今定例会に「第2次行革プラン」の案が上程されております。
我が会派は、策定にあたっては、一つ目は、限られた財源の中で、社会状況・情勢の変化に対応した県民だれもが納得できる優先順位をとらえた改革とすることが必要である。二つ目には、各部署、現地の事務所等でより徹底した協議を行うとともに、県民に一番近い距離にある現場の職員の声を反映し、その声を大切にした施策の策定、推進を行うことが必要である。三つ目に、この第2次行革プランの策定・推進は、本来の目的である、県民の安心・安全を高めるため将来にわたり持続可能な行財政基盤を確立し、県民が納得できる改革とすることを改めて肝に銘じ、集中と選択をより明確にし、検討するべきと主張してまいりました。
今回の提案された第2次行革プラン案については、当初提案された企画部会案から比べると、これまでの我が会派からの申入れや意見開陳を概ね反映したものと一定の評価をするものであります。医療や福祉、教育、雇用などの県民生活と直結する分野については、県民本位の対応となるようにより慎重な対応が必要としたところ、重度障害者医療費助成事業等の所得判定単位の見直しについて十分な周知期間を設置されました。また、先の見通せない給与抑制措置については、職員の生活設計やモチベーションに支障をきたすことがないように特段配慮すべきと主張したところ、今回「士気高揚にも留意しながら」と言う文言が加えられました。また、スクールアシスタント配置事業の補助金廃止によって、施策が後退しないよう、新たな措置を講じる必要があると求めたところ、LD、ADHD等の理解と支援をするための小・中学校における体制の充実において、市町が配置する特別支援教育支援員が、教員と緊密な情報交換等を行いながら、児童生徒への適切な対応を図ることができるよう、県として支援員への指導助言や資質向上の取り組みを充実する方向性を示されたことは大いに期待するものであり、これらの事業の着実な取り組みを望むものであります。
しかしながら、高齢化社会が進む中で、地域活性化を図るためには、活力ある高齢者の地域活動の支援や喫緊の課題である地域の足である公共交通の確保と地域の活性化に係る施策の連携といったような様々な課題は残されており、適切かつ的確な対応が必要であります。
また、これまでも述べてきたように、新行革プランの目標とする、県民の安心・安全を高めるため将来にわたり持続可能な行財政基盤を確立するための改革は、県民の理解がなければその目標は達成しません。
新行革プラン策定後、我が会派として、県の厳しい財政状況や新行革プランの取り組みについて、地域懇談会等を通して、県民への認識度を調査したところ、「県では超過課税等の独自の目的税を財源に様々な事業へ財政支出を行っており、財政状況は潤沢ではないか」「財政状況が厳しいとは知らなかった」等の発言を多く聞いたところであります。これは、県民にとって行革の目的・意義が正しく伝わっていない状況であり、理解・協力を得る県民に対して、県の財政状況を適切に伝える手法が、不十分であったのではないかと考えます。
そこで、第2次行革プラン策定後、県民に対してこの行革の目的・意義を正しく伝えていくためにどのように取り組んで行くのか方針を伺います。
2 平成23年度予算編成の基本方針と今後の取り組みについて
平成23年度予算案については、来年度が第2次新行革プランのスタートの年となることから、第2次行革プランの取り組みを基本に、地方財政を取り巻く環境を踏まえ、国の制度改正や予算編成、地方財政措置を見極めつつ、施策の選択と集中を一層徹底し、県民ニーズに的確に応えることのできるように作成したとのことであります。
我が会派は、平成23年度の予算編成にあたっては、依然として厳しい経済環境下にあって、雇用の確保、社会保障の充実など、地域のセーフティネットとして県の果たすべき役割は重要であり、産業・雇用政策は勿論、医療・福祉や教育の充実、農業再生や環境対策、防災・危機管理といった多様な行政需要を県政に反映し、県民本意の施策を遂行することが必要であることから、県民が将来に希望を持つことができる社会の実現に向けた予算が編成されるよう要望してきたところであります。また、第2次行革プランの策定に併せて、限られた財源の中で、社会状況・情勢の変化に対応した県民だれもが納得できる優先順位をとらえた改革とすることが必要であると訴えてまいりました。
このたびの第2次行革プランでは、「兵庫の未来づくりに取り組む施策の推進」について、新たにその方策を掲げられ、その具体化の施策として、来年度の予算の目玉として、地域ビジョンや地域活性化実現のため、県、市町、地域団体が取り組む事業を支援する「地域の夢推進事業」が創設されました。この事業は、我が会派が主張してきた県民が将来に希望を持つことができる社会の実現に向けた予算として評価するものです。しかしながら、この事業の県民局ごとの配分基準について県民にとって解りにくい面もあり、また、この事業を効率的かつ効果的に実施するには、予算措置だけではなく、県民局の事業推進機能の強化も課題であります。
また、来年度の国の予算において、我が民主党政権は、地域主権改革を推進するため、各省庁の抵抗を抑えて、国と地方の省庁縦割り関係を築いてきた補助金をやめて、自治体がもっと自由に使える交付金とする地域自主戦略交付金を都道府県分で5,120億円を確保したところであります。その活用について、今後、自治体としての裁量が試されるもので、単にこれまでの継続事業に充当するのではなく、県としての独自性を出し効率・効果的に実施していく必要があります。
そこで、あらためて、今回の第2次新行革プラン、国の地域主権改革の動き、我が会派の主張も踏まえて、どのような事業・分野に重点をおいて、予算編成にあたってきたのか基本方針を伺うとともに、執行に当たって指摘した課題についてどのように取り組むのかお伺いします。
3 地域主権改革を先導するための関西広域連合の取り組みについて
昨年12月1日に、関西全体にかかる観光や経済発展などの広域行政課題に取り組むことに加え、国の出先機関の事務の受け皿となるべく、井戸知事を連合長とする関西広域連合が設立されました。我が民主党政権が進める地域主権改革について、地域から進めていく起爆剤になると多いに期待しているところであります。
国においても、昨年12月28日に、出先機関の事務を丸ごと受け入れるブロック単位の新たな広域行政制度を整備するための法案を2012年の通常国会に提出し、準備期間を経て14年度の移管を目指す、国の出先機関改革のスケジュールなどを示した「アクション・プラン」を閣議決定しました。その中で、丸ごと移管は、全国一斉ではなく、準備の整った地域から事務を移すことになっており、府県の垣根を越えた組織である関西広域連合に先行的に移管することは可能となっております。
また、政府の地域主権戦略会議も、関西広域連合などを念頭に、「アクション・プラン」推進委員会の設置を決め、道路や河川、ハローワークなどの事務移管を検討する専門チームを立ち上げたところであります。
このような動きの中で、これまでオブザーバー参加に留めていた神戸市をはじめとする4政令指定市が、「国の出先機関の権限が移譲される段階で」との前提条件がついているものの、関西広域連合に正式に参加することで合意され、国から地域への事務移管の「受け皿」となる体制づくりが深化し、関西広域連合の機能が高められることが期待されます。
しかしながら、これまでから出先機関の移管について中央省庁は後ろ向きであり、また、関西広域連合には、奈良県が参加していないことから、関西全体の出先機関の事務を丸ごと受けられない状況にあると懸念する声も上がっております。しかし、関西広域連合は、府県の垣根を越えた組織であり、丸ごと移管は可能であり、地域主権改革を進めるモデル事業として、地方から取ってくると言う強い姿勢で臨む必要があります。
また、関西広域連合を軸とした地域主権改革を定着させるには、住民の支持が欠かせず、出来るところから手掛けて実績を重ね、地域主権改革を確かにして行く必要もあります。
そこで、地域主権改革を先導し、定着させるため、関西広域連合長でもある兵庫県知事としてどのように関西広域連合を運営し、如何に国の出先機関の移管を進めさせて行こうとするのかご所見を伺います。
4 将来へつながる雇用の取り組みについて
一昨年のリーマン・ショック以降、本県の雇用は厳しい情勢が今も続いております。
これまでから、雇用の場を確保するために、本県でも緊急雇用就業機会創出基金等を活用して、制度創設以来、平成22年11月末までに緊急雇用就業機会創出事業で6,762人、重点分野雇用創造事業で1,191人、ふるさと雇用再生事業で991人の計8,944人の雇用を創出しており、一定の成果が出ていると評価しております。
しかしながら、基金事業雇用者の再就職状況をみると、緊急雇用で、これまでに事業が終了した3,326人のうち再就職の状況が判明した人が2,058人の中で、次の雇用につながった人が1,011人(49%)、22年度創設の重点分野雇用創造事業では、再就職の状況が判明した人242人の中で、55人(23%)、ふるさと雇用は、再就職の状況が判明した372人中、277人(75%)が雇用に結びついていますが、もっと高める必要があり、今後、事業が終了するにあたり、正規の雇用に結び付けていくために県としてもさらに努力が必要であります。
また、来春卒業予定の大学生の就職内定率は、昨年の12月1日時点で68.8%と調査をはじめた1996年以降、最低の数字で、就職氷河期と呼ばれた2000年頃でも、70%を下回ったことがない状況であり、本当の就職氷河期と言えます。
これは、リーマン・ショック以降、景気は緩やかに回復しているものの企業は、デフレや円高で景気の先行きに不透明感が強まっており、経営者の多くは景気の悪化を懸念しております。また、学生においても、企業の規模や知名度にこだわり、そうした企業に集中して内定を取るのが難しい状況になって、これが内定率の低下につながっております。卒業時に正社員にならなければ、その後、正社員になる可能性が低くなり、不安定な非正規雇用の就労を余儀なくされ、安定した収入を確保することが困難になることから、新卒者の就職支援が必要であります。
国においては、新卒者雇用を支援するために、全都道府県に新卒応援ハローワークを設置するとともに、ジョブサポーターを2千人に倍増して支援を行っております。さらに菅総理の今年の所信表明演説でも、最も重視するのは雇用であり、これまでのように新卒者雇用を全力で支援するとともに、中小企業とのマッチングや職業訓練中に生活支援のための給付を行う求職者支援制度の創設など雇用を「つなぐ」取り組み、新成長戦略により潜在的需要の大きい医療・介護等の分野の雇用創出や企業の雇用増を優遇する雇用促進税制の導入による雇用を「創る」取り組み、雇用の海外流出を防ぐための低炭素産業の立地支援の拡充や雇用保険の基本手当の引き上げによる雇用を「守る」取り組みを行い雇用対策全般も一層充実させております。
兵庫県においても、労働局等と連携して、新卒者雇用を支援しておりますが、県下の中小企業には、航空宇宙機器向け部品の微細加工をこなす工場、すぐれた溶接技術を持つ工場など、すぐれた特徴や個性を持つ企業も多く、それらの中小企業の把握ができるのは県であり、新卒者との橋渡し役として主導的な役割を担うべきであります。
そこで兵庫県としても、臨時の雇用創出だけではなく、これからは将来につながる雇用の創出や新卒雇用の支援を本腰化する必要があると考えますが、ご所見を伺います。
5 児童虐待防止の支援体制の充実について
我が会派は、児童虐待について、子どもの命と安全を守るため、国による法整備と、専門的なケア体制の整備や児童養護施設の小規模化などきめ細かな支援が行える環境づくりが必要であると、これまでから常に訴えてまいりました。
昨年末、国において、児童虐待を防止するため、法務大臣の諮問機関である法制審議会の部会が、親権を一時的に停止できる制度の新設などを提言し、これに基づき、政府は今年の通常国会に民法改正案を提出する方針であり、法による体制整備が整いつつあります。
一方で、きめ細かな支援が行える環境づくりについて、兵庫県では、昨年、児童福祉司の資格を有する相談調査調整員の配置など児童相談体制の強化を図ってまいりました。しかしながら、児童虐待に関する案件は、年々、多様化、複雑化しており、こども家庭センターの現行の職員体制で十分かは大きな疑問であり、さらなる人材の確保が必要であります。
また、親の死亡や経済的理由などで、家庭で暮らすのが難しい子どもを育てる施設である児童養護施設について、全国で約570施設、3万人余りが生活しておりますが、近年、虐待を受けた子どもの入所が急増し、ここ10年間で児童数は1割以上も増えおります。その一方で、児童養護施設は、手狭な施設や十分と言えない児童の生活費・教育費、低賃金で働く職員の労働条件など様々な課題を抱えております。特に、虐待を受けた児童にとって、感情をコントロールできなかったり、職員に甘えて離れなかったりすることもあり、子どもが大人への信頼を取り戻すためにも、ケアが行き届くだけの態勢が欠かせませんが、今の職員配置では十分な対応ができない状況であります。
昨年末に始まった人気漫画タイガーマスクの主人公「伊達直人」を名乗る人物からのランドセルなどの児童養護施設等への寄付は、全国に広がってきてはいるものの、善意だけでは、子どもの健やかな成長を支えることはできません。国でも、約30年振りに児童養護施設の職員の配置基準や施設の面積基準を見直す動きもあります。
そこで、こども家庭センターや虐待された児童の受け入れ先となる児童養護施設などの児童虐待防止の支援体制の充実にどのように取り組むのかご所見を伺います。
6 国の農業政策転換に伴う今後の兵庫農業について
現在、環太平洋パートナーシップ(TPP)の参加の検討にあたり、農業の再生・改革がクローズアップされておりますが、TPP問題が浮上する前から、農業の再生・改革の必要性は迫られております。
過去20年で国内の農業産出額は27%減少し、働き手が平均66歳と高齢化し、後継者不足も深刻化、あと10年もすれば国内農業は自壊しかねない状況であり、また全国の耕作放棄地も20年間でほぼ倍増するなど、農業の再生・改革はまったなしの課題となっております。
国においては、商工業との連携や、6次産業化を進めるとともに、農地集積による大規模化をはかり、若い人たちが参加する農業、豊かな農村生活を可能にしようとしております。その具体的な政策として、来年度は、農業者戸別所得補償制度の対象を畑作物に拡大し、大規模化の支援を厚くするとともに、安全でおいしい日本の食の魅力を海外に発信し、輸出につなげようとしております。さらに、日本の食と農林漁業の再生をテーマに、全閣僚が参加する「食と農林漁業の再生推進本部」を立ち上げ、6月を目処に基本方針を、10月を目途に行動計画を策定し、農林業の再生に取り組んでおります。
兵庫県においても、農業就業人口は10年間で33%も減り、しかも65歳以上が68%を占めるなど高齢化が進んでおります。耕作放棄地も5,765ヘクタールもあることから、それらの解消のためにも新たな農業の担い手を育成することが大きな課題となっております。
しかし、兵庫県には、牛肉、酒米、たまねぎなどブランド品や全国有数の生産量を誇る農産物も多く、また、大消費地の京阪神に近くかつ周辺に食品会社が多いことから、1次産業の農業と2次産業の製造業、3次産業の流通・サービス業を融合させた「農商工連携」に適しております。既に丹波黒大豆など、地域の産品を食品に加工し、百貨店やスーパーで販売しているが、企業家意識を持つ農業者と食品会社が手を組むことにより、販売ルートや品揃えを拡大することが可能であり、兵庫県は、まだまだ農業が発展する可能性をもっております。
今後、組織化や企業化、地産地消、有機農業など新たな可能性に向けて一歩を踏み出す農家や、優れた経営能力とリーダーシップを併せ持つ人材を育成して行く必要があります。また、耕作放棄地等を含めた農地のあっせんなどによる新規就農者や企業参入の支援や担い手の大規模化なども必要であります。
そこで、県では、現在、次期ひょうご農林水産ビジョンの策定を進めていますが、このように国が農業の再生・改革を進めようとする中で、今後、どのような兵庫農業を目指していくのか、ご所見をお伺いします。
7 公立小・中学校における特別支援教育の充実について
平成19年4月から、特別支援学校の創設及び特殊教育を特別支援教育に改める等を内容とする学校教育法の改正が行われ、適切な指導及び支援を行う観点から、複数の障害種別に対応した教育ができるように、盲・聾・養護学校を特別支援学校にするとともに、小学校等における教育上特別の支援を必要とする発達障害のある児童生徒への支援を行う特別支援教育がスタートしました。
本県においても、平成19年度から5ヵ年をかけて県立特別支援学校を再編・整備するとともに、各公立学校に特別支援教育コーディネーターを指名するなど、これまで障害児教育の対象でなかった学習障害や注意欠陥多動性障害など発達障害がある子どもへのきめこまかな指導が行えるようになり、高く評価されるものであります。
それに加え、発達障害児等の在籍者が全国的に増加する中、兵庫県では、国に先駆けて、これまで人と意志疎通がうまくできない 自閉症やアスペルガー症候群、読み書きや計算の習得が困難な学習障害、衝動的に行動しがちな注意欠陥多動性障害などにより行動面が著しく不安定な児童生徒が在籍する学級支援のため、教員免許状を保有する非常勤のスクールアシスタントを配置しているところであり、学校現場や保護者から高い評価を得ております。しかしながら、当制度については、国の地方交付税措置ができたことから、特別支援教育支援員を配置する市町単独事業となり、県補助金は本年度限りで廃止されます。
我が会派は、スクールアシスタント配置事業の補助金廃止によって、施策が後退しないよう、新たな措置を講じる必要があると求めたところ、LD・ADHD等の理解と支援をするため小・中学校における体制の充実において、市町が配置する特別支援教育支援員が、教員と緊密な情報交換等を行いながら、児童生徒への適切な対応を図ることができるよう、県として支援員への指導助言や資質向上の取り組みを充実する方向性を示されたことは評価するものであります。その実施に向けて効果を上げる具体的な取り組みが大切であります。
一方で、兵庫県下の公立小・中学校の特別支援学級に通う児童生徒数は、平成22年5月1日現在、5,642人と2年前に比べると507人増加しており、そのうち自閉症・情緒障害は2,100人と2年前に比べると337人と増加しております。
また、障害がある子どもを持つ親の中には、地域の交友関係等を考えて、なるべく公立小・中学校に通えることを望んでいる方も多くいます。そのような声のある中、「障害者を特別視するのではなく、一般社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えるべきであり、共に生きることこそノーマルであるという考え」つまり、ノーマライゼーションの理念に基づく教育を推進している府県もあり、本県でも取り組む必要もあると考えます。
しかしながら、公立小・中学校における特別支援学級の現状については、児童生徒数の増加に対応した専門性のある教諭やサポートする職員が十分に養成できていない状況であります。さらに、障害の多様化が進み、それぞれにあった指導も必要となっていることから教育内容の充実や教員の増員も課題となっております。
そこで、LD・ADHD等の児童生徒への対応も含めて、県下の公立小・中学校における特別支援教育の充実についてどのように取り組むのか方針を伺います。
8 治安向上のための優秀な人材確保・育成について
兵庫県警でも、団塊世代の大量退職の時代を迎え、警察官の人材の確保が問題となり、毎年500~600人台という大量採用を行なっております。さらに、最近の治安情勢は、刑法犯認知件数が減少するなど改善傾向にあるものの、市民生活に大きな不安と脅威を与える事件が相次いでいるほか、殺人罪等の公訴時効の見直し、サイバー犯罪の急増、犯罪死の見逃し防止等の緊急に対処すべき課題が生じていることから、国の負担による警察官が兵庫県でも42名増加されることになります。
これまで以上に、警察官の採用が必要となりますが、近年の大量採用が続く中で、少子化による就職適齢人口の減少などにより、採用試験の受験者数は伸び悩み、平成17年以降、競争率は10倍を下回っており、また募集数に対して合格者が下回っている年もあります。昨今の経済不況の中で、警察などの公務員を希望する若者が増加すると見ていましたが、警察官の募集は伸びてきておりません。これは、警察というのはまだまだ3K、「きつい」、「汚い」、「危険」というイメージが少なからず残っているのではないかと考えます。
また、過去10年間に兵庫県警に採用された警察官のうち、約1割が現場に配属される前の警察学校在籍中に退職しております。退職の理由としては、「集団生活が苦手」「訓練についていけない」などが目立ち、理想と現実の間で悩む新人の姿が伺えます。
人の命と安全を守る警察官については、どんな人材でもいいから人数を確保する必要はありませんが、ある程度の人数を確保する必要があります。
そのためにも、採用前から、警察官のやりがいや魅力を伝える必要もあり、例えば、警察署における大学生・高校生のインターンシップの実施や、中学生のトライやるウィークの受け入れなど、業務に支障がない限り積極的に受け入れ、現場を経験してもらうことも重要ではないかと考えます。また、他府県では、育児のために退職した女性警察官を再採用している事例もあり、大いに活用すべきであります。
そこで、兵庫県警として、治安向上のため、警察官として優秀な人材の確保及び育成についてどのように取り組む方針なのか、ご所見を伺います。
中田香子
(伊丹市)
一般質問
1.県立尼崎病院と県立塚口病院の統合再編に伴う跡地利用について
2.山手幹線の大阪府側との接続について
3.武庫川下流部における堤防強化等の治水対策について
4.耐震化の推進について
(1) 防災拠点となる公共施設の耐震化について
(2) 学校施設の耐震化について
5.買い物難民への支援について
6.地籍調査の推進について
質問全文
第308回定例会(2月)一般質問
2011年2月22日(火)
1 県立尼崎病院と県立塚口病院の統合再編に伴う跡地利用について
まず、1点目は、県立尼崎病院と県立塚口病院の統合再編に伴う跡地利用についてであります。
尼崎と塚口の両県立病院については、統合再編検討委員会の提案を踏まえ、2つの病院の高度専門医療を引き継ぐとともに、救命救急センターや総合周産期母子医療センターの設置などより一層の医療機能の充実を行うため、統合再編して新たな県立病院を建設されますことを、地元尼崎市民を代表して、知事はじめ関係者の方々に心より御礼申し上げます。
統合再編基本計画では、その新病院の用地は、公共交通機関等によるアクセスもよい、尼崎市の中心部に位置する、市立尼崎産業高校跡地に決定いたしました。
新病院の建設には、総事業費約340億円を要し、平成26年度の開院を目指して、整備が進められると聞いています。施設概要は今後の設計等により変更がありうるとのことですが、地上12階建て、建築面積10,000㎡、延べ床面積66,000㎡、ベット数730床と西日本有数の規模を誇り、24時間救急を断らない、医療内容を考えると西日本一になるのではないかと、尼崎市民だけでなく、阪神間の住民も大変期待を寄せています。
この大きな事業に対しては、近年景気の低迷や大きな工場の撤退発表等やや暗い話題の多い地元経済界からも、久々に明るく元気になるニュースであると大変な期待が集まっています。ご承知のとおり、地元尼崎市は昔から中小企業が盛んなまちであります。現在は、景気動向に左右され、縮小を余儀なくされている企業もありますが、技術力が優れた企業は数多くあり、その力は新病院の整備に十分に役立てるものであると考えています。そのため、新病院の整備にあたっては、その技術力が活用され、地域の経済効果がより高まることを期待しています。
一方、この2つの病院の統合後の活用については、県立尼崎は現施設の再利用、県立塚口は既存建物の撤去を前提とした検討を行うとされていますが、阪神間では近年大きな工場の撤退発表等が相次いでいる状況もあり、跡地利用に関する地域住民の不安を含め、非常に関心が高まっております。特に、塚口病院跡地については、既存建物が撤去される方向ということで、その跡地の活用策の動向には地元住民が注視している状況にあります。
そこで、統合再編に伴う両病院の跡地利用について、どのように取り組んでいかれるのか、県当局の見解をお伺いします。
2 山手幹線の大阪府側との接続について
質問の第2は、山手幹線の大阪府側との接続についてであります。
「山手幹線」は戦災復興事業の一環として1946年に計画が具体化、64年目の平成22年10月24日に兵庫県側は全線開通いたしました。計画が具体化した後、長い期間にわたり事業は停滞しておりましたが、阪神・淡路大震災の後、「山手幹線」の防災上の重要性がクローズアップされ、兵庫県、尼崎市、大阪府、豊中市の協議会で話し合いがもたれ、神戸市長田区から尼崎市の戸の内までの約30キロの兵庫県内の工事は進捗しました。
しかし、立派な道路は、旧猪名川の手前でストップし、大きな道路標識があり、右側への矢印で大阪・豊中へと細い道へと誘導されますが、その迂回路も狭隘なため、隣接する地域の住民にとっても安全性の面で大きな問題があるとの声も高く上がっております。大阪府側の接続道路の三国塚口線は未整備という現状にあり、そういう中で、大阪府とは「三国塚口線・山手幹線連絡調整会議」で協議を重ねていることは存じておりますが、未整備のままでは期待された防災道路としての機能も十分に発揮できません。
そういう中で、平成22年12月1日、総務大臣の許可を受け、関西広域連合が発足しました。井戸知事が初代の連合長に就任され、兵庫県民にとりましては、大変栄誉であり、井戸知事への期待が高まっております。
特に、阪神・淡路大震災を体験している県民にとりましては、広域防災担当がわが兵庫県であることにも、大きな関心が寄せられております。被災地から、また被災した方からの意見を大いに取り上げ、他地域にさきがけて広域防災体制の整備が急進すると注目されております。
16年前の大震災同様、自然災害はいつ起こるかわかりません。大阪湾高潮対策協議会においても、想定を超える巨大高潮発生時には、国道43号及び2号はゼロメートル地帯であるため、冠水により通行不能が予測されるとの報告が出されております。そのためにも、災害時の代替輸送手段としての、阪神間を東西に貫く幹線道路「山手幹線」が大阪府にとりましても必要不可欠であることは言うまでもありません。
関西広域連合長であります井戸知事は、昨日の我が会派の中田幹事長からの代表質問の答弁において、「府県域を超える防災体制をつくる」と明言されました。まさに、このご答弁どおり、まずは事業半ばで中途半端で終わっているこの山手幹線と大阪府側の接続を実現させることで、有言実行の初代連合長として、後生に名前が残ると思います。
そこで、知事にお伺いいたします。このような状況を踏まえ、山手幹線の大阪府側との接続について、これまで以上に強く大阪府に働きかけていただきたいと思いますが、昨日の知事の答弁からも期待して、知事の今後のご決意をお伺いします。
3 武庫川下流部における堤防強化等の治水対策について
質問の第3は、武庫川下流部における堤防強化等の治水対策についてであります。
武庫川水系の治水対策については、武庫川流域委員会等での様々な議論を踏まえ、いわゆるダムによらない治水対策を行う「武庫川水系河川整備計画案」を県としてとりまとめ、昨年12月3日に国土交通省に同意申請が行われました。それに基づき、平成23年度から42年度の長期にわたり、戦後最大洪水流量に対応する河道掘削や堤防強化、遊水地整備等の総合的な治水対策に取り組むこととされています。
尼崎市の武庫川は、普段はのどかな川で、河川敷では少年野球、ラグビー、サッカー、グランドゴルフさらに、井戸知事も昨年10月にご視察頂いておりますようにコスモス畑もあり、尼崎市民にとりまして憩いの場です。
しかし、穏やかな川も、昭和9年9月の室戸台風、昭和13年7月の梅雨前線、昭和25年3月の温暖前線、昭和25年9月のジェーン台風、昭和42年7月の豪雨、平成11年6月の大雨により周辺に甚大な被害を引き起こしています。
その中でも、徳島県に上陸し、淡路島、神戸市垂水区付近を通過した昭和25年9月3日のジェーン台風は「死者22人、負傷者228人、行方不明者6人、全壊473戸、半壊7,410戸、流失196戸、床上浸水18,679戸、床下浸水6,951戸、田畑冠水260町歩、堤防決壊33箇所、崩壊39箇所、破壊52箇所、橋梁決潰8箇所、破壊6箇所」さらに、「台風の襲来と大阪湾満潮時が一致し、高潮を引き起こし、堤防を乗り越えた海水が尼崎や西宮市を浸水させた。武庫川の堤防決壊。同時に高潮が押し寄せ、阪神電鉄本線以南一帯は水域と化」したことなど、武庫川の氾濫、破堤の記憶が尼崎市民の脳裏に焼き付いています。
つまり、尼崎市は武庫川の下流部にあり、洪水と海の満潮時が重なった時の被害は計り知れないモノがあると考えます。
また、下流部の堤防沿いに、村の時代から、先祖代々住み続けている住民にとりましては、大正時代以前より堤防決壊等によって、生命・財産のすべてを失ってきた歴史を忘れることはできません。水害から生命・財産を守るために、今後も降りかかるであろう、決壊後のダメージを少しでも減らしたい、という堤防強化の念願が一世紀以上にわたってあります。先祖より受け継いできた土地を守るために、一生懸命防災に取り組んでこられた住民の思いを汲み取り、不安を少しでも取り除くことが行政の使命であるとも考えます。
しかしながら、武庫川の堤防の現状を見てみますと、護岸の老朽化が進み、そこに草が生え、素人目には大変、危険な状態のように写り、ひとたび洪水が発生すれば容易に侵食され、破堤に至るのではないかと地域住民の方々も大変危惧いたしております。
ご存じのように尼崎市は人口密度で兵庫県内で1位であり、市域の約1/3が海抜ゼロメートル地帯でありひとたび破堤すればその被害は甚大です。ダムによらない治水である以上、河道掘削、堤防強化工事が重要だと考えます。
そこで、昨今の頻発する水害から県民の安全安心を守るためにも、武庫川下流部における堤防強化等の治水対策が重要と考えますが、今後どのように取り組んでいこうとしているのか、お伺いします。
4 耐震化の推進について
(1) 防災拠点となる公共施設の耐震化について
質問の第4は、耐震化の推進についてであります。
まず、防災拠点となる公共施設の耐震化についてお伺いします。
昨年9月に消防庁より「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査結果」が発表されました。それによると、平成21年度末時点での耐震率の全国平均は70.9%、兵庫県は若干高い71.6%で、全国14位となっており、軒並み90%近い耐震率となっている神奈川、愛知等の東海地震に係る都県と比べると大きな差となっていました。阪神・淡路大震災を経験した者としては、兵庫県の耐震率が他府県に比べ予想以上に低く、大変な驚きも感じております。
調査対象となっている地方公共団体が所有又は管理する防災拠点は、社会福祉施設、文教施設、県民会館・公民館等、体育館、診療施設、警察・消防施設等ですが、まさに、地震災害の発生時には災害応急対策の実施拠点や避難所になるなど、県民の命の拠点となる場所であることは、言うまでもありません。
阪神・淡路大震災以降も、世界的には中国・四川、カリブ海のハイチ等で大地震が発生しており、国内においても新潟県中越及び中越沖などで死者を伴う地震が多数発生しております。近い将来、南海・東南海地震等の発生が危惧される中、防災拠点となる公共施設の耐震化の推進は急務と考えます。
そこで、県として、これまでに「防災拠点となる公共施設の耐震化」にどのように取り組まれてきたのか、また、今般の調査結果を受け今後、どのような対策を推進していこうとしているのかお伺いいたします。
(2) 学校施設の耐震化について
次は、公共施設の中の学校施設についての耐震化についてお伺いします。
学校施設の耐震化率は昨年4月現在、全国平均で73.3%、それに対し県内の状況は、幼稚園65.7%、小中学校73.9%、高等学校66.1%、特別支援学校71.6%と、震災を経験した県としては、決して誇れる数字ではないと思います。
特に、私の地元であります尼崎市の昨年4月現在の公立小中学校の耐震化率は28.6%と、全国平均と比較し45ポイントも低く、県下でもワーストワンという状況であります。尼崎市の発行している、洪水ハザードマップに掲載されている避難場所である公立小学校、中学校の耐震化も遅れているのが現状です。
国の平成22年度補正予算「安全・安心な学校づくり交付金」によって、約42%と向上する見込みと聞いておりますが、全国平均と比べてかなり低い状態には変わりありません。
学校施設は、児童生徒などが1日の大半を過ごす学校生活の場であるだけでなく、地域コミュニティの拠点として、さらに災害時には地域住民の応急避難場所となる防災拠点であり、その意味からも学校施設の耐震化の向上は喫緊の課題であります。
そういう中で、国においては、平成23年度予算案において、公立学校施設について、耐震化及び老朽化対策を中心に計画的に整備を行い、耐震化率を85%まで引き上げる予定と伺っております。多くの公立小学校・中学校の設置主体は市町であり、県下各市町においても財政状況が大変厳しい中、学校施設の耐震化をより進めていくには、県としても県下各市町の実情等を国に伝え、より活用しやすい支援制度の実現に努めるなど、市町が行う学校施設の耐震化への支援の充実に努めることが不可欠であります。
そこで、公立小中学校の耐震化について、耐震化が遅れている各市町への指導を含め、県としてどのような支援を行っているのかお伺い致します。
5 買い物難民への支援について
質問の第5は、買い物難民への支援についてであります。
身近な商店の撤退・閉店や、交通手段の不足によって、食料品など日常の買い物が不自由になる高齢者らが増えています。経済産業省では、このような「流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買い物が困難な状況に置かれている人々」を「買い物弱者」いわゆる買い物難民と定義し、この買い物難民は、推計によりますと高齢者を中心に全国で約600万人もいると言われております。
この問題は、山間部の過疎地だけの問題と思われがちですが、高度成長期に開発された都市近郊の団地などでも問題が起きております。その背景には身近な商店の減少が影響していると考えます。平成19年の全国の商店数は約114万で25年間で3割以上も減少しております。中小の商店の撤退・閉店が著しい一方、大規模店は増加しております。
そういう中で、国においては、経済産業省の「地域生活インフラを支える流通のあり方研究会」で、こうした現状に対し行政と民間事業者、地域住民が連携して取り組むべきと提言し、買い物弱者応援マニュアルの策定等を通じ、買い物難民問題解決に向けた取り組みを行っているほか、今年度補正予算事業による国の「地域商業活性化補助事業」、いわゆる買い物弱者対策支援事業では、全国で48件が採択され、そのうち尼崎市の武庫元町商店街振興組合が一般社団法人シニアライフコミュニケーションクラブと協力して行う、特売クーポン付き高齢者専用情報誌の作成や、市内の住宅団地を中心に1日3回程度宅配を行う事業に、国より515万円の補助金が支給されることが決定いたしました。
この商店街の付近のパークタウン西武庫は、老朽化した県営団地の立て替え後に建てられ、それまで住んでいた方々は高齢者の方が多く、新たな住民も加わり、近隣に大規模店ができた反面、身近な昔からある商店街の中で、店を閉めたところも出てきており、徒歩で買い物に行く高齢者には不便な状況が生じてきています。
また、今後、人口減による市場規模が縮小した場合、大規模店が撤退すれば、買い物難民の問題はさらに進んでいくのではないかと危惧されます。さらに、この買い物難民の問題を放置すると、昨今話題となっている「無縁社会」「消えた高齢者」等の問題の深刻化にもつながることは必至であり、早急な対策が求められます。
県においても、あらゆる角度から商店街活性化への事業は展開しておられますが、買い物難民への支援という視点での対策に取り組んでいく必要があると考えます。
そこで、買い物難民への支援について、商店街の活用とあわせ、県として今後どのように取り組んでいこうと考えているのか、お伺いします。
6 地籍調査の推進について
質問の最後は、地籍調査の推進についてであります。
報道によりますと、外国資本による日本の森林の購入が進んでおり、政府も法改正を含む対策に動いていると聞いております。林野庁と国交省の調査によると、2006年から4年間に外国法人または外国人による森林取得件数は25件、森林面積は558ヘクタールで、25件中、1件が神戸市の2ヘクタールが買収されたと言うことです。このことは、安全保障の見地から、さらには、地球規模で淡水が急激に減少するなか、水源林を保全するという観点からも、注視しなくてはならない課題であり、森林等の取引に届け出を求める条例を制定するという自治体の動きの新聞報道もありました。
私は、自治体としてそのような取り組みを行う前に、国内であまり進んでいない地籍の明確化を行い、森林の保有状況を把握する必要があると考えます。
日本における地籍調査の山間部の実施率は42%に止まっており、一方、ドイツ、フランス等の実施率はほぼ100%と言われています。その結果、日本では、不動産登記も正確な山林状況を表していません。よって、売買の際の評価も難しく、森林管理を行う際においても、所有者不明のため管理が行き届かなかったりするため、多くの森林の資産価値が低く、所有者の森林所有意識が低い一因と考えられています。
このような点からも、地籍調査の推進は、森林の取引届け出等の対策検討を行う上で必要であることはもちろんのこと、それにより人々を育む水源林としての森林の資産価値を高め、森林所有者の土地所有意識を高めることにつながり、日本の森林の適正な管理に資する上で、早急な明確化が求められます。
そういう中で、国においては、円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策として地籍整備を加速させるとしています。また、本県としても、平成26年度までに単年度実施面積が100キロ平方メートルになることを目標として取り組んでおられますが、平成21年度末の面積ベースでの進捗状況は19%、全国36位と、全国比較でも進んでいるとは言い難い状況にあると思います。
さらに、調査の進んでいない山間部においては、所有者の高齢化や集落の存続自体が危ぶまれる地域も多くあり、今後、ますます地籍調査での土地境界の現地確認等の実施が困難となってくることも想定されます。特に、兵庫県は日本の縮図と言われております。県の財産である豊かな森林資源を守り、他府県からの遅れを取り戻すため、対策支援を早急に進める必要があると考えます。
また、森林以外においても、市町村が地籍調査を実施することが困難である都市部の地図混乱地域の地図作成業務を法務局で実施しており、地籍調査の結果と合わせて、登記所備付図面作成作業の促進が図られております。
登記所備付地図の整備の遅れは、不動産の流通業務や公共事業の円滑な実施を阻害したり、適正な課税を困難にしたり、様々な問題点が指摘されております。国の地域主権戦略会議でも、登記・供託事務等の国の出先機関の事務・権限の移譲が検討されており、県においても関係団体等の意見を十分に聞きながら、円滑に地籍調査の推進が行われるよう取り組んでいただきたいと思います。
そこで、本県における地籍調査の進捗状況と進まない理由、また、今後どのように地籍調査を進めていこうと考えておられるのかお伺いします。
徳安淳子
(尼崎市)
1.中小企業の経営革新計画に対する支援の充実について
2.犯罪被害者支援対策の充実と、市町が連携した今後のセンター運営支援のあり方について
3.農業分野等への障がい者の雇用の促進について
4.イベントを活用した県市町連携によるツーリズム振興について
5.県営住宅のバリアフリー化の促進について
6.明舞団地・明舞センター地区再生の推進について
質問全文
第308回定例会(2月)一般質問
2011年2月23日(水)
1 中小企業の経営革新計画に対する支援の充実について
質問の第1は「中小企業の経営革新計画に対する支援の充実について」です。
年末年始、地元や友人の中小零細企業を訪ねました。
そこでは、「土日・休日の返上」や、「残業しないと納期に間に合わない」など、一部ではありますが明るい兆しが見え始めました。
しかし一方で「受注量は増えたが利益が伴わない」とも聞かれ、地域で、そして肌で感じる景気状況はまだまだ一進一退です。
昨年12月の兵庫県中小企業団体中央会「兵庫県中小企業労働事情実態調査」によると、回答のあった県内企業528事業所のうち、現在の経営状況が「悪い」と回答した割合は59.9%と最も高く、「変わらない」30.0%、「良い」10.1%と続いており、本格的な景気拡大局面には未だ至っていないことが伺えます。
こうした状況にあっても、それぞれの企業の主要な事業について、今後「強化拡大」したいとの回答が21.5%と昨年比0.6ポイント増加するなど、製品やサービスの魅力で販路を拡大しようとする積極的な姿勢が見受けられますが、一方で、消費者ニーズの多様化や価格競争の激化など、企業努力を上回る市場環境の激変が生まれています。
例外なくすべての中小企業で経営の合理化など自助努力を行っていますが、業種によっては、本業では今後の展望が開けず、新たな事業分野を開拓しなければ企業の存続すら危ぶまれる状況です。
2009年版中小企業白書で、今後の中小企業の生き残りの鍵は「イノベーション」と位置づけられているように、経営革新計画の作成は経営者の大きな決意の表れです。
県では、平成11年度に制定された「中小企業経営革新支援法」に基づく「経営革新支援制度」が創設されて以来、「経営革新計画」の策定の相談・承認と、それに基づく制度融資である「経営革新貸付」等を実施し、昨年12月までに約1,900件の計画承認を行っています。
経営革新計画の承認を受けた企業は、低利融資措置や税制面の特別措置などを受けることが可能になりますが、県のこれまでの経営革新に関する貸し付け件数や金額を見ると、平成19年度の176件・約69億円をピークに、平成20年度は124件・約46億円、昨年度は44件・約16億円へと大きく減少してきており、今年度に至っては12月までの実績ではありますが20件・約8億円、金額面では平成19年度と比較して僅か12%に止まった状態となっています。
経営革新計画の承認実績が平成19年度の197件から平成21年度の110件へと減少幅が約44%であったことと比較して、融資額の減少幅は約77%と段違いです。
また、経営革新計画の承認後すぐに事業を開始したいと思ってもなかなか制度融資が受けられないとの声も聞きます。
経営革新計画の承認と制度融資は別とはいえ、事業性がなく融資を受けられないのであれば、そもそも計画の承認とは何かを考えざるを得ません。
県内企業の99.1%、従業員数においても79.1%を占めるとされる中小企業の景況改善は、本県経済の景気の持ち直しに直結すると考えられ、中小企業ならではの機動性・柔軟性を活かした活力ある経営状態の形成、企業の経営革新に向けた様々な面からの行政の支援が必要です。
そこで、経営革新計画承認の後の制度融資などまで含め、事業がスタートするまでの間の支援が最も重要と考えますが、経営革新計画を承認した中小企業に対する、制度融資を含めた支援のあり方について、ご所見をお尋ねします。
2 犯罪被害者支援対策の充実と、市町が連携した今後のセンター運営支援のあり方について
質問の第2は「犯罪被害者支援対策の充実と、市町が連携した今後のセンター運営支援のあり方について」です。
一昨年度の2月定例会において、「県下市町の被害者支援を盛り込んだ条例等の制定を促すことや、連携する民間団体への財政的な支援など、県として取り組むべき課題について」をお尋ねしました。
これに対し県では、犯罪被害者等支援ハンドブックの作製や、各市町における担当窓口の設置と担当課長会議の開催などの取り組みを頂きましたこと、またあわせて来年度も犯罪被害者等支援事業費や被害者対策推進費を計上し、引き続き犯罪被害者支援センター運営支援に引き続き取り組みを頂きますことに対しまず敬意を表します。
平成16年犯罪被害者等基本法制定以降、各市町が定めた「犯罪被害者等支援に関する条例等」の施行状況をみると、平成17年度の宝塚市、相生市、たつの市、18年度の赤穂市、20年度では宍粟市、淡路市、丹波市、昨年度の太子町、そして今年度の佐用町の計9市町に止まっています。
私の地元明石市では、今週開会される市議会に関係条例が提案されると聞いておりますが、それを加えてもまだまだ少数に過ぎません。
また、市町の支援担当者は県の行う年1回の研修には参加するものの、業務内容が通常職務との兼職であることや、定期的な人事異動があり専門的な知識・技能を得にくい面があることや、人口規模の小さな市町では日ごろから住民と職員との距離が近く、顔見知りであることなどから、気軽に相談しにくい場面も考えられます。
加えて、自分たちの地域では大きな犯罪が起きていない、起こらないといった意識にも縛られているなど、まだまだ市町間での反応に温度差があるとの指摘もあります。
前回も申し上げましたが、居住するところによって支援に差が出ることあってはなりません。県下全市町での早期の条例・計画の施行が待たれます。
次に犯罪被害者支援センターの活動状況を見ると、週4回行っている電話相談件数が平成20年度には299件だったものが、昨年度には556件、そして今年度は4月~1月までの間で559件へと増加していますし、裁判所への付き添いや法律・心理相談などの直接支援活動は、昨年度の51件から今年度4~1月の間だけでもで164件へと非常に多くなっています。
支援センターの方にお話をお伺いすると、支援を必要とするニーズが高まる中、ボランティアスタッフが45名登録されていますが、働いておられる方もあり、平日の日中に活動できるスタッフが足らないなど更なる人材確保が必要とのことで、あわせて県民のまさかの時のセーフティーネット機能強化のためにも財政面の充実が急務です。
現在支援センターの活動費は、民間からの寄附と先に申し上げた県からの支援を中心に支えられていますが、人材確保・養成、広報の充実はじめ、今後高まるニーズにしっかりと対応していくためには持続的で安定的な財源を持たなければなりません。
他県では幾つかの事例もあるようですが、支援センターへの運営支援を、県下の市町に薄く広く負担をお願いする仕組みをつくることなども検討しては如何でしょうか。
犯罪被害者支援対策の一層の強化に向け、各市町の条例等の制定促進に向けた取り組みと、市町が連携した今後の支援センター運営支援のあり方についてお尋ねします。
3 農業分野等への障がい者の雇用の促進について
一昨年の2月定例会でも、障害者雇用についてお尋ねをしたところですが、今回は視点を変え、高齢化や農業従事者の減少などによる労働力不足、休耕・放棄田の拡大などの課題を抱える農業分野等への障害者の雇用の促進についてお尋ねします。
障害者の就労意欲の高まりや短時間労働へのニーズが高まる中、中小企業における障害者雇用納付金制度の適用対象の範囲拡大や、短時間労働に対応した雇用率制度の見直しなどを内容とする「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、その一部が昨年7月1日より施行されました。
これにより障害者の雇用機会の拡大が期待される中、昨年10月、兵庫労働局より6月1日現在の障害者の雇用状況が発表され、県内の56人以上規模の民間企業で雇用されている障害者が、前年比3.2%、319人増加し1万316人へ、また実雇用率は0,05ポイント上昇し1.81%となり、いずれも全国平均を上回り過去最高となったことが報告されました。
まずこれまでの障害者雇用への取り組みを大いに評価したいと思います。
しかしながら一方で、雇用障害者数1万316人の内、身体障害者は7703人・74.7%に対し知的障害者は2438人・23.6%、精神障害者は175人・1.7%にとどまっていることや、県・市町の実雇用率は法定雇用率を達成しているものの前年から0,04ポイント低下したことなど、今後取り組むべき課題の一端をうかがい知る事が出来ました。
昨年度県の障害者就業・生活支援センターには、支援対象障害者として1,278人が登録され、その内901人と70%を占めているのが知的障害者です。この知的障害者のうち職場実習の斡旋を受けた者は242人、そして最終的に就職に結びついた者は128人しかなく、精神障害者でも161人の登録者に対し就職した者は33人と非常に厳しい現実があります。
昨年度農林水産省では「障害者アグリ雇用推進事業」を実施しましたが、そこには「農業は自然と触れ合いつつ障害者が無理なくその能力に応じて農作業に関われることで、自立を促すための有益な産業である。」としています。
また京都大学大学院農学研究科牛野正准教授らの「農業における知的障害者雇用に関する一考察」によると、農業が障害者に向いている点としては、作物を育てることによる精神的な成長や、屋外での肉体労働による健康が得られること、作業が多種にわたり誰しもが何らかの形で参加できること、不良品を出してはいけないなどのストレスが少ないこと、作る品目や量、作り方など、取り組み方に自由度が大きいことなどが挙げられています。
一方、「仕事を覚えるのに時間がかる」「日によって得意・不得意の作業能率の差が大きい」、「農業では出荷規格が厳しく細かい作業や、やり直しのきかない作業も多い」など課題も多くあり、先ほど申し上げた1万316人の中でも、農林漁業分野で働く障害者は身体障害者が6人、知的障害者、精神障害者がそれぞれ1人づつと合計8人にすぎません。
しかしながら、障害の種別・態様により得意・不得意な作業があるとされている実情をしっかりと理解し、作業の工夫や指導員を養成することなどにより障害者の就農への様々な課題の克服は可能であり、加えて障害者雇用の福祉的側面、就労面、農地の有効利用面など、多くのメリットにもつながることが考えられます。
そこで、主に知的障害者を中心に、農業分野等への誘導を含めた障害者の雇用について、ご所見を伺います。
4 イベントを活用した県市町連携によるツーリズム振興について
質問の第4は「イベントを活用した県市町連携によるツーリズム振興について」です。
平成21年度兵庫県観光客動態調査結果によると本県を訪れた観光客数は1億3609万人で前年度比1.1%増加し、県内の観光消費額(直接効果)は1兆1601億円、また原材料やサービスにより生み出される1次間接波及効果、雇用者所得から消費を通じ新たに生み出される2次間接波及効果を加えた経済波及効果の合計は1兆7,682億円にのぼり、雇用創出効果・就業者誘発数は19万3200人と県内就業者総数の8.5%にあたると報告されています。
観光分野が、県内経済に大きな影響を与えることが改めて理解できました。
今後も観光分野は「打てば響く」効果のあがる、また期待の出来る領域です。
このような中、本年11月12・13日には「B-1グランプリin姫路」、また20日には日本陸上競技連盟の後援が決まった神戸マラソンの開催、そして平成24年1月からのNHK大河ドラマでは神戸にゆかりの深い「平清盛」がスタートするなど観光の目玉となるイベントが多く予定されています。
これらのイベントがどのような経済効果を生むかですが、例えば、昨年9月に神奈川県で開催された「B-1グランプリin厚木」には、24道県から46団体が参加し、開催2日間の来場者は主催者発表で計43万5000人、また厚木市では経済効果を36億円と発表、今後の観光客増を見込むと1年間で約78億円の効果も期待できるとされています。
(余談ですが、兵庫県からは我が明石の世界に誇る「あかし玉子焼き」をはじめ「高砂にくてん」「姫路おでん」が参加。中間発表では14位にあった「あかし玉子焼き」でしたが、最終結果は発表された10位以内には残念ながら届きませんでした。)
またNHK大河ドラマでは、「龍馬伝」の舞台・背景となった高知県での経済波及効果が約535億円、宿泊客+19%・日帰り客+29%、長崎県では同じく約276億円、龍馬伝効果入込観光客102万7000人と、日銀の高知支店などが発表しています。
大河ドラマ『平清盛』放映スタートにあたり、高知県や長崎県に勝る経済効果を期待したいところであり、昨年12月、井戸知事などを発起人とする、「大河ドラマ『平清盛』兵庫・神戸推進協議会」が設立されました。
しかしながら、こうした取り組みも、イベントごとにそれぞれが事務局・実行委員会などを立ち上げ、隣接する市町との連携がない状態では、波及効果は開催地限定となってしまいます。
今回のB-1グランプリの姫路市での開催について石見姫路市長は「関西で初、世界遺産で初、新幹線停車駅で初ということもあって最多来場者の可能性もある。」とし約50万人の来場を見込んでいるとのことですが、隣接市町へもその恩恵が行き渡るような仕組み、すなわち開催都市のみならず明石、神戸はじめ県下の観光資源とを連携させる県としての取り組みが必要と考えます。
そこで、本県観光の目玉となる各種イベント効果を高めるために、県市町連携をどのように図るのかお尋ねします。
5 県営住宅のバリアフリー化の促進について
以下2問は、平成20年度の予算特別委員会・決算特別委員会とそれぞれの場においても質問させて頂いたところですが、事業として大きく前進が見られそうであることから、再度お尋ねします。
質問の第5は「県営住宅のバリアフリー化の促進について」です。
平成20年に兵庫県がまとめた「将来推計人口」によれば、平成22年における65歳以上の高齢者の人口は、総人口の約23%を超えており、今後は高齢者の独居世帯、あるいは高齢者夫婦のみの世帯が増加するとが容易に予測されます。
県ではこうした状況を背景として「人生80年住宅いきいき住宅助成事業」により住宅のバリアフリー化改造を支援してきましたが、全国的に見れば、高齢者が居住する一般住宅において、「手すりの設置」、「住戸内の段差の解消」及び「広い廊下幅の確保」のバリアフリー対応が整った住宅の割合は6.7%、また住宅の所有形態別にみれば、借家で対応が整った住宅は2.6%と立ち遅れている状況にあります。
このように民間市場でのバリアフリー住宅が十分に供給されていない状況では、高齢者世帯や独居高齢者世帯の急増には対応出来ず、今後、公営住宅がこうした需要の一翼を担う必要性が高まるのではないでしょうか。
昨年度末における県営住宅の入居戸数は約47,600世帯で、65歳以上の高齢者世帯数は約21,400世帯と全体の約45%、そのうち高齢単身世帯は約11,600世帯と約24%を占めています。
県営住宅のバリアフリー化にあっては、エレベーターのない住宅に住む高齢者・障害者に対しては1階への住宅交換する一方で、「いきいき県営住宅仕様」との位置づけのもと、手摺の設置、住戸内段差の解消、1階共用部分へのスロープの設置、高齢者対応型浴室ユニットの採用、エレベーターの設置などの改修工事や建て替えを進めていますが、昨年度末の整備率は52%に止まっています。
厳しい財政状況で事業量の抑制も続く中、平成27年度末には何とか60%をめざしているとの事ですが、一方でそれまで待っていられない現実がそこにあります。
以前の決算特別委員会で紹介しましたし、先月8日の日経新聞にも掲載されましたが、地元の明舞団地で「1階への住宅交換をしたものの、その1階に入るには約1メートル・5段の階段があり、その階段が上がれない。」との訴えも聞かれました。
来年度は、県営住宅の階段室型住棟の1階部分に車イス対応住戸への改修とスロープの設置によるバリアフリー化をモデル実施されるとも聞いております。
これにより昭和40年代から50年代前半にかけて大量に供給された中層階段室型集合住宅のバリアフリー化を進めるという意味からも有効な手法になるのではないかと期待しています。
そこで、まず今回のモデル事業と今後事業の本格実施によってバリアフリー化がどのように進むのか、またバリアフリー化される予定のない住宅における高齢住居者等の喫緊の課題とその対策についてお尋ねします。
6 明舞団地・明舞センター地区再生の推進について
質問の第6は「明舞団地・明舞センター地区再生の推進について」です。
ご承知のとおり明舞団地は、昭和39年頃より県と県住宅供給公社そして当時の日本住宅公団、今の都市再生機構などによって、住宅戸数10,800戸に及ぶニュータウンとして開発されましたが、居住者は昭和50年の37,500人をピークに、現在の約23,800人にまで減少し、高齢化率は35%に及んでいます。
あわせて建設後35年以上経過した住宅が約7割を占めるなど急激な老朽化と、建物の数と居住者が同じ数になったといわれるように空家・空地化、独居化が進行するなど居住環境が激変しています。
このような中、県では、平成15年度に県下のニュータウンで進行する「オールドニュータウン問題」と一般市街地が将来直面する問題への先行対応モデルと位置づけたマスタープランとして、「明舞団地再生計画」を策定し、まち・コミュニティ再生のために、ハード・ソフト両面からさまざまな支援を行ってきました。
ソフト面では、平成15年度に団地の活性化・居住者の利便増進につながるモデル事業を実施するNPOの誘致、翌16年度には住民相互の交流や情報交換の場を目指し「明舞まちづくり広場」の開設、各種ワークショップ開催などを行ったことにより、さまざまなグループが誕生し、今も持続的で積極的な活動が展開されています。
一方のハード面では、来月31日に「明石松が丘住宅638戸」のうち、第1期分103戸が完成するなど、県営住宅の建替事業が平成20年度~27年度の予定でスタートしています。
また、団地再生のリーディングプロジェクトとして位置づけられる明舞センター地区の整備も大きな転機を迎えています。「区域1」の高齢者サポートゾーンでは、高齢者向け分譲住宅への入居が5月下旬に始まり、特別養護老人ホームが4月下旬に開設する運びとなるなど、住宅・医療・介護が一体となった新しい複合施設が完成します。
特にこの「区域1」の完成は、これまで明石市の東部における福祉施設整備が、用地の確保が困難なことなどにより整備が進まなかった経緯があり、待望の福祉の拠点となることが期待されています。
同じく「区域2」の公社住宅ゾーンでも、センター地区内にある建替え予定の公社住宅の受け皿住宅となる80戸余りの公社賃貸住宅が、今月末には完成の予定です。
そして、残るは「区域3」商業・住民交流ゾーンです。
この「区域3」について、平成21 年10 月、現地「明舞まちづくり広場」で開催された『神戸県民局「さわやかトーク」』で、知事も「一番最初に手をつけたかった」また「3月の時点で住宅供給公社直営ということも選択肢の一つとして、どうするか考えたい」と発言しておられました。このような中、昨年11月から実施してきた再生コンペは、応募事業者が要件に合わず、不調に終わったことは残念ですが、これからも明舞団地がオールドニュータウン再生の全国的なモデルとなるよう、先導的な施策を積極的に果たしていかれることを期待したいと思っております。
そこで、明舞団地再生計画のリーディングプロジェクトである、明舞センター地区のコンペの進捗状況と、今後の方向性についてお尋ねします。
岸口実
(明石市)
1.県政策立案機能の強化について
2.「中小企業憲章」を具現化する経済・雇用プログラムの作成について
新しい公共のあり方について
(1) 「新しい公共」宣言を活かした県支援のあり方について
(2) 「寄附文化元年」を根付かせるための方策について
3.男女共同参画社会づくりの視点での県政づくりについて
4.教育現場の専門職教諭のあり方について
(1) 命を育む養護教諭の配置等学校保健の充実について
(2) 心を育む専任の学校図書館の司書教諭の配置等読書活動の充実について
質問全文
第308回定例会(2月)一般質問 2011年2月24日(木)
1 県政策立案機能の強化について
景気の低迷、人口減少、高齢化などの環境変化により、兵庫県政を取り巻く経済・社会状況は厳しさを増しております。県税収入が落ち込むなど県の歳入が限定される中で、重要な行政需要に応えつつも支出に優先順位をつけ、好景気時に肥大化してきた支出の構造を変革することは、難しいことではありますが、やり遂げなければならない課題であります。そのためにも、各種施策の予算投入の根拠・効果についての十分な検証が必要なことは言うまでもありません。
しかしながら、検証もややもすれば、雇用対策のように雇用者数が何人採用されたなど総数で表され、体験談でよしとするなど、個々の事業に捉われすぎて、政策全体から検証が薄らいでいるように思えます。
行財政構造改革調査特別委員会での「選択と集中」、「優先順位を決めて」との主張は、今後の政策づくりにおいて、重要性が増すものと考えられます。さらに自治体の政策には根拠が必要であり、その根拠に基づく政策は、住民に的確に理解される形で説明可能なものでなければなりません。
厳しい経済・社会状況が継続する中、国の経済対策等に伴い、兵庫県でも2009年度は2,163億円、2010年度は899億円と疎かにできない金額の補正予算が編成されました。
もちろん国の経済対策による支援は、緊急性があり、国の枠組みの中での事業執行となりますが、この度の政権交代により、自治体が取り組む事業に対して、基金を積み増とともに地方が自由裁量で使用できる交付金として分配されております。
その中で、国の経済対策として、計上された緊急雇用就業機会創出事業については、ここ数年、世界的な経済不安により、「派遣切り・雇い止め」に対して短期間雇用を推進するため事業として、産業労働部のみならず、あらゆる部局で実施され、今年度においても249事業が展開されています。
しかしながら、課題の解消を見極めつつ、本政策と相まっての経済雇用対策となっているのかについて検証がなされ、それが活かされているのかについて、少々疑問があります。
政策を推進するには、財源の裏打ちが必要であることから、たとえ使い勝手の悪い国補正予算であっても活用する必要があり、それを如何に効率的かつ効果的に執行するかは県の力量が試されるものであります。
しかしながら、今回の緊急雇用対策については、各課から出された事業を集めただけで、兵庫県の中・長期的な戦略として展開できていないのではないかと感じます。
また、2月補正について、追加配分を受けた「住民生活に光をそそぐ交付金」活用がだされていますが、この交付金は、住民生活の大事な分野でありながら、光があたらなかった分野である地方消費者行政、ドメスティック・バイオレンス対策、自殺予防など弱い立場の方への対策、自立支援などに使えるものです。前回は、女性家庭センターの環境整備等、今回は、老朽化しているこども家庭センター建て替え整備等とされていますが、こども家庭センター、女性家庭センターの整備のあり方は、今後の児童虐待対策、DV対策として重要であり、このままでいいのかを検討するなど、一定の方向性を持って協議を重ねることが必要であります。
その戦略を展開していくには、本予算編成についても同じことが言えるとおもいますが、知恵をだして効果的運用を企画県民部総合政策室が中心となって動くべきではないかと考えます。つまり、1つの部署が中心となって方向性を示し、それに応じた施策を各部局で、責任を持って検討、調整する担当課を設置するような仕組みが必要であります。
そこで、県の政策立案機能の強化について、組織改編も視野に入れ実行すべきと考えますがご所見を伺います。
2 「中小企業憲章」を具現化する経済・雇用プログラムの作成について
16年前、未曾有の阪神・淡路大震災の発生により、被災地域の生活基盤が崩壊しました。県では、当時、生活再建、にぎわいを取り戻すために、「産業復興計画」を策定したところであります。当時、私は商工労働常任委員長として、委員の皆さんと被災地で青空会議を開催し、震災直後の復旧に必要な事柄について県や国に対する要望や対応策について協議した経験を持っております。その内容は、現場の実態を踏まえて対応策がタイムリーとなるよう事業展開を進めることが緊急課題でありましたが、国の規制をぶっ飛ばし「やらねばならない」という気持ちが強かったのも事実であります。
現在、少子高齢化が進み人口減少社会への流れの中で、県財政に占める県税収入が落ち込む中で、地方税制についても改革が求められるものの、県としての経済・雇用対策の推進は、将来の安定した納税者を育てるためにも欠かせないものであります。
ある新聞に「どっこい町工場」という連載記事があり、興味深く読みました。
その中で、中小企業は、日本の企業全体の99%、労働者も7割を占めており、兵庫県でも同じ状況であります。100年に一度の経済危機といわれるリーマンショックが起きた時、つるべ落としのように仕事がなくなる不安の中で、歯をくいしばり、「中小企業にとって最大の資源はヒトと気づいた」と中小企業経営者の話。
また、ヨーロッパ小企業憲章「小企業はヨーロッパ経済の背骨。すべての政策は小企業の視点から考える」を基にして、日本で2010年6月「中小企業憲章」が誕生したこと。
中小企業でも、IT化や材料の軽量化も進み女性が活躍できる環境があり、情報発信・販路拡大などで顧客と町工場をつなげる架け橋の役は女性に適していることから女性労働力を活用していることや、ひざの障害に苦しむ人のためにここにしかない装具をつくっていることなどが紹介されております。
このように新たな人材・発想の工夫による働く場を確保している中小企業の取り組みは、特別な町工場ではなく、兵庫県にもいくつも例があると考えます。
新規学卒の若者の就職内定率の低さが報道され、兵庫県においても、100人の非常勤嘱託職員を臨時募集したところ、6倍の590人から応募があり、大半が新規学卒者と聞いており、厳しい雇用実態を反映しているものであります。
このような雇用情勢の中、大企業志向の若者に、働きたい女性に、また、障がい者に可能な仕事をきめ細かくしっかり打ち出すことに集中して、新たな経済・雇用プログラムを作成することが今求められています。
そこで、これまでの経済・雇用プログラムが、学生の志向のミスマッチ等に対して功を奏する対策であったのか検証するとともに、今こそ、「中小企業憲章」を具現化する施策推進をめざして、経済・雇用プログラムを作成すべきと考えますが、県当局のご所見を伺います。
3 新しい公共のあり方について
(1) 「新しい公共」宣言を活かした県支援のあり方について
2010年6月に政府より「新しい公共」宣言が出されました。その内容は、「新しい公共とは支え合い活気のある社会をつくるための当事者たちの協働の場であり、そこでは、国民・市民団体や地域組織・企業・政府等が一定のルールとそれぞれの役割をもって当事者として参加し協働する」また、「新しい公共を実現するには、公共への政府の関わり方、政府と国民の関係のあり方を大胆に見直すことが必要であり、政府は、思い切った制度改革や運用方法の見直し等を通じて、これまで政府が独占してきた領域を新しい公共に開き、国民が決める社会を作る」と書かれております。
1995年という年は、兵庫県にとって未曾有の大震災の被害を受けましたが、一方でボランティア元年とも言われ、目の前の被災者に寄り添い活動するボランティアが産声をあげております。現在、県が認証するNPO法人は、1998年にNPO法施行されたこともあり、1,608(2011年2月現在)という大きな数となり、NPOの数の多さは兵庫県の宝とも言えます。
「新しい公共」の考えの中で、NPOの公共政策の役割は3つあると言われております。
第1の役割は、それまで公共政策のテーマとされてこなかった課題を発見し、社会課題として提案することであります。例えば、ドメスティック・バイオレンス(DV)は、世間から「夫婦喧嘩は犬も喰わない」と相手にされず、警察からは、「民事不介入」としてまともにとりあってもらえなかった課題を提起しております。
第2の役割は、発見した課題を社会全体に関わる公共政策上の課題として認知させていくことにあり、ここに、NPOが公共政策を形成するプロセスの最大の焦点があると考えます。
第3の役割は、公共政策の実施であります。DVの被害者支援を行うNPOシェルターはDV法が政策課題として取り上げる以前から活動を開始しております。今後、DV対策において、シェルターや相談窓口開設というNPOの役割だけでなく、DV法による警察や行政の介入の明確化や、被害者支援の補助制度の創設、メディア等による広報・普及などの総合的な政策を、行政・NPO・事業者・市民が役割分担をして実施していくこととなります。
例として、DV対策を取り上げましたが、兵庫県の持続可能な基盤づくりに「新しい公共」宣言を活かしたNPO支援などは重要と考えますが、今後、「新しい公共」の形成についてどのように取り組むのかご所見を伺います。
(2) 「寄附文化元年」を根付かせるための方策について
「新しい公共」となるNPOが、行政などから外部支援を受けることはしばしばあります。内閣府が発表した「2009年度 市民活動団体等基本調査報告書」によると、実際に外部支援を受けた団体が、必要と感じていることとして、活動希望者の紹介と派遣、活動・事業資金の助成があげられており、この結果からも、団体が人材・資金の悩みを抱えていることが伺えます。
事実、行政から必要とする支援について、「活動に対する資金補助」とする回答が最も多く70%を超えており、これはNPO等の収入のうち、寄附収入は5.5%にすぎないことにあります。確かに、行政や民間からの委託事業は活動のための重要な収入源ですが、必ずしも安定的した財源とは言えず、また、行政からの補助金にも限界があることから、資金面での大きな壁が立ちはだかっていると言えます。
阪神淡路大震災をきっかけに誕生した数多くの兵庫のNPO法人の財政基盤の安定を図ることは、NPOの先進県である兵庫県が取り組むべき課題と考えます。
昨年12月、税制改正大綱が閣議決定され、認定NPO法人制度など寄附税制が抜本的に改正されることになりました。寄附金の税額控除やこれまで認定取得が困難とされてきた事業収入中心のNPOにも認定への道が開ける新型パブリック・サポート・テスト(PST)要件による判定方式の導入など、NPO支援税制(市民公益税制)は新たなステージを迎えることになっております。
これらの新制度は画期的であり、社会のために使われるお金の流れが大きく変わる可能性が生じており、2011年が「寄附文化元年」となることを願うものであります。
また、個人住民税の控除対象寄附金も拡大しておりますが、個人住民税の税額控除については、自治体の条例制定が必要であります。既に、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・福岡県、横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市などが制定済みであります。
さらに香川県では、個人や企業などから寄附金を募り、集まった寄附金を原資として、NPO活動に対して補助金を交付するなどNPOの支援のために活用する「香川県NPO基金」を創設しておりますが、この制度については、寄附者が「支援したい団体」や「支援したい活動の分野」を指定して寄附をすることができ、地域のさまざまな課題に取り組んでいるNPOを支えております。
そこで、「新しい公共」であるNPOなどの市民活動を後押しするためにも、兵庫県として具体的な取り組みを行い、「「寄附文化元年」を根付かせるべきと考えますがご所見を伺います。
4 男女共同参画社会づくりの視点での県政づくりについて
「男女共同参画基本法」が施行されて10年を越えました。
思い起こせば、1979年、女性差別撤廃条約が国連総会で採択され、わが国においても国内法を整備し、この条約に批准しました。1999年に男女共同参画社会基本法が施行され、それを踏まえて兵庫県では2001年「男女共同参画プラン21」を策定、2002年には条例を施行しました。本当に長い道のりでありましたが、今、後継計画の策定を前に感慨深いものがあります。
施策の基本方向として重点的に取り組む課題が示されていますが、特に、農林水産業における男女共同参画推進について伺います。
農林水産業、特に農業における労働人口のほぼ半数を女性が占め、重要な担い手となってきました。直売所、加工場、独自栽培など農業に関る女性がクローズアップされ、先日のテレビでは林業における女性の活躍が取り上げられるなど地域活性化の担い手として頑張っています。しかしながら、女性農林業者の地位向上は他の職業分野と比べても遅れが目立つ状況にあります。
現在、農林水産省が、女性の経済的地位の向上と就業条件と環境の整備をするため、家族農業経営にたずさわる各世帯員が、意欲とやり甲斐を持って経営に参画できる魅力的な農業経営を目指し、経営方針や役割分担、家族みんなが働きやすい就業環境などについて、家族間の十分な話し合いに基づき、取り決める家族経営協定の締結を推進していますが、締結状況は、全国で40,663戸と全販売農家の2.5%、主業農家でも11.3%、県では締結農家は117戸にすぎず、パーセントで表せないほど小数です。
また、農林水産省が実施した「2008年度 農家における男女共同参画に関する意向調査」を見ると、女性が農業・地域活動・家事・育児・介護等にバランスよく携われていないと48.7%の女性が回答しております。その方々に今後どのようにしたいのかを尋ねたところ、時間を増やしたいのは、家事・育児・介護が最も高く、反対に減らしたいのは、農業が最も高い回答でありました。この結果は、農村女性の多くが、どれも減らせないし、増やせないつまり、にっちもさっちもいかない状況ではないかと考えます。
2001年に農林水産省では、男女共同参画推進本部を設置し、「農村女性のチャレンジ支援」を行うとともに、農協などの女性役員、女性農業委員などの参画目標を設定し、女性の経済的地位の向上を進めております
しかしながら「新ひょうご男女共同参画プラン21(案)」の、数値目標の一つとして、女性農業委員の割合を2.7%から5%に引き上げると言う低いレベルの数値目標が出されております。これは、初めから無理だと諦めているしか見えない数値であり、県の重要政策として男女共同参画社会づくりを推進しようとしているとは言いがたい状況であります。
女性農業委員のみに固執するものではありませんが、農林水産業における女性の経営参画やリーダーの育成など女性の経済的地位の向上と就業条件と環境の整備を図っていく必要があります。
そこで、農林水産業における男女共同参画を、男女共同参画推進本部としてどのように進めていくのか戦略をお伺いします。
5 教育現場の専門職教諭のあり方について
(1) 命を育む養護教諭の配置等学校保健の充実について
2006年度の財団法人日本学校保健会の学校保健室利用調査によりますと、社会環境や生活習慣の変化が大きく影響し、子どもの悩みが以前と比べて多様化しており、保健室を利用する子どもの数や養護教諭の対応時間も増加傾向となっております。
特に、保健室を利用した理由として「主に心に関する問題」としたのは、小学生で1996年度は8%でしたが、2006年度には41%に上昇しております。中学生も18%から47%、高校生も14%から44%に増えており、悩みの内容も、いじめ・友人関係・家庭環境などが上位を占めております。また、限られた時間内で養護教諭が子どもに対応する時間も増えており、起ってはならないことでるが、多数の子どもたちの保健室の利用に伴い養護教諭にも発見が難しい事故の見落としや「ヒヤリ・ハット」も生じております。
現在、養護教諭の複数配置基準は、小学校で851人以上、中・高等学校で801人以上となっています。これまでから定数内臨時教員について何度も取り上げていますが、西宮市において養護教諭も例外ではなく、早急な解消が求められます。1947年に成立した学校教育法で養護教諭が配置された原点に返り、学校現場の実態に応じた養護教諭の配置が求められます。
昨年末、「ヨーゴティチャー世界へ」という新聞報道がありました。教職に関する内容と看護学等の専門的知識を兼ね備えている養護教諭は日本独特の制度でありますが、感染症予防や寄生虫予防に役立つと世界から注目されております。途上国の子どもの健康推進策は乳幼児を対象とする母子保健に偏りがちでありますが、学校でのエイズ・衛生など保健管理と保健教育を両方補う仕組みについて途上国から注目を集め、導入が求められております。
2009年には、研修生を派遣するガーナで国内に政府が初めて学校に保健室をつくり、2010年には、複数の学校が保健室を設置しております。
養護教諭は健康観察、健康相談等を通じて、子どもたちに寄り添い、心をほぐしていくと言う重要な役割を担っており、学校ではかかせない存在であります。
そこで、今、保健室を利用する子どもたちが増加する中で、命を育む養護教諭の配置を含めた、学校保健における体制や取組をどのように進めるのか、ご所見を伺います。
(2) 心を育む専任の学校図書館の司書教諭の配置等読書活動の充実について
学校現場での新学習指導要領の本格実施や、いじめ等の学校教育上の課題に適切に対応できるよう、小学校1年生の学級編制の標準を30年ぶりに見直し、現行の40人から35人に引き下げられました。少人数学級の実施のために、必要な教職員の増員が新年度教育予算に盛り込まれ、定員の2年連続純増は20年ぶりとなり、今後、順次進められることを期待するものであります。
そのような中で、子どもたちの学びを保障することも強く求められております。
1997年に学校図書館法の一部改正により、2003年4月1日から12学級以上の学校で司書教諭の配置が義務付けられ7年が経過しました。県においても、2008年5月現在、公立の小・中学校で764人に発令されておりますが、殆どが充て職で通常の担任を務めながらで、一部で担当する授業時数を減らしているものの、司書教諭の職務を十分果たせていない状況であります。
子どもたちが、さまざまな学習の場で学校図書館を活用する機会を持ち、課題を持って本を手にすることができるような授業の工夫は、自分の意見を述べたり考えたりする力や、表現する力・豊かな心を育むためにも、専任の司書教諭の配置は重要であります。
県教育委員会では、1994年度から県読書推進校を指定し、司書教諭を中心に読書活動を推進しております。その結果、図書館を利用する子ども達が確実に増え、読書量の増加も見られます。子どもたちの読書力は、個々の生育歴と大きく関係することから、司書教諭のアドバイスが生きてくるのであります。
そこで、学びを保障する読書活動の充実に向け、専任の司書教諭の配置も含めた、体制や取組の充実をどのように進めるのか、ご所見を伺います。
掛水すみえ
(西宮市)