議会の動き

行財政運営方針の見直し(一次案)に対する意見開陳

ひょうご県民連合議員団を代表し、「行財政運営方針の見直し(一次案)」に対する、我が会派としての意見を述べます。

●行財政運営方針の見直し(一次案)に対する評価
まず、今回の行財政運営方針(一次案)の策定にあたり、我々ひょうご県民連合がこれまで再三申し上げてきた「一般会計と企業庁との間での貸借関係」、「外郭団体等の基金の集約と預託」など、県の財政の姿を見える化する取組に着手すべきとする意見を今回反映していただいたことについては、大いに評価したいと考えています。
ただし、策定過程においては、少し問題があったと思います。表現などに言葉足らずのところが多くあり、丁寧さに欠けたまま一次案が提出されたために、理解されずに随分と誤解を与えたと思います。また、各市長や地元関係者等、利害関係者が多い課題については、事前の丁寧な説明が必要であったのではないかと思います。
県民の理解を得ながら、この行財政運営方針を進めていくためには、何よりもまず、財政の透明性を高め、県民に分かりやすく説明することが重要であると考えますので、今後、財政の透明性を高める取組をより一層推進していただきたいと考えます。

●基本方針
次に、基本方針に対する意見を述べます。
3つの基本姿勢にある、「オープンな県政」、「誰も取り残さない県政」、「県民ボトムアップ型県政」を推進することについては、我々としても賛同するところであります。
しかしながら、委員会質疑でもあったとおり、一次案の中ではビルドの方向性が見えない中、来年度当初予算編成において新たな施策の方向性を具体的に整理するとされています。「イノベーション型行財政運営」という言葉だけで終わらないように、より効果的な施策の推進を図られるよう求めます。

次に、各分野の取組に対する意見を述べていきます。

●財政フレーム
まず、財政フレームについて意見を述べます。
今回、我々が以前から提案していたとおり、試算の前提条件も含めた財政フレームのあり方について一定の見直しが図られていることについては評価したいと考えています。
今後、最終案に向けて事務事業や投資事業等の見直し効果額を反映するなどの対応がなされると伺っていますが、より県民に対して説得力のある堅実な財政運営の見込みを立てていただきたいと考えます。

●事務事業
次に、事務事業について意見を述べます。
今回の一次案では、「選択と集中」を基本に、施策のスクラップ・アンド・ビルドを部局長のマネジメントに委ねるとされており、一般事業費の削減額の一部を重点政策枠として再配分するとされています。
限られた財源をより効果的な施策に振り分けることは必要ですが、県民生活に直結する医療・福祉・教育等に関しては慎重に対応するなど、事業費の配分については十分に考慮していただきたいと思います。

次に、個別の事務事業について、意見を述べます。

●海外事務所運営費(事務事業 個票No.24)
まず、海外事務所についてです。一次案では海外事務所のうち、ブラジル事務所と西豪州・兵庫文化交流センターの二つを廃止する案となっています。
このうちオーストラリアの事務所については、これまで文化交流施設として本県とオーストラリアとの交流の要として機能してきた長い歴史があります。 
また文化交流だけではなく、今後、産業の基盤であるエネルギー源が石油から水素に転換されていくと考えられる中、オーストラリアから神戸に向け液化水素を運んでくる運搬船が出港しています。オーストラリアとの関係は水素社会の実現に向けて、非常に将来性のある重要な交流となることは明白で、これを今廃止することは本県にとって大きな損失になるのではないかと危惧しています。

●投資事業
次に、投資事業について意見を述べます。
これまで我々ひょうご県民連合から申し上げてきた「適正な投資事業の規模」について検討いただいたことについては大いに評価すべきと考えます。
また今回、本県実負担が増加しない範囲で、補助・単独事業間、通常・緊急措置事業間で相互に事業費を振り替える仕組みを設定し、道路の維持修繕等、より県民ニーズの高い事業に振り替えようという姿勢も良いと考えます。これまで、国の制度を目一杯利用して、減災・防災の整備をどんどん前倒しで進めてきたことは、国の仕組みで将来の県民に負担を追わせてきたということでもあり、その必要性と適正な規模のバランスについては、一旦立ち止まって考える必要があります。
ただし、委員会質疑でも申し上げたとおり、中山間地における砂防事業をはじめ、投資水準の見直しによって影響を受ける自然災害防止対策も少なからずあることから、県民の安全・安心につながる投資についてはぜひ積極的にお願いしたいと考えます。

次に、個別の大型投資事業について、意見を述べます。

●但馬空港
但馬空港については、我が会派からこれまで何度も指摘しておりますが、但馬地域への交通アクセスが格段に改善している中において、空港の存在意義がますます問われています。そのような中で、羽田からの直行便や各地からの就航に対応することを目的とした滑走路の延長計画に400億程度と推定される多額の投資をこれまで検討されてきましたが、それに見合う経営改善の見通しがたっていないことは、非常に危ういものと考えています。
委員会質疑においては、新たな第三者機関設置は不要との回答でしたが、現在のあり方懇話会では今の但馬空港ありきでの議論がなされていると感じます。
事業をゼロベースで見直すことを公約に掲げられた知事が、この問題に対して十分に検討され、今後の見通しを示されることを期待します。

●県庁舎等再整備事業
続いて、県庁舎等再整備事業についてです。
委員会質疑においては、現庁舎の簡易な耐震改修によるコスト低減や、庁舎整備への民間投資導入に伴う県負担額の低減等を一旦凍結のメリットとして挙げられていたが、一定の耐震化、修繕を行うとすると、相当程度費用がかかってくるほか、民間投資の導入についても来年度から検討するとは言え、とても具体的な案とは言えない状況です。
また、庁舎整備のあり方を決定するまでの間においても、災害発生時の拠点としての機能が求められるほか、現庁舎で働く職員の安全を確保する必要があります。
今後はより具体的な改善案を示しつつ、現庁舎で働く職員の耐震不足への不安、インフラ設備の老朽化による職場環境の悪化、ストレスの改善などに努めていただくよう求めます。

●伊丹庁舎新館等整備事業
次に、伊丹庁舎新館等整備事業についてです。
一次案の修正案において、阪神県民局としての統合を含めて一旦凍結とされましたが、阪神県民局の統合については、これまで数年にわたって議論・検討を重ね、令和2年2月の「阪神南県民センター・阪神北県民局の統合方針(最終案)」において、本局を伊丹庁舎敷地に置くなどの方針が示されたところです。
委員会質疑でも申し上げましたが、十分なコスト比較や地元関係者への説明を行っていないにもかかわらず、本局を宝塚とする一次案については、これまでの議論を蔑ろにするものであり、多くの混乱と県に対する不信感を招くものであったと思います。
一旦立ち止まって、県民局・県民センター体制の今後の見直しの中で検討するとのことですが、真に行財政の改善になるベストな方法になっているのかをよく検討し、地元関係者にも十分説明・理解をしていただいた上で最終案を導くべきと考えます。

●災害に強い森づくり等事業について
次に、県民緑税を活用した災害に強い森づくり等事業についてです。災害に強い森づくり等事業については、一次案の中で「別途整理」と位置づけられていますが、超過課税として県民から納税いただいていることを十分認識した上で、政策目的に合致した事業の推進を図るよう求めます。

●教育委員会所管の社会教育施設
次に、今回の一次案には整理されていませんが、教育委員会所管の県立美術館西宮分館や県立考古博物館加西分館などについてです。県として寄贈を受けた展示品等について、寄贈には感謝しつつも、それを公費で展示し続けることになるため、文化的価値や県民ニーズはもとより、ランニングコスト等を含めた費用対効果をよく検討し、このまま維持するのかどうか、適切に判断されることを求めます。

●収入の確保
次に、収入の確保について意見を述べます。
まず、企業版ふるさと納税については、対象となる企業が限定される中、企業にアピールできるメリットを考えて訴求していくよう求めます。
また、ふるさとひょうご寄附金については、県として寄附金で応援してほしい事業を掲げてプロジェクト方式を導入して、法人からの寄附も受け入れつつ、寄附者の意向もより具体的に反映していることは大いに評価できます。応援したくなるような事業の発案・募集、参画と協働をより一層進めていただきたいと考えます。
さらに、新型コロナウイルス感染症による消費の低迷や企業業績の悪化、回復に対する的確な対応を望みます。

●公営企業
企業庁の所有する事業進度調整地である「ひょうご情報公園都市」については、事業化に向けた具体的な検討を始めていくと聞いていますが、すでに多額の利子が加算されている土地であり、早期の対応が必要です。
また「播磨科学公園都市」については、平成30年度の行革特別委員会から3年経てもなお事業化の展望がありません。先の決算特別委員会での質疑では、現状の土地利用計画をどうしていくのかを見直す時期に来ており、まずはこの利用計画について検討するとされましたが、処分について検討せざるをえない状況と考えます。
その際、県有環境林としての活用を検討されるのであれば、取得経緯や開発当初の経緯等も検証し、また本来の資産価値を明らかにする必要があると考えます。

●公社
次に、公社の見直しについてです。公社等のあり方を令和4年度以降にゼロベースで見直すとされていますが、見直しにあたっては議会の意見もしっかりと聞きながら方向性を示していかれるよう求めます。

次に、職員についてです。

●定員
まず、定員については、平成30年4月1日を基本に配置するとしていますが、課題として、新型コロナウイルス感染症対策において保健師の増員が必要と当局も認識されておられます。感染症のみならず災害対応等、県民の命と暮らしを守るために必要となる適切な職員定員を確保していただきたいと考えます。
また、今回本庁を12部体制に見直し、それぞれに総務担当課を置くとされています。委員会質疑では事業課の総務機能を総務担当課へ集約することや、課の大括り化など、組織の見直しと併せて定員を捻出するとのことでしたが、見直し後も十分な検証を行っていただきたいと思います。
今後も、県への多様な行政課題への対応や、今回の新型コロナウイルスのような突発的な課題への対応など、県民の行政ニーズに対して、行政サービスの低下に繋がらないよう、適切な職員数の検討をお願いしたいと思います。
 
●給与
次に、給与についてです。
今回の方針においても、引き続き管理職手当の減額を行うとされていることは大変心配をしております。しかも、10数年にわたるものであり、優秀な職員の確保や、管理職に就く職員のモチベーション向上のためにも、管理職手当の減額が本当に適切な判断であるのか、今後も検討をお願いしたいと考えています。
また、給与を含め、職員の勤務条件や福利厚生に関する見直しにあたっては、県職労・現業評議会等とも十分に協議行い、労使合意のうえ進めていくよう求めます。

●働き方改革
次に働き方改革についてです。
制度や職場環境を柔軟に変革していくことはもちろんのこと、仕事の中味をどう変えていくかが問われています。「旧来の慣例・慣習による仕事を見直し」とありますが、仕事の工程・資料・会議等が必要なのか、という細かなところから、職員自身が変革していくことを許容し、後押しするような仕組みと風土を作り出し、より一層の働き方改革を実現させることを求めます。

●人材育成
次に、人材育成についてです。女性幹部職員の育成を真剣に考えるのであれば、県政あるいは部の施策を見渡せる総務課や財政課、人事課の役付での経験が重要です。男性であれ、女性であれ、子育てや介護など家庭との両立が求められる職員の不安をフォローできる体制整備とそういった職を経験させることは両輪として進める必要があると考えます。

●地方分権への取組
コロナの感染防止対応のなかで、地方自治体の存在感が増大し、地方自治体が自らの判断と権限、財源で取り組む分権型社会の必要性が認識されました。
今後、兵庫県として国へ、更なる事務・権限の移譲を提案していくと同時に、県と市の関係においては、役割分担を明確にし、市町で実施するほうが効果的であるものについては、財源と共に移行を積極的に行うべきと考えます。
質疑では、国に対してはあらゆるチャネルを駆使して国に権限移譲を求めていくとした一方で、市町への移譲については慎重に検討していく、と答えておられますが、これまでの都道府県としての権限に固執せず、県民にとって何が最善かを市町と十分に協議し、財源と共に権限の移譲を進めていただきたいと考えます。

最後に、まとめの意見を述べます。
今回の一次案における収支見通しは、税収の伸び鈍化等により、令和10年度までの収支不足額は、総額で440億円になると見込まれており、今後も非常に厳しい状況が続いていくものと予想されています。
このような中で、県民の理解を得ながら、齋藤知事が掲げる「躍動する兵庫」を実現するためには、何よりもまず、行財政の透明性を高め、県民に分かりやすく説明することだと思います。その上で、スクラップに重きを置く改革ではなく、ビルドを重視した改革に取り組むことで、県民の要請に的確に対応できる持続可能な行財政基盤を確立することに繋がります。
今回の意見開陳での提案が、行財政運営方針の見直し(最終案)で十分に反映されることを期待し、意見表明を終わります。