第309回定例会(6月)代表質問
2011年6月21日(火)
代表質問に先立ち、3月11日に発生いたしました東日本大震災により、尊い命を亡くされた皆様のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆様に対し、衷心よりお悔やみを申し上げます。また、今なお被災地で避難されておられます皆様に対して、心よりお見舞いを申し上げます。
想像を絶する困難な状況の中、多くの方々が懸命に救援活動を続けておられます。本県からも、井戸知事のリーダシップのもと、警察・消防職員並びに県の職員や各自治体の職員の皆様が被災地に派遣され、日夜、救援・支援活動に取り組んでおられます。我が会派が被災地調査に参りました際にも、現地の方々からたくさんの感謝のお言葉をお聞きしました。被災地の復旧・復興に熱心に取り組んで頂いている皆様に対しまして改めて感謝申し上げ、深く敬意を表するとともに、今後とも更なる被災地・被災者への支援をお願い申し上げます。
この東日本大地震発生を受け、私は県民の皆様から寄せられた提言を踏まえ、民主党・県民連合議員団を代表して、以下8点にわたり、知事並びに関係当局に質問をいたします。
1 第2次行財政構造改革推進方策の今後の推進について
質問の第1は、「原発事故を想定した原子力防災計画の見直しについて」です。
去る3月11日に発生した東日本大震災では、これまでの想定を超える事態が生じ、戦後最大規模の災害となり、今なお多くの方々が不自由な生活を余儀なくされております。
震災後のニュースや新聞記事等でも「想定外」や「未曾有」といった言葉が多用され、それだけ今回の震災が予想を超える大きなものであったことが伺われますが、県民の安全・安心を守る義務を負う我々は、このような言葉を安易に使うべきではありません。阪神・淡路大震災の経験と教訓、そして今回の震災から学んだ教訓を踏まえ、事前にあらゆる危険性を想定し、未然に災害を防止するための対策に、早急に取り組んで行く責務を負っています。
既に、本県を含め、全国の多くの自治体が防災計画の見直し作業に着手しておりますが、その際、地震・津波対策に加え、忘れてはならないのが原発事故対策です。本県では2001年に、原発から10キロ圏外の自治体としては全国で初めて「原子力防災計画」を策定しましたが、県域から最も近い原発でも約50kmも離れていること等から、同計画は主に放射性物質の不法廃棄や運搬中の事故を想定したものとなっています。
しかし、今回の福島第1原発事故では、半径20km圏内が警戒区域として立入が制限され、それ以外で放射線量の高い地域に計画的避難区域が設定されています。また、数百km離れた関東地方の水道水や農産物から放射性物質が検出されるなど、放射能汚染も広範囲に及んでいます。
関西では、福井県内に14基の原発が集中しており、万が一、これらのいずれかで今回のような事故が発生した場合、その被害は福井県内のみに留まらず、本県を含め関西全域に広く及びます。
例えば、仮に琵琶湖が汚染されたとなれば、県内では神戸市や阪神地域の一部の水供給に大きな影響が生じますし、天候状況によっては、但馬・丹波地域をはじめ県内各地域へ放射性物質が降り注ぐ恐れもあり、こうしたことも十分に考慮し、原発事故発生時の様々な事態に対処できる具体的な対策を盛り込んだ防災計画を早急に策定すべきです。
また、発生した事故のレベルによっては、より大きな被害を受けた府県から被災者や被災家畜等を受け入れるといった被災地支援の取組も求められる可能性も高く、周辺府県とも相互に情報を共有し、連携・協力して検討作業を進める中で、あらゆる事態に対応できるよう、早急に原子力防災計画の見直しに取り組む必要があると考えます。
そこで、今回の東日本大震災による福島第1原発事故を踏まえ、現在の原子力防災計画について、今後、どのような方針のもと、どのようなスケジュールを想定して見直し作業を進めていくのか、また、その際の他府県との連携のあり方についてどのように考えているのか、当局のご所見をお伺いします。
2 地域防災力の更なる向上について
質問の第2は、「地域防災力の更なる向上について」です。
この度の東日本大震災を受けて、全国の自治体が防災計画の見直しの検討を始めています。本県や関西広域連合においても、近い将来に発生が確実視されている東海・東南海・南海地震の3連動地震等を想定した見直し等が進められていますが、そもそも国が、今秋を目途に地震被害想定の再検討を行うこととしていることから、これら見直し後の防災計画が最終的に取りまとめられるのは早くともそれ以降になるものと思われます。
しかし、阪神・淡路大震災やこの度の東日本大震災の例を見ても明らかなように、地震をはじめ自然災害はいつ起こるかわからず、我々が計画の見直しを終えるまで待ってくれるという保証はどこにもありません。防災計画を見直している間にも地震、そして津波が我々を襲ってくる恐れはあるのであり、早急な防災計画の見直しを進めると同時に、日頃から、いざという時のための備えを怠ってはなりません。
この点、防災対策を考える上で、「自助・共助・公助」という言葉をよく耳にしますが、我々は、もう一度、これら三つの視点の関係をしっかりと考えてみるべきです。
公助、すなわち行政機関等による支援にはおのずから限界があることは明白であり、「行政が何とかしてくれるだろう」という行政依存の考え方だけでは、災害を未然に防ぐ、あるいは災害発生直後に自らの安全・安心を確保することはできません。行政機関自体も被災し機能麻痺に陥る恐れがあることを考えれば、むしろ、自分や家族の命・安全はまず自らで守る、その上でご近所や地域の中でお互いに助け合う、支えあうと言った視点を持つことが必要です。まずは一人ひとりの個人が自立することが重要であり、次いで家族や親類などによる自助、そして職場や地域などの共助、最後に地方自治体や国による公助を求めていくべきだと考えます。
しかし、突如として人々が自助・共助の力を発揮することはあり得ず、災害発生時に急に助け合いや支え合いを求めても機能する訳はありません。いざと言うときに備えるためには、あらかじめその力を発揮できるような仕組みを構築しておくこと、普段から支え合いの絆を作っておくことが必要です。
すなわち、県民一人ひとりが、常日頃から、防災に関する正しい知識を習得し防災意識を高めるとともに、災害時における適切な行動力を養うことにより、自助能力を高めること、そして、自主防災組織をはじめ、日々の活動や業務を通じて地域の実情を把握されている消防団、郵便局員といった地元の方々など地域とのつながりの中で共助の精神を養うことが重要です。
この度の東日本大震災の津波により、岩手県釜石市では1300人以上の死者と行方不明者が出ましたが、約2900人の児童生徒のうち、死者・行方不明者はわずか5人に止まり、「釜石の奇跡」と呼ばれているそうです。これは、同市が5年前から防災の専門家の指導を受けながら何年もかけて防災教育に取り組んできた成果だということであり、常日頃からの備えが、いざと言うときにどれだけ大切かを如実に表している実例だと思います。
そこで、県として、早急な防災計画の見直しを進める一方で、それぞれの地域における防災力の更なる向上に向け、今後どのように取り組んで行くのか、当局のご所見をお伺いします。
3 節電対策について
質問の第3は、「節電対策について」です。
この度の東日本大震災により発生した福島第1原発事故は、これまで安全だと言われ続けてきた原子力発電所に対する国民の信頼を根底から覆しました。現在、全国の原子力発電所54基のうち35基が、震災や定期検査などのために停止中ですが、定期検査を終えても、地元の合意が得られず再稼働できない状況が続いており、日本の総発電量の約3割を占める原発の稼働率が徐々に低下する中、安定した電力供給に対する国民の不安が次第に高まっております。
東京電力及び東北電力管内では、福島第1原発をはじめ太平洋沿岸の発電所が軒並み被災し、電力供給力が大きくダウンし、夏の消費ピーク時の需給が逼迫する恐れがあります。こうした夏の電力不足に対応するため、去る5月13日、政府は、両電力管内における使用電力を昨年夏比で15%削減する節電目標を正式に決定いたしました。
また、中部電力管内においても、政府の要請に基づく浜岡原子力発電所の全面停止の影響による夏の電力不足が予測されており、節電への協力要請がなされています。
さらに、本県を含む関西電力管内においても、今年度の供給計画では、8月のピーク時の最大需要2956万キロワットに対し、供給能力は3290万キロワットと11.3%の供給予備率が見込まれていました。
しかし、福井県内にある関西電力の原発11基のうち4基が既に運転を停止しており、地元福井県は国が福島第1原発の事故原因を踏まえた新たな安全基準を設定し、関西電力がこれに対応したことを確認できない限り再稼動は認められないとの方針を示しています。7月には、更に2基が定期検査入りする予定であり、このまま再稼動が認められなければ、関西においても、電力需給が逼迫する可能性も否定できません。
このような状況を踏まえ、先月26日に開催された第7回関西広域連合委員会においては、関西全体における省エネ・節電対策について議論がなされ、家庭や会社事務所に対して、5~10%の節電努力を呼びかけることが合意されました。
これを受けて、本県においても、サマータイムの導入をはじめとする県自らの追加的な取組に加え、産業・業務部門や家庭における節電対策の推進にも取り組むこととされています。
ただ、県や神戸市をはじめ、行政機関では既に従来から積極的な節電対策に取り組み一定の効果を挙げており、新たな対策に苦慮する現状にあることや、サマータイム導入に伴う節電効果が明らかでないことを考えれば、行政分野における効果には、大きな期待は寄せられません。
むしろ、今回の節電対策が実効性あるものになるか否かは、産業・業務部門や個々の家庭における取組が進むかどうかにかかっているのではないでしょうか。
そこで、県として、産業・業務部門や個々の家庭における節電対策をこれまで以上に促進し、実際の節電効果につなげるため、具体的にどのような対策に取り組んでいくのか、また、その取組を進める上での今回のサマータイム導入が与える効果について、知事のご所見をお伺いします。
4 ボランティア休暇制度の更なる普及と活用について
質問の第4は、「ボランティア休暇制度の更なる普及と活用について」です。
阪神・淡路大震災の発生から既に16年以上の月日が経過しました。あの大震災は、我々の生活や心に大きな傷跡を残しましたが、その一方で、多くの方々が立ち上がるきっかけにもなりました。
被災地の状況を目の当たりにした大勢の人々が、全国から兵庫県に向かい、県内の至るところで様々な支援活動を行ってくださいました。こうした動きから、1995年は、後に「ボランティア元年」と呼ばれ、その後、災害支援をはじめとする様々なボランティア活動の高まりにつながっています。
このように、阪神・淡路大震災以後、ボランティア活動はわが国社会に定着してきましたが、こうした活動に参加するための特別有給休暇は、育児休暇や介護休暇等の法定休暇とは異なり、企業には導入義務が課されておりません。
確かに、阪神・淡路大震災を機に制度化する企業や団体は増えましたが、厚生労働省の平成19年就労条件総合調査によると、ボランティア休暇制度があると回答した企業は全体の2.8%とまだまだ少ないのが実態です。
従業員1千人以上の会社が17.7%に対して30~99人の会社では1.8%、電気・ガス・熱供給・水道業20.0%、金融・保険業12.7%に対して卸売・小売業では1.6%と、企業の規模や業種によっても導入率は異なっております。
大企業では、この度の東日本大震災を機に、制度の新設、拡充に取り組んだ企業も見られました。
例えば、ある食品メーカーでは、従来の休暇制度に加え、ボランティアに参加した社員に交通費・宿泊費として3万円を補助する「ボランティア活動費用補助制度」を新たに導入しました。
また、既存のボランティア休暇制度とは別に、希望する社員を「業務」として宮城県に派遣する「企業ボランティア」制度を導入した企業もあります。出張と同じ扱いで労災も適用されることから、現在、常時10人の社員が被災地でがれきの撤去作業などに携わっており、今月末までに延べ200人が参加する見通しだそうです。
薬剤師の資格を持つ社員を社内公募し、被災地に派遣している製薬会社もあります。派遣される社員は出張扱いとし、手当や交通費も支給され、1~2週間程度、被災地で医薬品の仕分けや避難所での保健衛生・健康指導などに取り組むそうです。
このように、大企業で制度の新設、拡充が進む一方、従業員が1人でも欠けると仕事が回らなくなる中小企業では、社会貢献したくても本業を優先せざるを得ず、法定以外の休暇制度の導入は難しいのが実態のようです。
また、制度を新設した大企業の中にも、本業との兼ね合いが難しく、社内での休暇取得がなかなか進まないところもあるようです。
阪神・淡路大震災をきっかけに人々にボランティアの心が根付いたように、この度の東日本大震災を機に、企業が社会的責任、社会貢献のひとつとしてボランティア活動に積極的に関わる流れを作って行く必要があります。
東日本大震災の被災地では、まだまだボランティアの人数が足りないと言われています。あの阪神・淡路大震災の際、多くのボランティアの方々に助けられた本県として、規模や業種等に関わらず、より多くの企業にボランティア休暇制度が普及するよう、また、同制度のより一層の活用が図られるような職場の意識改革が促進されるよう、積極的に働きかけていくべきだと考えますが、当局のご所見をお伺いします。
5 本県経済の活性化へ向けた中小企業支援対策について
質問の第5は、「本県経済の活性化に向けた中小企業支援対策について」です。
皆様のご記憶にまだ新しいことと思いますが、今から4年前の2007年8月に表面化したアメリカのサブプライムローン問題に端を発する世界金融市場の混乱は、翌2008年にはアメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズの破たんを招き、以後、2009年にかけて主要国の景気後退による世界同時不況を巻き起こしました。我が国もその例外ではなく、リーマン・ショック直後の2008年10~12月期の実質GDPの成長率(年率換算)は11.6%減、翌2009年1~3月期が18.0%減と、大きく落ち込みました。
その後、経済界や産業界の懸命の努力や、国や地方自治体による積極的な経済対策の効果もあり、我が国経済は少しずつ持ち直し、中小企業の業況についてもやや持ち直しの動きがみられていた時期に東日本大震災が襲ってきたのです。
この度の東日本大震災により、企業の生産活動や個人消費等が急激に落ち込み、日本経済にブレーキがかかっています。リーマン・ショック後の落ち込みからようやく立ち直りつつあった我が国の経済は、再び、大きな試練の時を迎えています。
そもそも、近年、益々顕著となったグローバル化や新興国の台頭による競争条件の変化等の影響もあり、今2月に内閣府が発表した我が国の昨年の名目GDPは5兆4742億ドルと世界第3位へ転落するなど、世界経済における我が国の地位が揺らいでいます。また、我が国経済は、少子高齢化の進行に伴う人口減少による国内市場の縮小、長期的な円高傾向の定着や資源原材料価格の高騰、企業海外展開比率が30%を超える等の国内産業の空洞化といった深刻な状況にも直面しております。
このような中、内閣府が6月9日に発表した2011年1~3月期の国内総生産の速報値によると、年明けから回復基調にあった日本経済は、東日本大震災により、実質GDPは、2010年10月~12月期に比べて年率換算で3.5%減となり、2四半期連続のマイナス成長となり、震災後、企業の資金繰りは厳しさを増しております。
特に、大企業の下請けや孫請けを担う中小企業では、計画停電や部品調達が困難なことによる大企業の操業休止等により大きな影響を受けております。本県内にも、東日本立地の工場の被災、部品調達の困難などにより大きな影響を受けている中小企業が多数あります。
今後、夏場の電力不足、節電対策等により、仮に大企業が操業休止等を行えば、中小企業を取り巻く情勢は、より一層厳しさを増す恐れもあります。
中小企業は、国内における企業数で99.7%、従業者数で69.0%を占めており、我が国経済をけん引する原動力であり、社会の主役であります。地域社会と住民生活に貢献し、伝統技能や文化の継承にも大きな機能を果たしております。
そこで、本県経済、ひいては我が国経済を活性化する上で中小企業が果たすべき役割の重要性を十分に認識し、この度の震災の影響を受けている中小企業が引き続き円滑な事業継続を行えるよう県としてより一層の支援に取り組むべきと考えますが、その具体的な取組内容を含め、当局のご所見をお伺いします。
6 地域包括支援センターの更なる活用について
質問の第6は、「地域包括支援センターの更なる活用について」です。
2025年は、超高齢社会日本を象徴する年となるようです。
いわゆる団塊の世代が75歳以上となる年に当たり、内閣府の平成23年版高齢社会白書によると、総人口1億1927万人のうち30.5%に当たる3635万人が65歳以上の高齢者となり、65歳以上の高齢者1人を支える15から64歳までの生産年齢人口数は2.0人と推計されており、いわゆる現役世代2人で高齢者1人を支える時代となります。
また、65歳以上の高齢者のいる世帯は増加の一途を辿っており、2009年現在で2013万世帯と全世帯の41.9%を占め、そのうち一人暮らしと高齢夫婦のみの世帯を合わせるとその半数を超える状況にあります。65歳以上の高齢者が世帯主である高齢世帯も年々増加傾向にあります。
さらに、高齢世帯数に占める家族類型別割合の変化をみると、「単独世帯」の割合が一貫して上昇を続け、2030年には37.7%へと上昇することが見込まれております。
かつて、高齢者の多くは老後を子どもや孫と同居して、人生の最後を安らかに過ごした時代もありました。しかし、核家族化の進行や家庭環境の変化に伴い、子どもと同居する割合が徐々に減少し、一人暮らしあるいは高齢夫婦のみの世帯が増加、家族による介護は期待できなくなってきました。また、認知症高齢者やがん患者の増加等により、医療と介護を必要とする高齢者も増加しています。
こうした社会状況の変化に対応し、高齢者の暮らしの安全を確保し、安心して生活を送ってもらうため、各市町では、介護保険サービスの強化・充実のみならず、住み慣れた地域で不安を抱かず安心して過ごせるよう、見守りや安否確認に関する様々な取組が、地域の方々の協力のもと、次第に広がりつつあります。
国においても、住み慣れた地域において高齢者が自立し地域との、よりしっかりとした連携を図ることを目指し、2005年の介護保険法の改正により、「地域包括支援センター」を制度化しました。
この地域包括支援センターは、昨年4月末時点で全国に4065カ所、設置保険者数は1589と、全ての保険者に設置されることになり、高齢者の暮らしを支える総合的な窓口として関係機関との「橋渡し役」となっているほか、地域住民にとっても「よろず相談所」として大きな役割を果たしております。
その支援対象は、介護支援業務以外にも認知症や精神疾患、虐待、家族の失業など広範にわたっており、円滑な業務遂行のためには、支援が必要な方に必要な支援を適時的確に行えるよう個別ケースの早期発見および地域住民からの早期相談が重要です。また必要に応じて保険者や介護事業者、民生委員、警察、消防、弁護士等と密接に連携を図ることも不可欠であります。
しかし、現状では、このセンターの存在すら知らない住民もおられます。
認知症や1人暮らしなどにより自ら支援を求めることが困難な高齢者が増えているにも関わらず、個人情報保護を理由に、必要な情報を関係者間で共有することが困難となり、地域の見守り活動等の推進に支障が出ているという指摘もあります。
こうした現場での課題に鑑みれば、地域包括支援センターの機能を強化するためには、人材や財源確保だけではなく、地域におけるセンターの認知度をより一層高めるとともに、適切な個人情報保護策を講じた上で、関係者間において、市町が保有する要保護者に関する情報を共有できる仕組みづくりが重要ではないでしょうか。
そこで、広域的見地から、県下各市町に通ずる高齢者福祉の改善に取り組むべき県として、今後、県下各地域の地域包括支援センターが、より実効ある取組に積極的に取り組んでいけるよう、どのように支援していくのか、当局のご所見をお伺いします。
7 小中学校における食育の推進について
質問の第7は、「小中学校における食育の推進について」です。
「食」は、我々の命と健康を支え、人が生きていく上での基本となります。
こうしたことに鑑み、国では、平成17年7月、国民が健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむ食育を推進するための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的に「食育基本法」が施行されるとともに、本県においても、「食の安全安心と食育に関する条例」が平成18年4月に施行されました。
同条例では、食育に関する基本理念や、県や事業者の責務、市町や県民の役割等を定めており、県では、この内容を踏まえ、食育に関する総合的な施策展開を図っておられます。
中でも、特に成長期にある子どもにとって、健全な食生活は健康な心身をはぐくむために欠かせないものであると同時に、将来の食習慣の形成に大きな影響を及ぼすことから、こうした子ども達が健やかに生きるための基礎を培う上で、食育が果たすべき役割は極めて重要であり、同条例も、学校設置者・管理者の食育の推進義務について定めております。
それぞれの学校では、子どもが食に関する正しい知識を身に付け、自らの食生活を考え、望ましい食習慣を実践することを目指し、学校給食等を活用して食に関する指導、食育が行われております。
この食育は、各学校に配置された栄養教諭が中心となって推進しますが、本県における栄養教諭の配置は、平成19年度からスタートし、本年4月1日現在の配置数は338人となっています。文部科学省の調査によると、この人数は、大阪府の442人、北海道の404人に次いで全国第3位ではありますが、食育を推進していく上で、栄養教諭が既に配置されている学校と未だ配置されていない学校との間で、大きな格差が生じているのではないかと懸念しております。食育基本法の前文において、食育は、生きる上での基本であって、教育の三本の柱である知育、徳育、体育の基礎となるべきものと位置付けられていることに鑑みれば、早急に県内の全ての公立小中学校に栄養教諭を配置すべきではないでしょうか。
学校給食における地場産食材の活用、米飯給食の普及・定着、郷土料理や行事食等を献立へ取り入れることは、地域の自然、食文化、産業等の理解を深める上で有効でしょう。また、学校における農林漁業体験を通じて世界を取り巻く食料事情や食料自給率に関する知識や理解を深め、自給自足の重要性を学んだり、自然の恩恵、農林漁業者への感謝や尊敬の念の醸成に役立つなど、食育の推進を通じて様々な教育的効果が期待されます。
そこで、県として、小中学校の義務教育における食育の位置づけや重要性についてどのように認識しているのか、またこれを踏まえて、今後、栄養教諭の全校配置を含め、小中学校における食育の推進にどのように取り組んでいくのか、教育長のご所見をお伺いします。
8 警察官退職者の積極活用による治安向上について
最後の質問は、「警察官退職者の積極活用による治安向上について」です。
わが国の刑法犯の認知件数は、バブル期の頃から増加し始め、1998年に200万件を突破、2002年に戦後最悪の285万件を記録しました。政府も「治安回復」を政策の大きなテーマに掲げ積極的に取組を進めた結果、警察官は1万人以上増え、空き交番は解消されたと聞いております。また、防犯ボランティアが平成17年度からの6年間で52万人から270万人に増えるなど地域の防犯意識も高まりました。
こうした成果もあり、我が国における刑法犯の認知件数は、2002年をピークにその後8年連続の減少となり、昨年は前年比6.9%減の約158万6000件と、1987年以来23年ぶりに160万件を下回る数字となりました。本県内での認知件数も、前年比10.8%減の8万860件となっています。
この数字を見る限りでは、我が国の治安は着実に回復軌道に乗って良くなっているはずなのに、何故か国民・県民の体感治安は一向に解消されていないというのが現実ではないでしょうか。
刑法犯の認知件数は減少しているものの、その反面、検挙件数は6年連続で減少し、2010年の全国検挙率は31.4%、兵庫県においては29.2%に止まっています。検挙率のアップが治安回復の鍵であることは言うまでもありません。
県内に目を転ずれば、性犯罪、侵入犯罪、すりや自転車盗といった犯罪は依然として目立っています。ひったくりや強盗は、景気や雇用情勢との相関関係が強いと言われており、昨今の不況による雇用不安あるいは経済格差の拡大等に伴う治安の悪化も懸念されます。
犯罪防止のためには、これまで警察官の大幅増員や空き交番対策と言った「力による封じ込め」による対策において一定の成果を収めてまいりました。
本県においても、県内414交番に交番相談員を配置することにより、地域住民からは「交番相談員が何時でも交番に居てくれるので気軽に相談できる」との評価を得るなど、行政サービスの向上に結び付いております。また、交番勤務の警察官からは「街頭活動に専念できる」との声もあがっており、地域防犯等に一定の効果をもたらしております。
しかし、その一方で、本県における警察官1人当たりの負担人口は482人、全国42位であり、全国1位の長野県の648人の約7割となってはおりますが、広い県土を持つ本県では都市部と郡部の状況も大きく異なり、数字には表れない部分もあると思われ、昼夜を分かたず職務に精励されている警察官の方々のご負担、ご苦労は、まだまだ大きいものと思われます。
このような現職警察官の方々のご負担、ご苦労を少しでも軽減し、県内の治安向上、ひいては県民の体感治安の向上に資するため、現場職務に精通している警察官退職者を再任用するなど、これまで以上に積極的かつ有効な活用に取り組むべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。