第311回定例会(12月)一般質問
2011年12月8日(木)
1 次世代育成支援に向けた環境整備について
(1) 不育症対策について
質問の第一は「次世代育成支援に向けた環境整備について」です。
まずは産みたいと望んでいる夫婦への支援という観点から不育症対策について質問します。
現在、子供を持ちたいと思いながら不妊に悩み、検査や治療を受けている夫婦は増加の一途を辿っています。不妊治療という言葉もこの数年で一般的になり、特定不妊治療費助成制度も年々拡充されています。治療を受ける身には大変ありがたい制度ですが、所得制限があったり、医療費の値上げで自己負担額の軽減にはつながらなかったりと十分であるとはいえません。本県としては不妊治療の保険適用を国に求めているとのことですが、これは大変高いハードルを越えねばならず、もう少し現実的なアプローチとして不育症への支援について質問いたします。
妊娠はするものの流産や死産を繰り返すのが不育症ですが、国内において140万人の経験者がおり毎年3万人が新たに発症しているとの結果が最近の調査で明らかになりました。昨年の出生児数107万人から考えてもこれは大変な数だといえます。
不育症は原因にもよりますが、適切な治療を受ければ9割近くが出産できるといわれています。これは成功率3割程度の特定不妊治療に望みを託して長年通院した身からすれば大変自信と希望を持てる数字です。しかしまだまだ認知度が低いことから流産、死産を繰り返して悲しんでいる夫婦が多いのが現実です。情報を集めて、勇気を振り絞って専門病院を訪れても、治療を開始すると保険適用外の部分も多く、積み重なる治療費に怖気づき、それなのに時間的制約で仕事を辞めざるを得なくなるなど、夫婦が抱える負担は大きなものとなっています。
周囲の理解不足から流産・死産は女性の管理ミスであるかのような誤解を受け、その結果、鬱症に悩まされたり、患者の離婚率が通常の3倍にもなっているなど夫婦への影響は深刻です。
最近になって現状手つかずであった不育症患者への支援にも光が当たり始めました。全国で初めて岡山県真庭市が『一度授かった命をなくすのはストレスフルなできごと』として治療費の助成を始めたのを機に今年4月から和歌山県が全県において、また石川、茨城、神奈川の自治体の一部などでも取り組みが開始され、その動きは徐々に広がりを見せています。
本県においては不育症の症状や相談先を掲載したリーフレットなどを作成し周知を図るということですが、インターネットなどを通じて情報が氾濫し、ややもすれば知りすぎることで不安が増幅するという状況もある今、その情報発信は適確に必要としている人に届かなければ意味がありません。自治体や関係機関と連携し、妊娠した喜びと授かった命を失う悲しみを繰り返す夫婦に希望を与える取り組みを切に願います。不育症に対しては経費助成の検討も含め、一層積極的かつ多彩な支援が必要と考えますが、県の所見をお伺いいたします。
(2) タンデムマススクリーニングの導入について
次に、この世に生を受けた子どもの疾病リスクの軽減という観点から、タンデムマススクリーニングの導入について質問します。
子どもの病気には生まれつき病を抱えていても、見かけは元気で、それを放置していることで成長段階に重い障害がでてくるものがあります。それらの病気は早期に発見し治療介入することで、心身に起こる障害を未然に防ぐことができます。
我が国では『新生児マススクリーニング事業』として昭和52年に開始され、有効な治療法が確立されているフェニルケトン尿症など6種の先天的疾患に関して全国実施されています。一般的には生後数日の新生児から微量の血液を採取し、ろ紙に染み込ませて検査機関へ送るという手順がとられているわけですが、近年この領域で、新たに20種類以上の疾患を検査できるタンデムマス法が開発され、欧米を中心にこの検査法が広がりを見せています。国内においても平成16年度から厚生労働科学研究費補助金を受けて導入に向けたパイロットスタディが大学や検査機関で行われています。
この新しい検査法では、従来のものと比べて発見できる先天性疾患が飛躍的に拡大することから、新たに年間100人以上の子どもが救われると期待されます。本年3月には厚生労働省から各都道府県に対してタンデンマス法を用いた新生児マススクリーニング検査を早期に実施することが適当とし、導入を積極的に検討するよう通知されたと聞いています。検査法を導入するにあたっては、医療機関と検査機関の連携体制の構築や、保護者、医療関係者への周知徹底なども必要ですが、県として新検査法導入に向けての取り組みをぜひとも加速化して頂きたいと考えます。
少子化の進行で検体数が減少し一検体あたりのコストが増加傾向にあることや、多忙化する産科での検査の厳格な精度確保など、事業開始から34年を経過した今新たな課題も出てきています。新方式導入で発見される稀少疾患が増えることで、患者へのきめ細かいフォローアップ、中長期にわたる診療支援体制の充実もさらに求められる中、スケールメリットの観点から、関西広域連合での導入など、より広域的な取り組みに結びつけるといったことも視野に入れながら、スクリーニング体制を確立することが安心して子どもを産み育てることができる環境づくりにも大きく寄与するものと思われます。本県の導入に向けた検討状況についてご所見を伺います。
2 『新しい公共』の実現に向けたNPOへの支援について
質問の第2は『新しい公共』の実現に向けたNPOへの支援についてです。
東日本の被災地では県内の多くのボランティアやNPOが発災直後から各方面でうまく機能し、獅子奮迅の活躍をみせました。これはまさに本県の経験を活かしたいち早いカウンターパート方式の導入などが素地となったことはいうまでもありません。今回改めてその大きな力がフォーカスされたNPOですが、財政基盤のもろさというのが以前より課題視されていました。これは税制優遇を受けられる認定取得の厳しさや、寄附総額がGDP比わずか0.11%にすぎないなど我が国の寄付文化の未成熟さにも起因しており、そのサポート体制の構築が求められていました。
こうした課題解決に向け、国では本年6月に改正NPO法が全会一致で成立し来年4月から施行されることになりました。それにより認定権限が国税庁から都道府県と政令市に移り手続きの迅速化が図られるほか、「事業収入のうち、寄付が5分の1以上」という現行基準が緩和され、「3000円以上の寄付者が100人以上」や「条例による指定」が加えられます。これらはとりわけ震災の復旧・復興に取り組むNPOの後押しとなることが期待されているところですが、この法改正で今後いっそう重要になってくるのが、県の役割です。
すなわち、来年4月の改正NPO法施行のためには、都道府県や政令市が条例制定に引き続き、申請のための規則や様式の整備、受付窓口の設置、また必要に応じて説明会の実施なども行い、申請業務にスムーズに対応することが不可欠です。また、今年6月からスタートした新寄付税制では認定NPO法人に寄付をした際、国税40%、地方税10%の合わせて最大約50%までの税額控除が可能になりました。
しかし、この地方税の控除が受けられるかどうかは、各自治体が、寄付金に関する地方税条例いわゆる3号指定条例をしっかりと整備するかにかかっています。さらに今回の改正では、地方自治体が独自に地方税の控除対象を指定できる制度、4号指定条例も導入されましたが、これも、県等が条例を整備しないと機能しません。
年明けの条例制定がスムーズに行われることは勿論ですが、全国で36の都道府県が制定済みの3号指定、また他県で動きがみられる4号指定についても、本来ならば、ボランティア立県を標榜するわが県が旗振り役となる立場であり、全国的にその動きが注視されるわが県ですから、しっかりその期待に応えるべきだと考えます。
民の力が存分に発揮できる環境づくりを通じて、NPOと行政、企業などが渾然一体となって協働していくことが時代の要請といえる今、改正NPO法の施行を間近に控え、これまで以上に重要な役割を担う立場となった本県の今後の具体的な取り組みを伺います。
3 マンパワーを活かした防災機能の強化について
質問の第3はマンパワーを活かした防災機能の強化についてです。
先の台風12号、15号は本県にも大きな被害をもたらし、加古川市では一人の消防隊員が救助活動に向かう途中に命を落とされ、ご遺族、消防関係者はもとより、地域全体が大きな悲しみに包まれました。『逃げ遅れない』『安全に避難する』ということに重きをおいて被害の最小化に努めなければならないわけですが、この度の災害でもいくつかの課題がみえてきました。
12号台風時は夜が更けるにつれ、これまで耳にしたことのないようなすさまじい轟音が雨戸を閉めきった部屋にも響きました。加古川市では市や県の職員が車で巡回し、自宅2階への避難を呼びかけましたが、そうする間にもどんどん水位が増し何度も行く手を阻まれ引き返さざるを得ない場面が多々あったと聞いています。
しかも残念なことに、身の危険を感じながらの避難誘導は雨風の轟音にかき消されて住民になかなか届きませんでした。我が家にはNTTドコモの携帯電話を通じて避難指示のエリアメールが何度か届き、初めての経験に驚きました。しかし深夜に子どもを起こして連れていけるような外の状況ではありませんし、実際に避難した人はごくわずかでした。また姫路市ではこのエリアメールを巡って役所に問い合わせが殺到し、電話回線、ホームページがパンクするなど現場が混乱したといいます。
至極当然ではありますが今回も最終最後は人海戦術、マンパワーに頼ることになりました。要援護者を抱える高砂の親戚の家にも、早い段階に民生委員さんから居場所確認や避難指示の連絡が入り心強かったと聞きました。
しかし、高齢化する自治会長や民生委員に多くの部分を委ねるわけにはいきません。各人が迅速で適切な初動をとれるように構える必要があります。
兵庫県は防災先進県として、さまざまな取り組みを行っています。中でも自主防災組織の活動カバー率は、全国平均が74.4%である中、95.9%と全国2位の高水準です。その一方、メンバーの高齢化、世代間の偏り、実効的な訓練不足が課題になっており、実際の災害にどれだけ対応が可能なのか疑問を呈する声も聞こえてきます。
統計だけをみると、9割以上の県民が自主防災組織に籍を置いていると解釈できるわけですが、どれだけの人がそれを自覚しているでしょう。実際は大半が幽霊会員で各組織の会合や訓練に参加するメンバーは限られているのが現状です。自主防災組織が実際のところ機能不全に陥っている地域が相当数あると考えられるわけです。
県が主導する「ひょうご地域防災リーダー育成事業」などに関しても裾野がひろがるような具体的取組がなされているのか。1人の100歩より100人の1歩が大切といわれる防災意識の高揚のために行政はどうアプローチすべきと考えておられるのでしょうか。
根拠ある安全・安心に守られながら暮らすためのリスクマネージメントとクライシスマネージメントにおいて重要な役割を果たすと考える自主防災組織の機能を最大限に発揮するための取り組みについて所見を伺います。
4 高齢者のインターネットトラブル対応について
質問の第4は高齢者のインターネットトラブル対応についてです。
インターネット利用においては60歳以上のシニア層への普及率が年々高まっております。高齢者専用のSNSも誕生し、旅行や健康に関する情報を家族や仲間と共有して楽しむシニアが増えています。数字で見ても2010年末のインターネット利用率は70代が前年比6.3ポイント増の39.2%、80代以上は同1.8ポイント増の20.3%であり、国民全体では0.2ポイントの増加であることから、その急激な普及率は際立つところであります。
また、産学一体となったシニアのネット利用による経済活性化の調査及びフィールド実験の結果、インターネットやデジタル機器を積極的に使いこなす、いわゆるデジタルシニアの6割がネットショッピング、ネットオークションを日常的に利用していることがわかりました。同調査によればインターネットを利用していない層でも、旅行の手配や食品の宅配、昔のテレビや映像の配信などに大きな関心をもっており、企業サイドとしては“購入する層”としてシニアに熱視線を送っている現状です。
しかし、このように時間と資金に余裕がある高齢者がインターネットの新住人となることで、その知識不足から詐欺などのトラブルに巻き込まれることも予測されます。
加えて、最近小中学生がネットゲーム、いわゆる非出会い系と呼ばれるコミュニティサイトへの不正アクセスで摘発されるというショッキングな事件も報道されましたが、ゲームとは縁遠いと思われていたシニア層も例外ではありません。
今や街のゲームセンターの平日昼間はシニアの憩いの場のひとつであり、介護施設にもアミューズメント企業が参入しゲーム機を設置するなど、シニア層にもゲームというものが身近な存在になってきています。一人暮らしの高齢者が増える中、インターネット上での巧みな誘導で詐欺被害に遭う人が増えることは容易に想像できます。
消費者庁が今年3月にまとめた「インターネット取引に係る消費者の安全・安心に向けた取組について」の中でも、特に高齢者への対応のあり方として、「見守る立場の方々も含め、トラブルに巻き込まれないような適切な周知啓発が必要で、インターネット取引に係る悪質商法も含めた適切な注意喚起を行う」ことの重要性が述べられており、県としても高齢消費者をインターネットトラブルから守る取り組みを積極的に開始する時期にきていると思われます。
インターネットの経済活動上これからますます存在感を強めてくると予測されるデジタルシニアの被害防止に向けた啓発活動等の本県における取り組みを伺います。
5 女性の就業支援対策について
最後の質問は女性の就業支援対策についてであります。
『稼ぐ夫に育てる妻、二人の子ども』という過去ある時期の標準家庭モデルはすでに解体しつつあります。良い、悪いということではなく、このモデルが成り立たなくなっているのです。生産年齢人口の減り続けるわが国にとって、女性の活用、活躍なくしては、社会の活性化が阻害され、むしろ男性をも苦しめることになります。
草食化進行中といわれる男性に比べ、最近の日本女性は社会でどんどん発言力を増し、十分すぎるほどに活躍していると思われているかもしれませんが、総務省の労働力調査等をみても、管理職に占める女性の割合は10.6%、都道府県の公務員に限れば6%にとどまっています。給与水準も男性一般労働者を100とすると女性は69.3と3割以上も少ないのが現状です。
いち早くグローバル化の波に洗われた欧米では、産業が空洞化していった80年代の構造転換の危機を、女性という新しい人材の活用で乗り切ったといわれています。国に残ったサービス産業を中心としたいわゆるソフト産業は、女性の技能がいかんなく発揮できる分野であり産業の再生には女性の存在が不可欠であるという共通認識が浸透していきました。デフレ、円高に苦しみ、本社機能までも海外に移そうかという今の日本、福祉・サービス産業に傾斜を強める今の日本、まさに今が日本にとっての意識転換の時期といえるのではないでしょうか。
また、女性が稼ぎ納税することでこれまで団塊の世代が担ってきた内需の減退のカバーにもつながります。女性は往々にして財布の紐を握っている上に購買意欲が旺盛ですし、自分の稼ぎも出来てそれを堂々と消費すれば日本の内需は格段に向上します。外国人労働者を積極的に受け入れる議論もなされていますが、その前に企業をより活性化させ、競争力を高める戦略となり得る人材が目前にあることに気づくべきです。さらに、元気に働く高齢の女性が増えれば医療福祉費抑制にもつながります。何といっても30年後には人口の2割が65歳以上の女性で占められる社会が到来するのです。
平成22年度の調査で兵庫県の女性就業率は43.7%で全国44位となっており、数十年来一貫して全国平均より低い状態が続いています。本県経済の底上げを目指すとともに、人口減少社会において活力ある社会を実現していくためには、企業における女性の雇用機会の確保はもとより、就業継続とその能力を充分に発揮して管理職へも積極登用が果たされるような職場づくりが極めて重要であると考えます。
本県でも、離職した女性の再就業や起業を支援する施策や、女性の能力発揮に向けた取り組みを進められていますが、これまでの施策のスタンスと結果検証を踏まえ、県・国・企業等が一体となった取り組みを一層加速させる必要があると考えますが当局の所見をお伺いします。
以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。