議会の動き

◆19年2月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方  討論

質  疑  前田 ともき  議員

代表質問  石井 健一郎  議員

一般質問  竹内 英明   議員
      石井 秀武   議員
      小池 ひろのり 議員

質疑

(前田 ともき 議員)[発言方式:一括]

1 人と防災未来センターのリニューアルについて
2 考古博物館加西分館を世界一の古代鏡博物館に
3 兵庫津ミュージアム(仮称)の整備について

質問全文

第343回 定例県議会 緊急対策補正予算 質疑要旨

質問日:平成31年2月15日
質問者:前田 ともき 議員
質問方式:一括方式

1 人と防災未来センターのリニューアルについて

今回の補正予算は災害体験VRや避難行動シミュレーターなど総額4.8億円。昨年導入した津波避難体験装置と今回のリニューアルで東館が大きく変わるのを期待したい。

昨年の予算委員会ではダークツーリズムと体験型施設の導入について提言した。ダークツーリズムは人類の悲劇や悲しみから学ぶ旅で注目を浴びている。私も約50カ国を旅して、911のグラウンドゼロ、アウシュビッツ収容所、カンボジアのトゥール・スレン虐殺博物館などを訪れた経験から、当センターは世界から兵庫に観光客を呼び込むきっかけになると考えている。ともすれば、教育的意義や研究成果に意識が集中しがちだからこそ、ダークツーリズムの視点も入れて、敷居を下げ、きっかけを作り、より多くの人に来場していただきたい。

そのためには最新の体験型施設の導入だ。資料や映像は今やインターネットでほとんど事足りる。足を運ぶ必然性を作るにはココにしかないもの、ココでしか体験できないものの存在だ。

リニューアルのコンセプト作りや施設の中身が来場者満足、センターの成功を左右する大きな要因だ。しかし、アドバイザリー契約のプロポーザルでなぜ2社しか検討していないのか。委託費30万円は業務内容からして過小ではなかったか、疑問が残る。より良い体験を提供出来るようにどのような工夫を行っていくのか伺いたい。

トリップアドバイザーで外国人の口コミを調べてみると、KOBEの地震から学びにきた。というコメントを頻繁に見た。リニューアル案に足りないのは地震体験だ。阪神・淡路大震災の展示がメインなのに、地震が体験できないとはいかがなものか。

地震を体験できる起震車は3,000万近くするので購入はもったいない。既に兵庫県と神戸市は保有しているので、イベント派遣以外はここに常設して体験できるようにすべきでないか。

今回の体験型施設の導入を契機として、ダークツーリズムの視点で海外メディアやロンリープラネットなど旅行雑誌への掲載など積極的なマーケティング活動を行うべきだ。

これらの指摘を踏まえた人と防災未来センターの施設改革、見せ方、伝え方をどのように改善していくのか伺う。

2 考古博物館加西分館を世界一の古代鏡博物館に

なぜ、古代鏡展示館を、なぜこの地に、なぜ更に増築するのか。いろいろ指摘したい点はある。が、今回は所与の条件として、飛躍させる提言をしたい。

それは、古代鏡展示でダントツ世界一を目指せ。中国マーケットに全力フォーカスせよ。

加西分館は自動車アクセス中心の立地、古代鏡という小さな市場を考慮すると、日本人を対象してはジリ貧で終わる。古代鏡は中国に収蔵がほとんどなく、流通量も限定的と聞く。したがって、将来もココでしか見れない施設であり続ける可能性が高い。世界一で存在感を発揮できる可能性がある。

そのための検討課題として、

1.増築規模はむしろ過小ではないのか

2.他の博物館の古代鏡をここに集約する仕掛け

3.中国向け広報・マーケティングの強化

1点目について、寄贈された316の古代鏡のうち、常設展示は100程度。この展示規模では、はるばるやってきた来場者はガッカリするだろう。新規で来る動機作り、もう一度来たいと思うリピーター作りのためにも、展示価値のある鏡はすべて常設展示できるよう増築規模の拡大や将来の拡張性を考慮した設計を検討すべきだ。

2点目に付いて、類似美術館として、住友家の泉屋博古館や和泉市久保惣記念美術館があり、各200程度の所蔵品がある。寄付、企業版ふるさと納税、収蔵品交換などを駆使して、これら美術館から古代鏡をこの地に集約する提案をすべきでないか。ダントツ世界一を実現して圧倒的な展示を実現しなければ、ジリ貧で終わるし、増築する意味もない。

3点目について、古代鏡は日本にゆかりがあるわけでもなく興味がある日本人は少ないだろう。何度もリピートが期待できるものでもない。中国人向け集客に経営資源を集中させるべき。幸いなことに、中国の市場規模は広大かつ今後の成長が期待できる。

中国は2020年に世帯年収35,000ドル以上の富裕層が5600万世帯に増加する。日本は4600万世帯なので数年で逆転される。また、2030年にはGDPが世界一になると予想されるなど、中国人観光客の増加やコト消費の拡大は不変のトレンド。展示紹介の中国語対応や展示の拡充後には積極的な中国向け広報が必要と考える。

これら3点の指摘を踏まえ、世界一の古代鏡博物館を目指し、この地に多くの訪問者を呼び込む仕組みづくり、そして今回の増築の意義について伺う。

3 兵庫津ミュージアム(仮称)の整備について

初代県庁舎の復元はおいといて、併設する県政資料館を中心とした兵庫津ミュージアム。今回の補正予算案では24.5億円で初代県庁舎の7倍。元々は初代県庁舎の復元で始まったこのプロジェクトだが主従逆転の感すらある。

これほど高額な施設を建てて、本当に見せるべき、見たいと思っていただけるコンテンツが果たして提供出来るのか極めて疑問である。

47都道府県で同種の県政資料館はどの程度あるのか、どの程度集客しているのか、兵庫県公館の県政資料館にどの程度の入室者があるのか、兵庫津ミュージアム検討で行った市場調査の状況を示していただきたい。

資料館の基本構想支援のコンペ仕様書を拝見した。事務局案として、初代県庁舎は建物面積500平方メートルに対して、資料館は2000〜2500メートルを提示している。なぜ、初代県庁舎の4倍超の面積を想定されたのか。公館などにある県政資料展示は全てこちらに集約する認識でいいのか。

また、総事業費24.5億円のうち、展示物6.6億、建物17億と想定されている。多くの展示物はゼロから制作することになるので製作単価は高額となることが予想される。厚労省の私のしごと館は1体3百万円の人形や一度も利用されていない燻蒸庫など壮大な税金の無駄遣いとして批判された。同じ道を辿らないよう、展示物のあり方は今後よく吟味していただきたい。

また、入場料金はどう設定するのか、今後の維持・管理コストはどの程度を想定されているのか示していただきたい。

訴求力の弱い県政資料館を無理に設置するのではなく、集客力の高い民間施設を誘致して初代県庁舎への集客につなげる検討はされなかったのか。神戸市からは土地の無償貸与を受けることになっているが、更なる支援はないのか。

県政資料館だけでなく、神戸市の集客力あるコンテンツと一緒にできないか。

指摘すべき点、整理すべき課題は多々あるのでブレスト的に疑問点を提示した。

これらの質問について答弁をお願いする。

前田 ともき

(選挙区:神戸市東灘区)

代表質問

(石井 健一郎 議員)[発言方式:分割]

1 知事の果たす役割について
2 震災25年を契機とした防災対策のあり方について
3 観光対策について
4 日本酒の消費拡大について
5 外国人労働者のリスクを踏まえた農業の担い手育成について
6 県立病院の統合再編について
7 教育委員会制度に対する評価について
8 県立美術館の賑わいづくりについて

質問全文

第343回 定例県議会 代表質問要旨

質 問 日:平成31年2月20日(水)
質 問 者:石井 健一郎 議員
質問方式:分割方式

1 知事の果たす役割について

都道府県知事は、首長制であり大統領制に近い権限を持っています。特徴的なものとしては、議会の解散権や条例案、予算案の提案、知事部局職員の人事権、地方税の賦課などの権限を有していますが、地域創生を強力に進めるには、このような権限を持つ知事のリーダーシップの下で、様々な分野における取組を進めていく必要があります。

しかしながら、地方独自の施策を展開するには、地方分権と財源の拡充が必要でありますが、例えば、法定外税では総務大臣への事前協議が必要となるなど、基本的には制限された中での課税自主権しか持っていません。そのため、地方自治体は全国的な経済、財政状況に影響を与えるような施策を展開することは残念ながらできず、東京都は例外として同じような土俵の中で取組を進めているような状況であります。

国の場合には、地方と異なり根本的な課税徴収権や日本銀行を通じた通貨の裁量権を少なからず持っており、税金使途の付け替えなどの財政政策が可能でありますが、地方自治体は全国横並びの中でその枠から出ることもできません。その中で自立的な財政運営を求められることとなります。また、その運営にあたっては基本的には地域特性が格別に考慮されることなく、全国一律の経営環境が与えられているものとされるので、その運営の責任は首長である知事が負わなければなりません。

兵庫県では申し上げるまでもなく、阪神・淡路大震災で街が大きく毀損し、その復旧・復興に取り組んできました。かねてから、知事は地方分権改革を主張し、関西広域連合でも主導的な役割を果たしてきたことは承知しているところであります。しかし、知事が当初から連合長を務める関西広域連合の動きはまだまだ道半ばであり、今後の展開に不安が残ります。震災からの復旧・復興は、例えば創造的復興と行革のバランスを変えていれば、これまで11年間の県民に痛みを伴う行革を短くできた可能性もあり、知事の意思次第では将来への責任リスクは高まりもすれば低くもなるわけであります。また、県政運営について、中長期を見据えた施策の展開を図るには、今後の継承をどうしていくのかという事も念頭に置かなければなりません。

そこで、知事は大変厳しい判断をしながらこれまで兵庫県政を進めてきたわけでありますが、2019年度は知事任期の折り返し地点であり、また、震災から25年を迎える節目の年でもあります。これまでの5期に渡る知事の政治家としての成果や今後の県政のあり方、また、県政の継続性について、どのように県民に対し説明をし、理解を求めていくのか、お伺いします。

2 震災25年を契機とした防災対策のあり方について

来年の1月17日には1995年の阪神・淡路大震災から25年となり、一つの大きな節目を迎えます。阪神・淡路大震災後も、国内では大規模な自然災害が頻繁に発生しており、東日本大震災をはじめ、新潟県中越地震や熊本地震、昨年は大阪府北部地震や北海道胆振東部地震が発生しました。また、地震に加えて、豪雨や台風による災害も発生しており、昨年も平成30年7月豪雨や台風第21号により、県内でも被害が相次いだことは記憶に新しいところです。

このような大規模な災害では、行政による支援だけでなく、ボランティアによる支援がかなり浸透してきたのではないかと思いますが、ボランティア元年と言われた阪神・淡路大震災から現在に至るまでに、被災地の社会福祉協議会が災害ボランティアセンターを運営するスタイルが定着しています。しかし、ボランティアはどうしても土日に集中することや、広域災害になると組織的な対応が難しいこと、また、社協の災害ボランティアセンターを通じた災害ボランティアでは、あらかじめボランティア活動の範囲が決められていたり、受け入れ準備が出来ていなければ被災地に入りにくいといった硬直化した対応が見られることがあるなど、被災地のニーズに対応することが忘れられているという面もあるのではないかと思っています。

例えば、昨年の灘区篠原台の土砂災害では、危険だということで社協のボランティアセンターは当初機能しなかったこということも起こりました。こういったことからも、社協ボランティアセンター方式の弱点も明らかになっています。制度の整備は進んでいますが、阪神・淡路大震災時における被災地のそばにいて変化するニーズに臨機応変に対応することや、一人一人の市民の力で助け合うといったボランティア本来の理念が少し薄れてきているのではないかという気がします。

また、防災対策としてハード整備も順次進めていく必要がありますが、最近の自然災害で避難指示や避難勧告のあり方、自治体の発表のタイミング等のソフト面での防災対策が問題となっています。これまでの結果を精査しなければなりませんが、災害情報の充実に伴い、皆情報を知っているから大丈夫だという認識の下、自分が助けなくてはといった市民の自助や共助の精神が薄れているのが原因の一つではないかと感じており、住民意識の醸成について住民だけではなく、行政の防災対策にも問題があったと反省する必要があるのではないでしょうか。

また、自助・共助の精神が薄くなっていることの一つの原因はやはり阪神・淡路大震災から25年を迎え震災の記憶が薄れてきた、加えて、住民が大きく入れ替わり震災自体を経験していない方が過半数になっているということもあります。県庁職員についても、職員として震災を経験してない者が半数近くになっています。災害訓練も大切でありますが、実際の経験とは差があり、それだけでは心許ありません。経験の少ない職員がどこまで対応できるかということを考えると、防災部局では専門の担当者を育成し、自然災害に備えるということも、真剣に考える必要があるのではないかと考えています。

そこで、震災から25年を迎えるにあたり、経験者が少なくなっていく中で、震災を風化させず、その経験と教訓を生かした、今後の防災対策のあり方についてどのように考えているのか、お伺いします。

3 観光対策について

2017年の訪日外国人旅行者数は、対前年比19.3%増の2,869万人となりました。その訪問地についてはゴールデンルートから少しずつ地方へ広がってきているものの、2017年の兵庫県に来た外国人観光客数は158万人であり、特に大阪府は1,110万人、京都府は743万人と比較すると、兵庫県はあいかわらず低調であります。今後、インバウンドによる誘客を促進するためには、益々増加が見込まれるアジアに対してはスマートフォンでの情報提供が必須でしょうし、欧米に対しては体験型コンテンツに人気があると聞きます。アジアのインバウンド客もリピーターとして訪日頻度が高まっていけば、欧米同様体験型コンテンツに移行することも考えられます。昨年の代表質問でも指摘しましたが、今年開催されるラグビーワールドカップでは、欧米やオセアニアの高額所得者が日本に長期滞在する中、神戸市でも試合が行われるというチャンスがあります。その後の東京オリンピック・パラリンピック、ワールドマスターズゲームズとスポーツゴールデンイヤーズが予定されており、更には大阪・関西万博も決まりました。

その一方で、国内の誘客も忘れてはなりません。観光庁の資料によると、平成29年の観光の動向では、日本人国内旅行消費額は、宿泊・日帰り旅行合わせて21.1兆円となっているのに対して、訪日外国人旅行による消費額は4.4兆円と約5倍の差となっています。また、同じく平成29年の日本国内のホテル・旅館等における延べ宿泊者数は日本人の延べ宿泊者数が4億2,991万人泊に対して、外国人延べ宿泊者数は7,969万人泊となっており、こちらも5倍以上の差となっているなど、まだまだ国内の需要が高い状況にあります。

国をあげてインバウンド対策を進める中、兵庫県においても乗り遅れないように対策を進めることは必要でありますが、あわせて足下の国内旅行者についてもしっかりと対策を図ることが重要と考えます。

そこで、先ほど申し上げた外国人旅行者への対応や県内への日本人旅行者を増やすためにも、消費活動や購買を促す地域の観光資産の掘り起こしやブラッシュアップをはじめ、どこの国や地域をターゲットにしているのかなど、それぞれに応じた的確なマーケティングを考えた対策が必要であると考えますが、当局のご所見をお伺いします。

4 日本酒の消費拡大について

日欧EPAが2月1日に発効しました。欧州産のワインやチーズ、豚肉などの値下がりが見込まれる一方、ワインや日本酒の関税は即時撤廃されることにより、対象によっては、和牛や日本酒など輸出拡大の契機となります。日本酒の海外輸出については、私が当選当初に本格的に取り組み始められたように思いますが、当時は温度管理で空輸していたとか、欧米のハウスワインより高価であるというような問題があったと記憶しています。現在は温度管理のできる船積みコンテナやオールジャパンの様々な取組はもとより、海外での和食ブームやインバウンドによる日本酒体験等により、直近5年間の輸出金額は約2倍となっていますが、今後の伸びもまだまだ期待できます。

フランスのワインについては、既に生産量の半分近くを輸出し、約1兆円の外貨を獲得していることと合わせて地方への誘客等をはじめ観光の目玉となっています。また、フランスのみならず後発国であるアメリカのカリフォルニア州ナパヴァレーは高品質のワインを生産し、一大観光資源となっています。日本でも、特に日本酒最大の産地である灘五郷を抱える兵庫県としては、しっかりと兵庫県の日本酒を世界に発信し、ブランド化をはかり地域活性化と経済効果につなげる役割を果たす責任があるのではないでしょうか。2007年には世界最大規模のワインコンペティションIWCに「SAKE部門」が設立されました。また、2016年には兵庫県で「SAKE部門」審査会が開催されたところであり、ワインと同じ舞台で日本酒の発信が可能となりました。2014年には世界最大のワイン教育組織WSETでSAKEコースが設立され、ワインビジネス業界の人材が日本酒を学ぶ環境も整ってきました。海外での日本酒に対する理解を深めるため、更に注力する必要があります。ワインを和食と合わせるのと同様、寿司もそうでありましたが、各国の文化と合わせる柔軟性も必要です。白ワインのような日本酒が好きだが白ワインより高いであるとか、私たちが好きな日本酒は重く、アルコール度数が高いので食後酒と思っていたとの様なお話しを聞いたこともあります。

一方で、輸出が増加傾向にあるとは言え、平成29年の日本酒の国内出荷量53万3,000キロリットルに対して、輸出量は約2万3,500キロリットルと、国内全生産量の4%程度にとどまっており、日本酒は、ほぼ国内で消費されています。このため、大半を占める国内での消費を一層促進させることが、やはり効果的な消費拡大に直結することとなります。

そこで、それぞれの文化にあった飲み方・食事との合わせ方の提案や産地ブランド化等による輸出促進の取組と、併せて、灘五郷をはじめとする兵庫の酒の魅力発信、新たな需要開拓等の国内消費拡大の取組について、当局のご所見をお伺いします。

5 外国人労働者のリスクを踏まえた農業の担い手育成について

日本の農業は、稲作を中心とした農業経営が多く占めていますが、近年は食生活の多様化が進み、米の消費量が減少しています。また、高齢化と担い手不足で農家の数が減少し、また耕作放棄地は増加する傾向にあることや、昨年末には日本を含む11カ国が参加するTPPが発効したことで、競争力や海外への展開が求められることになるなど、多くの課題を抱えています。

特に持続的な農業を進めるためには、それを支える担い手が重要になってきますが、根本的な解決策が見いだせていない状況ではないかと思います。国では、深刻な人手不足に対応するため、即戦力を期限付きで受け入れるため、出入国管理法の改正により、今年4月から「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組み」として、新たな在留資格「特定技能」が創設されます。特定技能は、人材の確保が困難と判断された「特定産業分野」に限った措置でありますが、農業も対象分野に含まれます。

技能実習を修了した者の継続的な雇用や短期雇用が認められるなど、農家等のニーズに合致する点も多いため、特定技能に基づく雇用を希望する農家は少なくないと予想される所ですが、しかしながら、外国人の受入れが労働力確保策となるためには、農業が就業先として選ばれ、かつ継続的に働いてもらうことが必要となります。他産業との競争や地域間での競争が生じるなかで、外国人に「選ばれる」産業、「選ばれる」経営体となる工夫が必要です。現状では国内外の賃金格差を根拠とする外国人労働力の流入が見込まれますが、今後も続く保証はありません。

このような外国人労働者の課題からも、安易に外国人労働者に頼らない、若者等を含めた担い手の確保対策が重要ではないかと考えます。幅広い人材が参入できる仕組みや、定着につなげるために儲かる農業を可能とする経営面の支援等を行うことにより、新規就農者を確保し続けることができれば、後継者対策にもつながります。

そこで、外国人の労働力に依存することのリスクを認識しながら日本人の担い手確保対策の充実を進め、新規就農者の定着に向けた経営面での支援や省力化技術の導入等の環境整備を含めた中長期的な戦略に基づき、担い手育成に取り組むべきであると考えますが、当局のご所見をお伺いします。

6 県立病院の統合再編について

県では、住民が住み慣れた地域で生活しながら、状態に応じた適切で必要な医療を受けられる地域医療の提供体制を整備するために策定された地域医療構想に基づき、病院の再編を進めています。病院によってその機能は様々であり、病院の統合や機能転換は多くのハードルがある中、地域との調整等を図り、着実に統合に向けて進められている当局の努力に敬意を表したいと思います。

その中でも県立病院は、広域自治体立病院として、高度専門・特殊医療を中心とした政策医療の提供とともに、地域医療の中核としての役割も担っていることが多いため、県立病院の統合再編は、地域医療に与える影響が非常に大きいものと考えています。

統合再編には、これまで地域の中で親しまれた病院がなくなるといった面もあり、医療サービスの低下を来す恐れもあることから、統合再編によってできる新病院の診療機能は、将来を見据えた地域の医療ニーズにも十分対応できるよう、充実させる必要があると考えます。

また、一方で、開院準備のため、患者制限を行うことなどもあり、一時的には地域の医療サービスに影響を与えることも考えられることから、これまでの統合再編での経験も生かしながら、新病院の開院後できるだけ速やかに充実した診療機能が発揮できるよう十分に準備しておく必要があると考えます。

平成27年7月に開院した県立尼崎病院と県立塚口病院を統合再編した県立尼崎総合医療センターのケースでは、開院当初は、外来窓口の混雑、駐車場の不足等があったとお聞きしているものの、比較的早い段階で、地域の医療機関との連携体制を構築の上、高い診療機能を発揮し、地域になくてはならない医療機関と認められたものと認識しています。

しかし、県立病院が関係する統合再編は、この尼崎の事例に留まらず、今後、2019年7月の開院を目指して県立柏原病院と柏原赤十字病院が、また2022年度上期の開院を目指して県立姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院、更には県立西宮病院と西宮市立中央病院も統合再編に向けて進められようとしており、今後も続くこととなります。

そこで、県立病院の統合再編を、どのようなお考えを持って行おうとしているのか、また、新病院をスムーズに立ち上げ、早期に求められている役割を果たしていくために、県立病院はどのような取組みを行っていくのか、お伺いします。

7 教育委員会制度に対する評価について

県において、教育行政は人員や予算で大きな比重を占めています。例えば、平成30年度の当初予算における歳出予算の内訳をみると、教育費は約3,720億円と歳出予算の約2割と最も大きな予算額であります。また、子どもを持つ親であれば、少なくとも小・中学校において教育と関係することとなりますが、教育委員会はどういったことをしているのかについてはあまりわかっておらず、必ずしも近い存在となっていないと感じるところです。

教育委員会制度の見直しについては、教育委員会制度を廃止して首長に教育行政の決定権を一元化する等をはじめ、様々な議論がある中で、教育行政の政治的中立性、継続性・安定性の確保の観点から、また、教育行政における責任の明確化や迅速な危機管理体制の構築、首長との連携強化等を図るため、教育委員会を地方自治法上の決定権を有する執行機関として維持し、教育長を首長が直接任命して教育行政の責任者とする、改正地方教育行政の組織及び運営に関する法律が2015年4月に施行されました。この改正により、常勤である教育長が従来の教育委員長の役割も兼ねて教育委員会の代表となることにより、責任の明確化を図ることとする一方で、教育長は首長が議会の同意を得て任命する特別職とされ、首長の任期内に一度は指名出来るよう任期は3年とされました。また、首長と教育委員会が教育行政の大綱や施策等について協議・調整を行う場として、総合教育会議が設置されることとなっています。

この改正では、教育長の権限と責任がより明確化されたと言えますが、議論となった政治的中立性、継続性・安定性については、首長と教育長に権限が集中することにより、その結果、政治主導の教育政策となるなど、低下したのではないかという議論がある一方で、選挙を通じた民意の反映や責任を明確化するため、教育委員会制度はやはり廃止すべきであったとの議論もあります。

そこで、県では平成27年9月の定例県議会において新制度の教育長の任命に同意してから約3年を過ぎましたが、今申し上げた政治主導の教育政策となってはいないのか、また政治的中立性、継続性・安定性の確保が図られているのか等も踏まえ、新しい教育長制度の下で行われた教育施策についてどのような評価をしているのか、お伺いします。

8 県立美術館の賑わいづくりについて

平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災からの「文化の復興」のシンボルとして、平成14年4月にHAT神戸にオープンした県立美術館も、今年で17年となります。そもそも芸術文化施設は多額の費用がかかり、県民の理解も得にくいものですが、兵庫県では阪神・淡路大震災後の創造的復興の中で整備されてきました。

例えば、兵庫県立芸術文化センターは指揮者の佐渡裕氏を芸術監督に迎え、自主企画事業を中心に運営され、施設稼働率も9割を超え、年間主催公演は300本以上、入場者数も約50万人と全国でも有数の劇場として知られるようになりました。

社会教育施設である美術館は美術品を収集、調査・研究、保存し、展示・公開などの機能があり、地域社会の芸術文化的な資源を評価し、後世に引き継ぐという本来機能も充実させていく必要がありますが、その一方で、やはり多くの方に利用して頂くこと、それにより地域の賑わい作りの拠点となることも求められるのではないかと思います。しかしながら、県立美術館はその周辺に人と防災未来センターはあるものの、訪れた方がその周辺を回遊して楽しむことが出来るような集客力のある施設は特になく、西宮市の中核ターミナルである阪急西宮北口駅、また、阪急西宮ガーデンに隣接する芸術文化センター、また、神戸市の中心観光地に立地する神戸市立博物館と比較して落ち着いた環境にあるとはいうものの、それらとの施設と比較すると周辺に賑わい施設があるかどうかという意味においては立地が良いとは言えず、県立美術館として最大限のポテンシャルはまだ発揮しきっていないように思います。社会教育施設である美術館は教育委員会が所管していますが、最近では地域おこしや観光資源として利用することを目的としてその運営を知事部局へ移管するという動きもありますが、賑わい作りのための今後の展開に期待したいと思います。

全国で一番の集客を誇る金沢21世紀美術館では、有料展覧会ゾーン以外に夜10時まで営業の無料ゾーンや館外展示物の設置をはじめ、コンテンツの充実等に力を入れています。その初代館長で、現在は県立美術館の蓑豊館長がミュージアムロードやオブジェの設置、また、HAT神戸レガッタの開催等を始め素晴らしいリーダーシップの下、様々な仕掛けを作られており敬意を表します。

そこで、今後も、県立美術館のさらなる魅力向上とともに、その集客効果を高めて地域の賑わいづくりにさらに貢献していくことが必要ではないかと考えますが、ご所見をお伺いします。

石井 健一郎

(選挙区:神戸市灘区)

一般質問

(竹内 英明 議員)[発言方式:分割]

1 公立高校入試について
(1)調査書の学習評定の基準明確化と共通ルールづくりについて
(2)推薦入学・特色選抜の合否判定の透明性確保について
2 学校給食における「まるごと兵庫県給食」の実施について
3 はりま姫路総合医療センター(仮称)の救急機能の充実について
4 河川整備について
(1)二級河川 大井川整備事業について
(2)夢前川の被災箇所の復旧について
5 近隣自治会等が反対する山林における太陽光発電への規制について
6 国民健康保険被保険者証の氏名へのフリガナ記載の必要性について

質問全文

第343回 定例県議会 一般質問要旨

質問日:平成31年2月21日(木)
質問者:竹内 英明 議員
質問方式:分割方式

1 公立高校入試について

(1)調査書の学習評定の基準明確化と共通ルールづくりについて

公立高校普通科の入学者選抜の場合、中学校の通常の学習評価である調査書の学習評定の点のことを、その昔は内申点といったが、これが250点満点、学力検査の点数が250点満点、合計500点満点で合否が判定される。当日の試験である学力検査はさておき、自分の調査書の評定が何点なのか。

ある受験指導のHPサイトでは、兵庫県では中学3年生の2学期の評価がそのまま調査書の評定となるといった誤った記載や1学期、2学期の成績だけが評定となるとの記載も見られる。

県教委が公表している平成31年度兵庫県公立高等学校入学者選抜要綱では、得点換算の元となる「第3学年の評定は、平成31年1月以降において、第1、第2学期の成績を十分参考にして行う。この場合、生徒全員について、教科ごとに、5段階とする」と記載されている。確かにこれだけを見ると、1、2学期の成績のみが評定に反映されると誤解してもおかしくない。実際に現場の教員に確認すると第3学期の初めに実力考査を行うので、その結果と1、2学期の成績を含めて、改めて評定をつけるとの答えだった。私も誤解していたが、このような誤解が堂々と世間にまかり通っていることはよくない。調査書の評定の仕組みをもう少しわかりやすくすべきではないか、当局の所見を伺う。

また、この調査書の評定については、合否決定後の情報公開について手続きを定めているものの、事前の公表については明文化されたルールは存在しない。

やはり、志望校を決める三者面談等の場で保護者が担任の教諭から評定を聞き出すことがあるようで、市町や学校、教員によってその開示基準が異なるという。ある中学校関係者が言うには、個別の評定の公表は控えているものの、問われた場合には9教科の合計点(45点満点)を教えているという話だった。個別の評定を事前開示すると保護者から「なぜうちの子の国語の評価が低いのか」などのモンスターペアレンツのような事例が出て学校が混乱することを避けるためでもあるそうだ。よく理解できる。杓子定規に全て教えないのも冷たいし、特定の生徒だけが自分の評定を全て知っているという状態は受験に際して公平ではない。県教委として最低限のルールを定めておく必要があると考えるが、当局の所見を伺う。

(2)推薦入学・特色選抜の合否判定の透明性確保について

毎年2月に実施される推薦入学・特色選抜入試は、一般入試と違い、入試を実施する高校ごとに一定のルールを決めているが、中学校側からすると、想定外の結果が出ることがあるという。特に運動部活動が盛んな学校で面接や小論文等の評価が難しい試験項目がある場合、中学時代での運動部成績が内申点の差をはるかに凌駕したものになる事例などもあると聞く。そうであるならば、事前にそうした合否基準を推薦する中学校や生徒側に開示してほしいとの声をきいた。

現在の規定では高校側は、独自の推薦入学の結果を県教委に報告することになっているが、80人受験して60人が合格した、といったごく簡単な報告が必要なだけで、ある関係者は「推薦入学の合否判定はブラックボックス」と言っていた。

推薦入学・特色選抜を実施する場合は、合否判定の点数内訳を事前に公表すると共に、その個別の合否判定内容を県教育委員会に報告するか、または当該学校関係者以外の第三者が時に監査する制度のようなものを導入すべきではないか。学校が運動部等での活躍を期待して恣意的な合否判定をしているとの中学校側からの疑念が微塵にもあってはならない。そうした生徒を取りたいならば、当初から運動部の大会成績等を大きな加点要素とするならその得点枠を示し、その内容を公表すれば問題はないと考える。こうした公表された一定のルール、公平なルールを用いるべきだと考えるが、当局の所見を伺う。

2 学校給食における「まるごと兵庫県給食」の実施について

昨年2月の本会議一般質問において、県政150周年給食として県内小学校を対象に神戸ビーフ又は但馬牛を使った県下一斉給食を提案した。当時の高井教育長は、「大胆な提案だ。神戸ビーフだと100g3,500円として、1人50グラムでも29万食で5億円ほどかかる」と難色を示されたが、私は諦めていない。食を通じた県民意識の醸成、特に子どもの頃の感受性が豊かな時期にこうした取組をしておくことが、将来的なふるさと意識につながると確信している。

実は県下一斉給食というものを実施している都道府県がある。たとえば昨年山形県で、まったく同じ日に山形県の小中学校すべてで、山形県が開発したお米、新しいブランドである雪若丸を給食で一斉に使った。群馬県ではぐんま・すき焼きの日オールぐんますき焼き給食、愛知県では愛知を食べる学校給食の日、鹿児島県の鹿児島をまるごと味わう学校給食の日といった事例もある。

県費を多く使わなくても、市町に協力してもらい、県産食材のものでなんとか給食ができないか。長崎県では、年2回、県内まるごと長崎県給食ということで、各市町が献立を考え、その食材は必ず長崎県内で採れたものを使って実施しており、テレビなどでも取り上げられた。子どもの頃からそれが当たり前の文化になっているという。

他府県の事例を見るとその実現はそれほど難しくないと考えられる。神戸ビーフや但馬牛にこだわらないので、兵庫県でも県下一斉に県産食材を使用した給食の実施を提案するが、当局の所見を伺う。

3 はりま姫路総合医療センター(仮称)の救急機能の充実について

平成30年4月の保健医療計画の改定において、中・西播磨圏域が統合され、播磨姫路圏域となった。今年度は、保健医療計画の圏域版の策定作業がすすめられており、先日パブリックコメントの募集が行われ、当圏域の重点取組として救急医療の推進方策などが検討されている。

現在、当圏域の3次救急については、県立姫路循環器病センター及び製鉄記念広畑病院がその役割を担っており、整備がすすめられているはりま姫路総合医療センター(仮称)開院後は、新病院がその機能を引き継ぐこととなっている。また、新病院の整備に併せ、圏域外に移動している高度急性期及び急性期患者への対応強化を図るため、診療機能の拡充も検討されていると聞く。2022年度の開院に向け着実に整備事業が進むことを期待する。

しかし、救急医療を充実させるには、搬送された患者への診療機能を充実させることも重要であるが、早期の治療を行うために、ドクターヘリはもとより、ドクターカーなどを配備し、できるだけ早く救急の現場にかけつけることが重要と認識している。さらには、現場から的確に受け入れ病院を探し搬送するには、地域の救急搬送を担う市消防局との連携も重要と認識している。

そこで、はりま姫路総合医療センター(仮称)の整備について、診療機能の拡充や、早期治療を実施する救急体制の整備などについて、今後どのように取り組んでいく方針か、当局の所見を伺う。

4 河川整備について

(1)二級河川 大井川整備事業について

大井川は姫路市の中心市街地西側、姫路市町坪から西庄、西今宿へと続く山すそに沿って流れ、水尾川に流れ込む夢前川水系の二級河川である。河道断面が小さく、昭和51年(1976年)には台風17号による豪雨で1,300戸もの家屋が浸水し、昭和58年、平成2年にも多数の家屋が床上浸水するなど、頻繁に浸水被害を起こしてきた。そこで、50年に一度の大雨にも耐えられるように河川改修計画を策定し整備を進めている。二級河川ということで法律上は県が管理する河川だが、姫路市が整備することを前提に河川法による二級河川として指定した過去の経緯があり、姫路市が国・県の補助を受けて実際の整備を進めている。

本改修事業は私の生まれる2年前の1972年(昭和47年)度に事業化し、2019年度で47年目となる。今でも毎年のように床下浸水が起きている。最も被害が大きい西庄町では25歳から45歳までの若手が西庄自治消防団という任意のボランティア団体を作り、大雨の予想される夜には徹夜で警戒及び水防活動にあたり、高齢者の住宅を守るために頑張っていると聞く。

事業開始からほぼ半世紀。計画終了年度は平成35年つまり2024年度となっているが、2024年度では事業完了は難しいという話もある。これ以上の事業の遅れは許されない。2024年度で完了するのか。事業の進捗、財源の確保について当局の所見を伺う。

(2)夢前川の被災箇所の復旧について

昨年7月の西日本豪雨の際に姫路市内各所で被害が出た。そのうち県管理二級河川の夢前川、書写橋下流付近では、護岸と床止めの2箇所が被災している。

護岸の被災箇所は、堤防上には往復2車線の姫路市道があるが、被災箇所はブルーシートで覆われたまま、片側通行となっており、仮設信号機が設置され、交互に通行している危険な状況である。

また、下流の床止め被災箇所は、河床の低下により、床止めが折れ曲がった状況となっている。

地元の話では、被災箇所の河川中央部に土砂が堆積し中州が形成され、水の流れが両岸に分かれ、直接護岸に沿って水が流れたため、洪水時の水の流れの力により、護岸を浸食し、また河床の土砂を流出させ被害が発生したのではないかとのこと。いずれにしろ周辺住民の不安は大きい。護岸と床止めの復旧に向けた県の対応状況と今後の見通しについて当局の所見を伺う。

5 近隣自治会等が反対する山林における太陽光発電への規制について

山林等での大規模な太陽光発電施設については自然との調和の観点から昨年3月に条例基準を強化し、50ha以上の特に大規模な施設については事業区域内にある森林のうち60%を残すこと、国立・国定・県立自然公園を含む場合には森林のうち80%を残すこととされた。再生可能エネルギーの理念から、CO2を吸収する役割もある森林を削減してまで行うことに疑問を感じてきた私の立場から、基準改正に賛同の意思を表明したい。

また、先月21日に行われた県市町懇話会の場で庵逧佐用町長から事業者間の転売等で実際の所有者が分からなくなって、問題が起こった時に対応がされなかったり、固定価格買取制度が終了し、高額での買取が行われなくなった際にそのまま放置される懸念、その積立金等の課題について発言があったそうだ。

私が昨年の本会議で取り上げた姫路市砥堀の甲子園球場43個分の大規模計画の事業者はシンガポールに本部を置く外資グループが出資した特定目的会社(SPC)であり、この点でも住民は懸念をしている。昨日も1万5千人の追加反対署名を自治会から中播磨県民センターに届け、これまでの提出数とあわせて4万8千人の署名が提出されたと聞いている。大変な数である。

そしてやはり最も反対している点は、山の斜面等からの太陽光パネルの崩落や森林伐採による保水力の低下による山崩れなどへの懸念である。

この点では姫路市林田町下伊勢、国道29号沿いで、昨年7月に大雨により崩落し未だに撤去されずに放置してある太陽光パネルに、地元住民が不安を持って暮らしているという現実がある。

このことについて、県としてどういった対応をしているのか、今後の見通しについて、また転売の繰り返し、事業者の倒産や清算等で所有者が不明となり、撤去計画が不履行となる場合、県として対策を考えているのか、当局の所見を伺う。

6 国民健康保険被保険者証の氏名へのフリガナ記載の必要性について

日本は国民皆保険制度の国である。議場の皆さんはどんな健康保険に加入しているであろうか。どんな健康保険証をお持ちだろうか。皆さんの健康保険証の氏名の欄にフリガナはついているだろうか。

私の場合は姫路市発行の国民健康保険の保険証であるが、フリガナはついていない。聞けば、国民健康保険法施行規則の保険証様式にはフリガナは入っていないそうだ。一方、県の行政職員が加入している地方職員共済組合、学校の教職員が加入している公立学校共済組合の組合員証、一般的には保険証であるが、フリガナ入りだ。県内の中小企業の従業員が加入している全国健康保険協会管掌健康保険(いわゆる協会けんぽ)でもフリガナ入り。大企業等が個別に運営している健康保険組合でもその多くはフリガナ入りと聞いている。

兵庫県の国保について調べると発行する市町によってフリガナがあるところとないところがあるそうだ。なぜ私がこの質問をするか。

私の知人で小児科診療所に勤務しているスタッフが待合で患者である国保加入者の子どもの名前を呼ぶ時に保険証を見て呼んだのだが、名前を正しく読むことができなかった。患者の親から怒られたそうだ。最近の若い人の漢字の名前をフリガナ無しで全て読めるだろうか。私も卒業式に来賓として行く機会があるが、一体どんな漢字を宛てているのだろうという名前がかなりある。診療所や病院では個人の特定に問診票等で留意をしているとはいえ健康保険証は重要な個人特定の証明書である。個人の特定に資する保険証へのフリガナ記載が必要だと思う。政府も行政機関が住民の氏名のフリガナを正確に登録活用するための統一的な運用方針を策定することになったと報道されている。

国保はこれまでは市町の事務だったが、2018年度から国保の都道府県単位化によって保険者に兵庫県が加わった。医療機関等での患者識別等の重要性にも鑑み、国民健康保険証の氏名のフリガナ記載を市町に助言していく必要があると考えるが、当局の所見を伺う。また、現在、フリガナ入りの保険証になっている県内自治体名についても併せて伺う。

竹内 英明

(選挙区:姫路市)

(石井 秀武 議員)[発言方式:分割]

1 兵庫県立大学のブランド力向上に向けた取組の推進について
2 県庁舎のセキュリティ対策について
3 ツール・ド・ひょうごの実施について
4 ライフラインの早期災害復旧に向けた県の取組について
5 長期保有土地の有効活用について
6 世界パラ陸上競技選手権大会について
7 渋滞交差点の解消に向けた信号制御のあり方について

質問全文

第343回 定例県議会 一般質問要旨

質問日:平成31年2月22日
質問者:石井 秀武 議員
質問方式:分割方式

1 兵庫県立大学のブランド力向上に向けた取組の推進について

(1)就職支援体制の強化について

今年5月1日現在で、全国に大学は781校あり、その内公立大学は92校ある。学生数は約155千人。私が卒業した時点では39校、4万人ほどであったことからすると隔世の感がある。

数ある公立大学の中で県立大学が全国5位の学生数と有数の歴史を誇る学校として発展を続けていることは、OBの1人として誇らしく感じている。

今後も、我々OBが誇りを持てる大学であり続けてほしいと考えているが、社会経済情勢も刻々変化していくし、18歳人口は減少傾向にあることを踏まえると、大学間の競争はますます厳しくなっていくと思う。

特に、この4月、大阪府立大と市立大を運営する法人が統合されるが、やがては新大学の設置という流れになっている。その新キャンパスは大阪の都心部、森の宮が予定されていると聞く。受験生を集めるための大学の都心回帰は東京でも言われているが、県立大がこれからも優秀な学生を確保し続けていくためには、大阪の都心にできる公立大学というものは、少なからぬ脅威になるだろう、と考えている。県立大学が大学間競争に勝ち抜き、地域や社会に貢献し続けていくためには、選ばれる大学を目指した取組を鋭意進めていくことが重要である。

そのような中、県立大学では、2019年から2024年にかけての第二期中期目標の基本目標を「次代を先導する世界水準の大学」とした。世界水準というと、たとえば、イギリスの教育専門誌であるタイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が毎年発表している世界大学ランキング2019年版で、日本から103校の大学がランクインしているうちの1校に県立大学も入っている。ある意味で既に世界水準を満たしている、と言えるのだが、加えて、来年度、国際商経学部と社会情報科学部を開設し、国際社会で活躍できる人材を育成することや、姫路工学キャンパスが整備され、最先端の工学研究等を進めていくことなど時代の要請を的確に捉えた取組により、文系・理系ともに研究も教育もさらに水準があがるのではないか、と期待している。

こうした教育体制面での充実・強化に加え、後一歩、県立大学が受験生にとって魅力あるものになるように取り組んでいただきたいと考えているのは、ブランド力の強化であり、そのためには就職と広報の強化が必要だと考えている。

そこで、まず就職支援体制の強化について伺う。

県立大学の就職率を見ると、平成30年3月の学部卒業生の就職率は99.3%、平成29年3月の卒業生も99.3%と高い数字である。最近の売り手市場が反映されているにしても好調であると言える数字あるが、私は、この数字を課題と考えているわけではなく、今後の就職が課題と考えているのである。

私が申し上げるのは口幅ったいことであるが、現在の県立大学の好調な就職状況を支えているのは、旧神戸商大、旧姫路工大のOBであると考えている。たとえば旧神戸商大なら、かつてはダイエーの創業者や東芝、野村證券といった大企業の経営者を輩出してきた歴史がある。それぞれのOBが各企業でそれなりの地位にあり、県立大学卒業生を自分たちの後輩として評価し、採用につなげてくれているのだろうと考えている。

だが、それがいつまでも続くわけではない。やがて、そうしたOBも順次退職していく。それまでに、そのOBたちが築いてきた財産である企業とのつながりを最大限に生かして、県立大学卒業生のよりよい就職につなげていかなければならない。そのためには、たとえば理事長なり学長なりが、有力なOBに働きかける、トップセールスのようなことも行い、受験生に魅力的な就職先を維持あるいは新たに開拓していくことも取り組んでいくべきではないだろうか。さらに、就職支援体制を見ると、大規模な公立大学でもたとえば首都大学東京のキャリア支援課、大阪市立大学就職支援室など、県立大学に次ぐ規模の横浜市立大学は学生・キャリア支援課といった就職支援体制を整備している。それに対して、県立大学の体制は果たして十分なのか、就職支援に長けた専門人材による支援体制も検討していく必要があるのではないか、と考えている。

そこで、県立大学の就職支援体制について、これまでの取組について伺うとともに、今後どのように取り組んでいこうとしているのか伺う。

(2)広報の強化について

次に、広報であるが、県立大学で学びたい、子供を進学させたい、卒業生を雇いたい、というように県立大学に魅力を感じる人々をさらに増やしていくためには、伝える相手と内容により最適な手段を選んだ広報を行う必要がある。

県立大学でも広報活動は行っていると思うが、それは全国的に知名度の高い大学でも同様である。その中で、県立大学のことが記憶に残る広報を継続的に行っていくことが重要である。

まず県立大学の存在を広く認知していただくことは元より、県立大学は何をめざし、どういう教育・研究をしているのか、そして県立大学で学ぶことにより自分の将来にどういう展望が拓けるのか、などを明確に発信していかなければならないと考える。

そのためには、広報を戦略的に企画し、実施する体制の構築が必要ではないか。たとえば、県立大学よりも規模の大きい大阪府立大学や大阪市立大学は広報課や広報室を、首都大学東京では企画広報課を、北九州市立大学は広報入試課を、県立大学に次ぐ規模の横浜市立大学も広報室を持っている。それに対して、県立大学には専門的に広報に取り組む部署がない。広報を専門に取り扱う部署を作ることがむずかしければ、知事部局で広報官を置いたように、外部の人材をスカウトし、県立大学の広報を強化するという手段もある。メディアに取り上げられれば取り上げられるほど、またその媒体の種類や数が多いほど県立大学の認知度は高まり、よい印象を持つようになってくれる。そうした広報は、やはり専門の体制で戦略的に取り組むものではないのではないだろうか。

そこで、県立大学では、自身のブランド力についてどう評価しているのか、また、その向上のために今後どのように取り組んでいこうとしているのか伺う。

2 県庁舎のセキュリティ対策について

県庁舎には、仕事や県庁見学などで連日多くの来庁者があるが、一義的には職員の執務の場として、あるいは議員の活動の場であるため、行政文書や個人情報など外部へ流出させてはいけない情報を多く扱っている。

そうした情報の保護のためには、たとえば不審者の侵入に配慮するなどのセキュリティ対策に万全を期しておくことが重要だと考えている。本日は、来庁者の数や扱う情報量が多い本庁舎のセキュリティ対策に絞って伺うこととする。

県庁舎への出入りについては、午後6時以降になると1~3号館は保安室のある出入口からしか出入りができないようになっているので、ある程度のセキュリティは確保されているようにも思う。しかし、勤務時間中はどうなのだろうか。

たとえば、国の合同庁舎に入館時のセキュリティチェックがあることはご存じの皆さんも多いと思う。また、神戸地裁ではこの1月4日から、X線手荷物検査装置を導入したという報道があったが、危険物持ち込み防止のため、裁判所でもセキュリティの強化を図る動きがある。

地方自治体では、東京都庁がセキュリティゲートを設け、一時通行証の発行を受けなければ入庁できないようになっている。確かに、都道府県庁でここまですることが必要かどうかは議論の分かれるところであると思うし、誰でも気軽に利用できるオープンスペースも必要だとは思うが、個人情報保護、行政文書の管理の徹底、防犯といった観点からは、見習うべき点もあるのではないかとも思う。それは、よく他の自治体でも新庁舎再整備の際に、来庁者、職員、議員等の立ち入れる区画や動線の分離、セキュリティ・ゾーニングなどを考慮した整備を考えていることからもわかる。現在建設中の岐阜県庁舎では、共用エリアと執務エリアを区分し、ICカード認証設備等を設置するという。さらに、横浜市も現在新庁舎を建設中であるが、その管理計画を見ると、セキュリティの項で8ページにわたって、セキュリティ・ゾーニングの考え方や機械警備の導入などついて詳細に記している。

セキュリティ対策というものは、何かが起きてからそれにどう対応するか、ということも重要であるが、それ以上に、その何かが起こらないようあらかじめ対策をとって防いでいく、という考え方も重要だと考えるため、現在の勤務時間中のセキュリティ対策は、はなはだ脆弱に思っている。

県庁舎の再整備にあたっては、他の自治体と同様に防犯性を確保するためにセキュリティゲートの設置なども検討されるようだが、それはセキュリティの重要性が認識されているからであると思うのだが、では新庁舎ができるまでの間はどうするのか。

そこで、現在の県本庁舎のセキュリティ対策について、どのように取り組んでいるのか伺うとともに、今後どのように整備していこうと考えるのか所見を伺う。

3 ツール・ド・ひょうごの実施について

通学や買い物など日常の足として、また、サイクリングなどに子どもからお年寄りまで幅広く使われている自転車の保有台数は全国で7千万台を超えており、人口当たりの自転車保有数は世界でも上位にある。

平成29年5月に施行された自転車活用推進法は、環境負荷の低減、交通の混雑の緩和、国民の健康の増進に資するものであるから自転車の活用を推進しようという趣旨で制定された法律であり、自転車の活用促進を支える礎となっている。

私はこれまでこの場で、誰にでも身近な自転車を活用した地域振興について、ツール・ド・淡路や六甲山ヒルクライムの実施などを提案してきた。

残念ながら、いずれもまだ実現できていないのだが、その後、丹波でツール・ド・丹波を開催する動きがあるのを知った。丹波シティプロモーションの一環として、丹波市内100kmをコースとして、今年本大会を開催するという。県内の各地域での自転車を活用した地域振興策がまた充実するのを感じた。

他に、県が主催者として関わりを持っているものとして淡路島ロングライド150や山陰海岸ジオパークコウノトリチャレンジライドin但馬が開催されている。こうした大きな事業ではなくとも、自転車まちづくりの推進(阪神南)、ひょうご北摂スポーツサイクルの郷づくり(阪神北)、サイクリングde地域活性化(西播磨)といった県民局単位で自転車を活用した地域活性化に取り組まれている。

こうした自転車を活用した地域での取組をさらに広げ、県を代表する自転車イベントの実施を検討してはどうか、と考えている。

私が具体的な先進事例としてイメージしているのは、栃木県が開催している「ツール・ド・とちぎ」である。今年の3月に第3回目の大会が開催されることになっている。

栃木県は、自転車先進県を標榜しているのだが、「ツール・ド・とちぎ」は、国際自転車連合公認のレースとして国内外の強豪選手を迎え、県内全域を1回あたり3ステージのコースを設定し、2年で全市町を走破する、というものである。

主催は「「特定非営利活動法人ツール・ド・とちぎの会」、主管は「ツール・ド・とちぎ実行委員会」である。委員会の会長は、NPO法人の理事長で民間企業の代表者、県知事が名誉会長、宇都宮市長が副会長、その他経済団体の方々などが入っている。

財源として地方創生推進交付金を県と全市町(14市11町)が共同で申請し、活用している。平成29年の第1回と平成30年の第2回とで全県の市町を回ったので、この第3回は2回転目に入ることになる。

第1回大会は観客動員数約6万6千人、経済波及効果約10億9千万円、第2回大会は同じく約7万2千人、約11億1千万円だったそうだが、こうした効果だけでなく、地域住民、経済界、県や市町などがオールとちぎとして連携・協力して開催している、地方創生の象徴的な取組であるところに大きな意義があると考えている。

本県は、栃木県に比べて大都市部があり、島、海があるなど、バラエティに富んだ魅力的なシーンを満喫できるコース設定が可能であると考えている。

そこで、ぜひ、兵庫県でもツール・ド・ひょうごとして開催してはどうか、と考えるが所見を伺う。

4 ライフラインの早期災害復旧に向けた県の取組について

台風第21号による被害の中の一つとして、関西電力管内で延べ約220万軒という大規模な停電があった。強風等による電柱の倒壊や倒木・飛来物等による電線の切断などにより停電したもので、全面復旧は9月20日、つまり最も復旧が遅かったところは2週間以上かかったということになる。まだ残暑厳しい折りであったから、特に高齢者や病院・介護施設などに入っておられる方は大変ご苦労されたことと思う。

言うまでもなく、電気は重要なライフラインの一つであり、家庭生活や経済活動など様々な分野に大きな影響を及ぼす。そのため、早期復旧が望まれるわけだが、その復旧作業を一義的に担うのは、もちろん電気事業者である。

今回、復旧が遅れた原因は、被害が広範だったことに加え、道路上の倒木などで復旧・修理が必要な現場に近づけない、被害現場の多くが山間部で現地へのルートが限られており到着に時間がかかる、などだったという理由があげられている。阪神・淡路大震災の時の停電の規模は約260万戸で今回よりさらに大きかったが、1週間後には全面復旧したことと比べると確かに時間がかかっている。

今回の事態を受けて、関西電力では昨年9月に内部で「台風21号対応検証委員会」を立ち上げ、12月に報告を公表した。そこで課題としてあげられているのは、①停電の早期復旧、②お客さま対応、③自治体との連携の大きく3点である。この中で、私が特に注目したのは、先程もあった、早期復旧を達成するための課題として「障害物・土砂崩れ等により停電復旧に長期間を要した」というものである。

山間部において道路が倒木や崩れた土砂にふさがれ、作業員の立入がままならない場所があったことへの対応として、関西電力の報告では、自治体との早期連携に向けた事前協議を進めることと、関西電力自身が重機の導入等により障害物を除去することも検討していくとされている。ということは、この台風21号に被災した時点では、電力会社の復旧を担う人たちにそうした機能を備えていなかった、ということがわかる。今回ほど大規模な被害がこれまでなかったからわからなかった課題が浮かび上がった、ということであろう。

電力をはじめとするライフラインが停止して困るのは県民であることを考えると、今回のことを教訓として、自治体側からも早期復旧のためにできることを積極的に提示しながら事業者等と協力した取組を進めていくべきではないかと考える。

そこで、県としてこれまでライフラインの早期復旧に向けた事業者との連携についてどのように取り組んできたのか、また、今後どのように取り組んでいこうとしているのか所見を伺う。

5 県有環境林の有効活用について

平成29年度末現在、県の長期保有土地は約4,000haあり、その内、直ちに利活用が見込めない先行取得用地等である県有環境林が5割強、約2,180haあると聞いている。

また、企業庁では、播磨科学公園都市(第2・3工区、1,164ha)とひょうご情報公園都市(第2~4工区、215ha)に併せて約1,379haの事業進度調整地を持っているが、行財政運営方針では、県民・企業ニーズや事業採算性等を考慮の上、地元自治体等の理解と協力を得ながら、その利活用を検討するが、利活用が困難な場合は、長期的には環境林としての活用も検討する、とされている。今後の社会経済情勢にもよるが、その多くが県有環境林となる可能性があるのではないかと思っている。

県では、県有環境林の意義を水源涵養、CO排出抑制などに求めているが、県土の67%は森林であり、そのうち県有環境林の占める面積は0.4%程度であるから、効果はそう大きなものでもないように思う。さらに、県有環境林の総面積は、現在でも芦屋市よりも大きいが、今後、企業庁の事業進度調整地が加わってくれば、さらに面積は増えていくであろうから、それが有効に利活用されずにいるのは非常に惜しいことだと思っていた。議会としても昨年、行財政構造改革調査特別委員会の報告書において、地域創生に資する事業などより効果的な事業への利活用の検討を行うよう提言している。

そのような中、県有環境林を活用して「狩猟者育成センター(仮称)」を整備すると聞いた。このこと自体は、鳥獣被害対策を進める上での有効活用であるから問題ないのであるが、これを契機として、県有環境林の利活用策について、もっと積極的に検討を進めていくべきではないか、と考えている。

たとえば、せっかくの豊かな自然環境を生かす意味でも、スポーツ施設などを建設あるいは誘致するということも検討してはどうだろうか。

そこで、県有環境林の今後の活用について、どのように取り組んでいこうとしているのか所見を伺う。

6 世界パラ陸上競技選手権大会の誘致・開催に向けた連携について

いわゆる障害者スポーツは、第2次世界大戦の時、脊髄損傷を受けた兵士のリハビリと社会復帰を目的として、イギリスのチャーチル首相らが治療の一環として取り入れたことが始まりと言われている。その最も大きな国際大会といえば2020年に東京でも開催されるパラリンピックであり、我が国では、前回、すなわち1964年の東京パラリンピックを契機として障害者スポーツが広まったのだと聞いている。

当初は医療的、福祉的な訓練としての意味合いが強かったものが、現在では我が国においても全国障害者スポーツ大会が国体直後に開催されるようになるなど、スポーツをスポーツとして楽しむ意識が高まっている。

しかし、日常で障がい児・者がスポーツに取り組む頻度は、障がいのない方々に比べるとまだまだ低い現状もある。適度にスポーツに取り組むことによって得られる効果やメリットをもっと発信していくことが必要であると思う。その発信の手段として効果が期待できるのが、一流アスリートが競技する姿を間近に見ていただくことだと思う。

そして、その絶好の機会がすぐ手の届くところにある。それは、先日、神戸市が2021年の世界パラ陸上競技選手権大会開催地に立候補したことである。他に立候補しているのはパリで、4月に決定されるという。

大会を主催するのは、国際パラリンピック委員会(IPC)で、1994年のドイツ大会以降概ね4年に一度、2013年のリヨン大会からは2年に一度開催されており、今年は11月にアラブ首長国連邦のドバイで開催されるが、これまでアジアで開催されたことはない。つまり、神戸市の開催が決まれば、アジアで初の開催ということになる。報道によれば、IPCは東アジアでの開催を望んでいるとのことなので、かなり実現の可能性が高い話だと思う。

本県では、これまで、今年のラグビーワールドカップ2019、2020年の東京オリンピック、・パラリンピック、そしてワールドマスターズゲームズ2021関西と国際スポーツイベントが続くことをゴールデンスポーツイヤーズと呼んでインバウンドの増加等に向けて取り組んできているわけであるが、ゴールデンスポーツイヤーズの締めのイベントとして、この世界パラ陸上競技選手権大会はふさわしいのではないか、と考えている。特に、2021年はワールドマスターズゲームズ2021関西が5月中、つまり2021年の前半で終わってしまうわけであるから、秋頃開催される世界パラ陸上競技選手権大会を加えることはゴールデンスポーツイヤーズの締めの年にふさわしいと考える。

そこで、障害者スポーツの振興を図る上でも効果の期待できる世界パラ陸上競技選手権大会の誘致と開催について、神戸市と連携を密にして取り組んでいってはどうかと考えるが、所見を伺う。

7 港湾の堤外地に係る防災対策ついて

本年9月4日に襲来した台風第21号による被害は、県内各地に様々な被害をもたらしたが、特に沿岸部は、これまでに経験のない高潮による被害を受けた。

コンテナが大量に流出したり、関西国際空港連絡橋にタンカー船が衝突して損傷し、通行止めとなったり、広域にわたって浸水被害が発生するなど、自然の脅威を改めて思い知らされることとなった。

中でも、特に堤外地とよばれる防潮堤外のエリアで被害が大きかったことと、それを要因として立地企業の中には県外移転を検討しているところもある、という報道がなされたことから、新たな課題が浮き彫りになったのではないか、と考えている。

それは、堤外地に立地する企業の防災対策について、何らかの支援が必要ではないか、ということである。

県のCGハザードマップの高潮による被害想定は、これまでの最高潮位を記録した第二室戸台風時の潮位をもとにしたものになっており、阪神間の堤外地はほとんど浸水が想定されている。

国交省が昨年3月にとりまとめた「港湾の堤外地等における高潮リスク低減方策ガイドライン」を見ても、高潮による被害リスクの高い港湾の堤外地に立地する企業は、自らの判断でそこに立地したのだから、企業自らが対策を実施することが基本とされている。

だが、行政としては、たとえば県の産業立地条例で工場立地促進地区に指定し誘致を促進している地区に、神戸ポートアイランド地区、尼崎臨海地区、兵庫区の南部地区などの堤外地が含まれている。

もちろん、企業の側も、補助金や税の減免だけでなく、物流や雇用など総合的にメリット・デメリットを勘案し、進出する場所を決めた結果、堤外地に立地されているのであろうことを考えると、堤外地ゆえのリスクも織り込み済みだろう、という考え方もできる。

しかし、一方で、県は優遇措置を設けて積極的に堤外地への誘致を行ってきているのであり、一旦立地した企業が流出するような事態を防ぐための策を講じるべきではないだろうか。

そこで、堤外地に立地する企業に対する浸水被害対策に係る支援について、どう考えているのか所見を伺う。

8 渋滞交差点の解消に向けた信号機制御のあり方について

道路の渋滞が長時間にわたると、県民の生活や経済活動に著しく時間的経済的な損失を生じるほか、沿道の大気汚染やCO排出量の増加などの環境面や緊急車両がスムーズに走れないなど、様々な問題につながる。たとえば国土交通省の「交通流対策について」(平成27年3月5日)という資料を見ると、全国で一人当たりの年間渋滞損失時間は約40時間、乗車時間の約4割に相当するという。つまり、自動車を運転している時間の4割は、渋滞がなければ不要なものだということだ。また、年間12兆円の経済損失もあると聞くと、改めて渋滞対策に力を入れていくことが必要だという思いを強くする。

そもそも車の数自体も増えており、一般財団法人自動車検査登録情報協会のデータで乗用車の台数だけを見てみると、平成30年9月末現在、全国で約6,158万台であり、50年以上にわたって増加し続けているのであるから、渋滞の発生につながりやすい状況にあると言えると思う。

一般道路における渋滞の原因としては、工事や事故による車線規制や路上駐車などもあるが、その多くは車が集中しやすい交差点を先頭にした渋滞である。

たとえば、第二神明道路の大蔵谷インターから出たところにある神戸市伊川谷町の漆山交差点では、各方面からの車両が集中し、同交差点を先頭に渋滞が発生すると聞いている。

本県では、交差点における渋滞の解消・緩和のため、平成25年度に策定された「新渋滞交差点解消プログラム」に基づき、今年度いっぱいで70箇所ある渋滞交差点を半減するとしている。

こうした県土整備部によるハード対策とともに重要なのは、適切な交通管制である。県警では、車両感知器や光ビーコン、テレビカメラで収集した交通情報を分析し、交通実態にあった信号機の制御や交通情報の提供を行い、交通の安全と円滑を図っているとされている。

ちなみに、中国の杭州市で交通信号制御にAIを試験導入したところ、高速道路の渋滞が15.3%減少したほか、最もひどい渋滞をしていた道路も渋滞が8.5%減少し、通過時間は約1分短くなったという事例を記事で見たことがある。AIを信号制御に導入というのは、我が国ではまだ先のことだと思うが、いずれにしても、渋滞緩和には信号機の制御が果たす役割は大きいと考えている。

そこで、渋滞交差点における適切な信号制御への取組について所見を伺う。

石井 秀武

(選挙区:神戸市西区)

(小池 ひろのり 議員)[発言方式:分割]

1 刑務所出所後の支援について
(1)再犯防止に対する取組について
(2)満期出所者への支援について
2 がん教育の推進について
3 神戸空港の活性化による兵庫の発展について
4 県独自の給付型奨学金制度の創設について
5 県立夜間中学創設について

質問全文

第343回 定例県議会 一般質問要旨

質 問 日:平成31年2月25日(月)
質 問 者:小池 ひろのり 議員
質問方式:分割方式

1 刑務所出所後の支援について

刑務所出所後の支援がなぜ必要かを考えてみたいと思います。

日本は、治安が大変良い国だと世界的にも評判です。しかし、治安が良い日本であっても、平成29年中の刑法犯検挙者で再犯者の占める割合は、48.7%(本県では50.9%)という異常な高さです。また、65歳以上の満期出所者に限って言えば、5年以内の再犯率は70%と言う専門家の話を聞きました。この再犯を抑制できれば、もっと安全で安心な社会にすることができることは明らかです。

刑務所を出所した時、ほとんどの人は「もうお世話にならないように!」と決意をしますが、出所後の社会はそんなに甘くはありません。住むアパートを見つけることも容易ではなく、前科がある人を受入れてくれる職場も限られています。一旦、刑務所に入ると、行く所も帰る所も、失う人が多くいます。

刑務所出所者の環境整備が進まない状況で犯罪が繰り返され、再犯者率が異常に高いまま推移しているのが現状と思われます。

出所者にとって最も大きな課題は、住居支援と就労支援です。更に、仕事ができない人の中には、福祉支援が必要な場合もあります。しかし、このような人達の中には、支援の受け方すら知らない人も多く、行政の方から積極的に支援の手を差し伸べる必要があると思います。

そこで、以下2点についてお伺いします。

(1)再犯防止に対する取組について

「なぜ出所者に、そんな手厚い支援をするのか?」そんな声が聞こえてきそうですが、皆さん!犯罪者の更生にかける税金は、どのくらいかご存じでしょうか?

犯罪者を逮捕してから刑務所を出所するまでの更生に、犯罪1件に付き投入される税金は平均で約400万円とも言われています。この税金の1割でも犯罪予防に廻せれば、犯罪を激減させることが期待できます。そこで、再犯予防が費用対効果という点で、大変優れた施策になってきます。しかも、犯罪を抑え込めば、被害者も出さずにすみます。治安が良くなり、警察官の増員も必要なくなり、観光客は増えるなど、私達の生活環境の改善にもつながるものと確信しています。

法務省においては、再犯防止推進法に基づく再犯防止推進計画を策定し、平成33年までに2年以内再入率を16%以下にする等の目標を掲げて取り組まれようとされています。また、兵庫県では、平成25年に全国に先駆けて再犯防止対策関係機関連絡会議を立ち上げました。就労支援は国、住宅は県、福祉は市町という縦割り行政がある中で、この連絡会議は行政の横の連携という意味で有意義な取組であると私は高く評価しています。しかしながら、同会議は38機関と大きすぎて、必ずしも縦割りを乗り越え連携して議論するという組織にはなっていません。しかも、この5年間で、殆どの担当者が人事異動で変わっています。もっとしっかり議論ができる組織にする必要があるのではないでしょうか。今後、県が中心となって関係機関の連携を図り、犯罪予防のために刑務所出所者支援を積極的に進めることを望みます。

そこで、これまでの再犯防止の取組の検証と、更なる支援の拡充が必要と考えますが、今後どのように再犯防止に取り組んでいこうとされているのか、当局のご所見をお伺いします。

(2)満期出所者への支援について

刑務所の出所には2種類あります。真面目に勤めていれば、刑の8掛けぐらいで仮出所できる場合と、満期で出所する場合があります。仮出所の場合は、出所から刑の終了までの期間、保護司が対応し寄り添います。

しかし、問題は身元引受人がおらず、更生意欲が乏しい満期出所者の場合です。彼らは満期で刑を終え、出所した途端に一般人になるため、仮出所における保護観察期間のような支援制度がありません。出所者は職も住居も自分で見つけねばなりませんし、社会も出所者を温かく迎えるという状況ではありません。満期出所者にとって、出所後の生活が罪を犯す前の環境と変わらない状況下では再犯に走る場合が多く、実際に満期出所者を含む再入所者のうち7割以上が再犯時に無職という現状があります。

そこで、保護司と共に更生努力をする仮釈放者もさることながら、満期出所者に対して特に支援が必要と考えます。住宅・就労・福祉支援など総合的にコーチングする専門家が、生活が安定するまでのせめて半年くらい寄り添うことができれば、再犯は半減すると思います。

このような観点から、満期出所者に対する具体的な支援について、当局の考え方をお伺いします。

2 がん教育の推進について

一般的に、皆さんは自分が、がんに罹るとは、余り真剣に考えていないと思います。しかし、現実は、万が一がんになったらではなく、二分の一、つまり2人に1人が、がんに罹るのです。そして、がんを宣告された当事者は、がんに対する考えが一変し、死と向き合う生活を送ることになります。

がん対策基本法が平成19年に施行され、それに基づく対策として「①死亡率を10年で2割減らす。②検診率を5年で50%超にする。」が掲げられました。最近では医学も進歩し、乳がん・前立腺がん・胃がんは100%治癒すると言う専門家もいます。先日、ノーベル賞を受賞された本庶佑(たすく)京都大学特別教授は、「21世紀中にがんは撲滅する」と言われており、部位にもよりますが、がんと共生する時代に入ったと言えます。

とは言え、安心してがんと共生するには早期発見が前提で、転移してからでは、完治もかなり難しいのが現実です。がんを克服するためにも、また治療費を抑制するという意味からも、重篤になる前に早期発見をする、そのために、検診率を向上させることが必要です。

しかし、兵庫県のがん検診率は、47都道府県単位で見ると、平成22年で女性特有のがんの受診率は全国最低でした。平成25年で、乳がんが44位、子宮がんは39位、胃がんは46位、平成28年にあっても、乳がんは39位、子宮がんは43位、胃がん・肺がんは共に42位と、未だ最下位あたりを低迷しています。理由をいろいろ言われますが、これまでの本県のがん対策は、弱いと言わざるを得ません。

10数年前、国指定のがん拠点病院の時も、本県は最後まで取り残されていました。また、平成19年に、国に於いてがん対策基本法が制定され、平成30年4月現在で、全国40以上の道府県が、がん対策条例を制定しました。しかし、この条例も兵庫県には、ありませんでした。これまで私は何度もがんに特化した条例を要望し、この度やっと本定例会に「がん対策推進条例」が上程されました。一歩前進したことを、がん患者の一人として本当に嬉しく思います。

更に、平成28年12月改正のがん対策基本法には、がん教育が新たに盛り込まれました。この改正がん対策基本法と兵庫県がん対策推進条例を受けて、兵庫県も積極的にがん教育を進めることが重要となってきています。若い時に学校教育の一環として、がんに対する正確な知識を身に付けることは検診率を高め、がんの早期発見にも結び付いていきます。

県の健康福祉部では、大学生を対象とした出前講座や各種イベントで県民への啓発を進めておられます。しかしながら、より早い時期、すなわち高等学校への出前授業の講師派遣などを行うことが、より重要と考えます。がん教育については、教師自身の理解不足や誤解等も多々あると思います。医師を高校に派遣し、医師の実体験をプロの立場で語りかければ、生徒はがんの知識を身につける他に、医師になる夢を抱く生徒もいるかもしれません。もし、医師となって地元で活躍することになれば、医師の偏在解消にも役立つ可能性も出てきます。

このようにがん教育を推進することで、がんに対する正しい知識を、県民全体が身に付け、より早期の発見と治療が進み、安心して暮らし合える社会作りに繋がると考えます。そこで、条例制定を踏まえたがん教育の推進について、教育委員会等関係機関との連携等、どのように取り組もうとされているのか、ご所見をお伺いします。

3 神戸空港の活性化による兵庫の発展について

平成24年に関西国際空港と大阪国際空港が経営統合されました。そして、昨年4月に神戸空港が民営化され、関西3空港の一体運営が開始されました。これからは、3空港それぞれの特色を最大限活用していくことが重要だと考えます。中でも、利便性がよく、更なる需要が見込める神戸空港の活用が、今後の関西経済の浮沈に大きく関わってくるものと確信します。

2019年には、ラグビーワールドカップ、2020年に東京オリンピック・パラリンピック、2021年にワールドマスターズゲームズ、2025年に大阪・関西万博等の国際的なイベントが目白押しです。これらのイベントで、国内外からの観光客の大幅な増加が見込まれるチャンスを的確に捉え、兵庫の発展につなげるべきと考えます。

そのためには、神戸空港を核とした県内への誘客促進が欠かせません。神戸には世界に名を馳せる神戸ビーフをはじめ、全国最大の清酒生産地の「灘の酒」など、世界的にも知名度の高い食文化も擁しています。そして、いろんな国の食を提供するハイカラなレストランがあります。六甲山では、素敵な夜景を楽しめスキーもできます。また、近くには姫路城もあります。外国人旅行者のリピーターを取り込む魅力が十分に備わっています。体験型観光を中心とした神戸への誘客を積極的に打ち出すことで、国際観光都市神戸を元気づけ、確実に兵庫の発展を導くものと考えます。

更に、神戸独自の先端医療を活用した医療ツーリズム等にもつなげることも可能です。神戸空港を取り巻く環境は、ノーベル賞を受賞された本庶京大特別教授が理事長を務める神戸医療産業都市推進機構や、理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」などの世界有数の科学技術基盤があります。また、ポートアイランドには、神戸学院大学、兵庫医療大学の他に、小児医療の全県拠点病院と位置づけられている県立こども病院等の高度専門医療機関や、350社を超える関連企業の進出もあり、日本最大の医療クラスターを形成しています。

このように、神戸空港は特色のある環境を近隣に有しているのに加えて、JR神戸線や山陽新幹線等へも20分程度で移動可能であり、県内外へのアクセスにも優れていることから、インバウンドやビジネスを始めとした利用者の潜在的なニーズは十分あるものと考えています。発着枠や運用時間等の規制緩和を図ると同時に、神戸空港のポテンシャルを活かした積極的な活用策についても忘れてはなりません。

平成29年度の空港別乗降客数は、全国97空港中14位で、国内の主要な都市型空港としての地位を確立し、旅客数は開港以来の過去最高を更新するなど、堅調な推移を示しております。また、昨年末には、関西3空港懇談会が開催され、神戸空港の規制緩和に向けた議論がスタートしました。

そこで、是非、神戸市ともしっかりと連携し、神戸空港の活用促進を図ることで、兵庫の発展に結びつけて頂きたいと考えますが、当局の所見をお伺いします。

4 県独自の給付型奨学金制度の創設について

昨今、家庭の経済格差が教育格差にまで広がってきています。その結果、経済的困窮者や児童養護施設の高校生に、経済的理由で大学進学等を諦めざるを得ない生徒が増えています。

私は、誰に対しても大学進学を促すものではありません。しかし、経済的理由で進学を諦めざるを得ない子供がいれば、行政が支援の手を伸ばすべきではないでしょうか!

このような現実に対し、文部科学省は平成30年度からローンの貸与型ではない給付型奨学金制度を本格実施しました。この制度は、目の前に経済的理由で悩んでいる高校生に、進学する夢や希望を与えるものとして私達は歓迎しました。

しかし、まだまだ内容は不十分です。例えば、国のこの給付型奨学金で、私立大・下宿型で最高の月額4万円を受給出来ても、授業料だけでなお年間100万円ほど不足します。大学進学の十分な費用を準備できない者にとっては非常に大きな負担となっています。その結果、一般家庭の大学等進学率が73.0%に対し、生活保護世帯では35.3%、児童養護施設の子供は、27.1%という低水準で、大きな開きがあります。

教育現場では、高校3年生の進路指導が最大の課題です。目の前の高校生が、進学したくても、経済的な理由で進学を諦めかけている現状を、このまま見過ごしていて良いものでしょうか!教育委員会は、国の動向を見守るとも言われました。しかし、私が初めて、給付型奨学金制度を要望したのは6年前です。以来、国の動向を見守るだけで手立てをしなかったために、その間に施設の何百人と言う生徒たちが切り捨てられてきたのです。

新潟県が独自の給付型奨学金制度を創設しました。兵庫県も是非、このような子供たちに夢を与える政策を進めてもらいたいものです。

そこで、県は独自の給付型奨学金制度を創設し、国の不十分な給付型に上積みし、 “やる気”があっても家庭が苦しく経済的な理由で進学を諦めている高校生を救って頂きたいと思います。是非、この県独自の給付型奨学金制度の創設を実現させて頂きたいと思いますが、当局のお考えをお伺いします。

5 県立夜間中学創設について

戦後の混乱期、引揚者の問題、焦土化した街、食料さえ不足する状態で、生きていくのに精一杯の時代にあっても、日本は教育に力を入れました。

1947(昭和22)年、神戸で、長期欠席児童の救済措置として“夜間訪問”の活動が始まり、制度的に補強され大阪で『夜間中学』が創設されました。現在、公立の夜間中学は全国に31校(うち県内は、神戸市2、尼崎市1)が存在します。その他に、自主夜間中学が21校あり、文科省がここ数年、中学校のいわゆる形式卒業生に学び直す場の提供を奨励したことにより、今、全国的に、急速に公立夜間中学の創設に向けた取組が広がっています。

昨今の夜間中学は、創設当初の目的から大きく変化し、いじめ・虐待・不登校等の理由で義務教育を十分に受けられなかった児童・生徒や外国人に、就学の機会を提供するという重要な役割を果たしています。

昨年度、義務教育での30日以上の長期欠席者は21万7千人に達し、そのうち不登校においては3カ月以上の欠席者が6割を占めていたそうです。こうした学校で殆ど勉強が出来ていない未就学者であっても、卒業の時期になると卒業証書を出し、形だけ卒業したことにしているという現状があります。今の学校の体制に馴染めず、いじめ、或いは家庭の事情で不登校になっている長期欠席児童の対策が十分に取られることなく、卒業証書を与えることで免責のようにしている現状は、決して日本の誇るべき義務教育が遂行されているとは言えません。このようなやり方が、義務教育学校でなされているという実態に、元教師として大きな疑問を感じざるを得ません。

また、この中学校の形式卒業生の他に、親の事情で無戸籍のまま小学校にも行けず、親に捨てられ社会からもネグレクトされた児童が、全国に潜在的に1万人いると言われています。更に小学校で不登校になり、中学校に入学していない生徒を考えると、兵庫県内でも推定で約500人が、毎年、先程の未就学生に加わることになります。

しかし、現実に行政のこの手の調査に対し、未就学者が自らの負い目をさらし、「私は小学校も、ろくに出ていない」と名乗り出ることには大きな抵抗があり、結果的に行政も把握出来にくいという現実があります。未就学者はいないのではなく、見えない、聞こえないだけで、潜在的に何処の地域にもいるのです。

現在、兵庫県北部や中西部には、夜間中学がありません。やり直すべき学校が無い状況で、入学希望者・ニーズの声が届くはずがありません。潜在的入学希望者は必ずおり、夜間中学の充実を図り、広報などで積極的に再チャレンジを希望する人を掘り起していくことが行政の責務だと考えます。

昨年度、岡山県で自主夜間中学が創設されました。県がニーズ調査のためチラシ2万7千枚を配布し、その上で入学生を募集したのですが、開校当時、生徒はわずか3名でした。しかし、ボランティア教師の踏ん張りと口コミの評判が広がり、1年後に生徒が40名に膨れました。夜間中学への潜在的入学希望者はいるのです。

日本国憲法には、勤労・教育・納税が国民の3大義務として記されています。第26条に学習権が定められており、更に、それを補強するために、2016(平成28)年、“義務教育機会確保法”が施行されました。同法の基本理念には、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を十分に尊重しつつ、その年齢又は国籍等に関わりなく教育を受ける機会を確保する」と記されています。更に、「地方公共団体は、基本理念にのっとり、教育機会の確保などに関する施策について、国と協力しつつ、施策を実施する責務を有する」と規定されています。

今後、県の役割として、中核市姫路や近隣の市町と連携し、広域から通える県立夜間中学を西播磨地区に設立し、潜在的入学希望者に応えることが必要だと考えます。

そこで、県の夜間中学創設に対してのご所見をお伺いします。

小池 ひろのり

(選挙区:神戸市中央区)