議会の動き

石井健一郎議員が代表質問を実施

第307回定例会(12月)代表質問
2010年12月8日(水)

1 国の補正予算に対する評価について

 去る11月26日に、円高・デフレ対応の経済対策を盛り込んだ2010年度補正予算が成立し、その規模は、円高・デフレ対応の緊急総合経済対策4兆8,513億円の他、公共事業の契約前倒し2,388億円を加え、総額で約5.1兆円となりました。
 これまでも、菅内閣では、急速な円高の進行等の厳しい経済情勢に対しスピード感を持って対応するとともに、デフレ脱却と景気の自律的回復に向けた道筋を確かなものとしていくために、平成23年度までの政策展開を定めた「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」を本年9月10日に決定するなど、経済対策を進めてまいりました。
 今回、特に、厳しい経済情勢に対して、需要・雇用創出効果の高い施策に重点を置いて実施されました「ステップ1」から間をおかず、年末から年明け以降の景気・雇用悪化のリスクに対して、需要面から先手を打った備えを行うことで成長の下振れ懸念に対応する「ステップ2」を速やかに実施できるよう、スピードを重視した予算が編成されました。
 先月内閣府によって発表されました月例経済報告によると、景気はこのところ足踏み状態であるともに、失業率が高水準で続くなど厳しい状況にあり、また、日銀神戸支店による県内の景気見通しにあっても、その持ち直しのペースは鈍化しており、雇用・所得環境も依然として厳しい状況にあります。
 こうした中、今回、県としても国の動きに呼応する形で、9月定例会に続いて切れ目がなく、かつ実質的な財政負担がほとんど生じない補正予算を編成されたことはまず評価させて頂きたいと思います。
 知事は、先に行われた9月定例会で可決された補正予算にかかる質疑にあって「デフレ脱却、景気回復を軌道に乗せるため、早急かつ機動的に第二弾となる経済対策が実施されることを期待している」とご答弁頂いたところですが、この度の円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策の実現に向けた国の補正予算の成立とその内容について、県の補正予算と関連づけて、どのように評価されているかをまずお伺いします。

2 地域の自主・自立に向けた取り組みについて

(1) 国と関西広域連合・県の役割のあり方について

 第1点目として、国と関西広域連合・県の役割についてお伺いします。
 世界同時不況に端を発した経済状況は深刻度を増しており、急速な円高と長引くデフレにより、地域経済の冷え込みが顕著となっています。
 特に地域経済と雇用対策の活性化が急務であり、社会保障の充実など、地域のセーフティネットとしての地方自治体が果たす役割は益々高まっています。
 本年6月22日に地域への権限移譲が閣議決定されましたが、義務付け・枠付けの見直し、国の出先機関の原則廃止、ひも付き補助金の一括交付金化、地方税財源の充実確保など、広範な分野にわたって取組方針が示されたところであり、地域の自主・自立は、地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができる活気に満ちた地域社会をつくり、ひいては国全体の活力を取り戻すための極めて重要な課題です。
 そうした中、片山総務大臣は「地域の権限を国から分けてもらうのではなく、地域の方に主体性や中心がある」と発言されたことからも、国の方針決定を待つことなく、自治体が自ら行動し、住民意識や自治体への信頼感の醸成などを含めた取り組みを一層精力的に進めることが大切です。
 県としても、これまで様々な機会をとらえて、地方への権限移譲や税財源の充実確保について国に要望されてきたと承知しておりますが、とりわけ、この度の関西広域連合の設立によって国への事務移譲を要請できる仕組みや環境等が整いつつあります。
 先般、共同通信社と神戸新聞などが実施した全国首長アンケートでも、地域への権限移譲について、全国数値を上回る56%の首長が「期待できる」と回答しておりますが、この理由の一つに、この度設立された関西広域連合への期待があると思っています。
 関西広域連合での取り組みは分権改革の試金石であり大きな期待も寄せられているところですが、その一方で目に見える成果が上がらなければ、県民・府民を大きく失望させるとともに、今回の分権改革に悪い影響を与えかねません。
 そういった、初代関西広域連合長に就任された井戸知事の役割は極めて重いものがあります。
 そこで、関西広域連合が設立した今、真の地域の分権改革を実現するため、関西広域連合長として今後国に対し具体的にどのように働きかけていくのか、さらに関西広域連合の中での兵庫県として立場・役割をどのように位置づけ、兵庫県知事としてどのようにその実現に取り組もうとされるのかについて、知事の所見を伺います。

(2) 地方消費税のあり方について

 第2点目として、地方消費税のあり方についてお伺いします。
 去る6月22日に、閣議決定された「財政運営戦略」においては、国と地方の財政健全化目標などが示されましたが、急激な税収減に直面している地方財政の窮状を踏まえれば、地方税財源の充実強化は喫緊の課題です。
 平成22年度の地方税収は、32.5兆円で、21年度に比べて約3.7兆円の大幅な減収が、また、地方の財源不足は平成25年度には最大10.4兆円に拡大することが見込まれています。
 また、本県でも平成21年度の県税決算額は約5,960億円で、前年度と比較して約1,040億円の減と2年連続前年度を下回り、対前年度比では額・率ともに過去最大の減となりました。
 こうした事態に対応し、地方税財源の充実強化を目指す一環だと思いますが、本年7月の全国知事会では「住民福祉を支える地方消費税の引き上げを含む税制抜本改革の提言」と「住民サービス確保のための地方消費税引き上げに向けた提言」の2つを決定されました。
 しかしながら、その記載内容は「地方消費税は少子高齢化や地域主権改革の進展に伴い増大する地方の役割を踏まえ、今後の行政サービス需要を賄える水準に引き上げ、地方の税財源を充実確保すべき」と2の提案とも同じような抽象的な表現であり、具体的かつ明確な政策の提案には残念ながら至っていないように感じます。
 また、「社会保障をはじめ住民生活に必須の行政サービスを安定的に提供していくためには、その財源として、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方消費税の引き上げを含む税制の抜本改革に取り組むべき」また、「今後の行政サービス需要を賄える水準に引き上げ」ともありますので、増収分の使い道は特に限定していないことになり、何にでも使えるかのような標記は、県民の目から見ても問題ですし、税率引き上げの理由としては弱く感じます。
 地方消費税の見直しを求めるにあっては、地方として、単に増大する社会保障等の行政サービス需要などに対応する安定した財源が必要といった理由のみに止めるのではなく、さらに踏み込んで、県民に対する県政が目指すビジョンと具体的施策をしっかりと説明しながら、地方政府として議論をリードしていかなければなりません。
 そこで、今後の地方消費税の取り扱いにあたって、そのあり方についてどのように考え、県として今後どのような具体的主張を展開されていかれるのかを伺います。

3 がん対策の総合的推進について

(1) ひょうごがん戦略について

 質問の第3は、がん対策の総合的推進についてです。
 第1点目としてひょうごがん戦略についてお伺います。
 昭和56年以降、我が国の死亡原因の第1位を占めるがんは、がん罹患率や死亡率の上昇が続いてまいりました。
 国においては、平成19年4月に「がん対策基本法」が施行され、がん予防及び早期発見の推進、がん医療の均てん化の促進、がん研究の推進などを基本的施策とするがん対策が戦略的に進められてまいりましたが、がんによる死亡は、わが国における死亡者全体の3割を超えて、死亡原因の第1位となっており10年後には2人に1人が、がんで死亡すると予測されているなど、依然として深刻な状況が続いています。
 さらに、現在年間30万人を超えるがん死亡者数は、このまま推移すれば10年後の平成32年には、45万人に加するとの専門家の指摘もあります。
実効性のあるがん対策を推進させるためには、医療技術のさらなる向上はもとより、その地域格差是正を図るとともに、罹患率と治癒率の改善や、がんと診断された時からのがん患者の痛み・苦しみを和らげる緩和ケアの充実や、需要が増している放射線治療の専門医・スタッフの育成など、最適な治療とケアを受けられる体制づくりにより一層取り組むことが重要と考えます。
 本県でもがん対策として、「がんの予防・早期発見の推進」「質の高いがん医療体制の確保」「研究の推進」の3本を柱とする、「第3次ひょうご対がん戦略」として、「がん対策推進計画」を策定し、平成20年度から平成24年度までの5年計画として推進しておられるところですが、がん予防と治療等にあっては、今後とも県民のライフスタイルの変化や、高齢化の進展、県民意識や価値観の多様化等、環境変化に応じた一層迅速かつ的確な対応が要求されてまいります。
 そこで、がんの早期発見と予防に向けた意識啓発、緩和ケアを含めた質の高い医療体制の確保と提供を通じた患者支援といった総合的ながん対策について、これまでの成果と今後の取り組みを伺いたいと思います。

(2) がん患者に対する介護サービスについて

 第2点目として、がん患者に対する介護サービスについてお伺いします。
 先ほど申し上げたように、昨今の飛躍的な医療技術の進歩をもってしても、依然として「がん」は死亡原因の第1位を続ける中、患者とその家族が抱く精神的不安や悩みを和らげて、最期は人間らしい安らかな死を迎えられるような医療ケアを求める声も多いと思われます。
 国においては、従来の医療体系では実施しにくかった末期がん患者等を対象とした緩和ケア・ホスピスの普及を図るため、平成2年度から医療保険制度の中に「緩和ケア病棟入院料」を導入し、さらに平成6年度には、家庭で最期を迎えたいと希望する末期患者に対するケアを充実するため在宅末期医療総合診療料等が新設されました。
 また平成18年には40才以上の末期がん患者にも介護保険が適用されるようになるなど、その対応が図られてまいりました。
 さて、介護保険制度は、介護サービスの提供基盤が急速に整備される中で、在宅サービスを中心に利用者数が大幅に増加するなど、平成12年4月の創設以来、社会全体で高齢者介護を支える仕組みとして定着してきておりますが、寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする状態になった場合などに、介護サービスを受けることができることとされています。
 しかしながら、がん末期を迎えた患者は短期間で病状が悪化し、それに伴い介護度が急速に変化することもあります。
 例えば要介護認定において非該当と判定された状態から1 日にして要介護5に該当するような状態となり、その後数日で亡くなるといったケースもあります。
 ところが、実際にはがん末期と診断されながら「要支援」や「非該当」と判定され、必要な福祉用具の貸与等の介護サービスをスムーズに受けることができない、また、実態にそぐわない要介護度により介護サービスの利用抑制が生じる、さらには認定調査待ちの状態で死亡してしまうといったケースなどもあるようであり、末期がん患者のみ要介護度を上げることは公平性に欠けるという意見はあるものの、冒頭申し上げましたとおり「がん」が死亡原因の第1位を続ける現状下で、介護認定システムの確立は今後検討すべき重要な課題ではないかと考えております。
 こうした実情から、本県としても、がん末期利用者に係る介護保険制度の運用上の課題をあらためてご認識頂くとともに、「医療機関」「福祉機関」「行政」の連携を通じ、末期がんの人々が介護保険制度をより円滑に利用できるようなしくみを検討していく必要があるのではないかと考えますが、介護サービスの提供のあり方について所見を伺います。

4 環日本海諸国との国際経済交流の推進について

 質問の第4は、環日本海諸国との国際経済交流の推進についてです。
 今、国際経済においては、ヒト、モノ、カネ、情報が国境を越えて移動するといったグローバル化が進展しており、それに伴う国際的な都市・地域間の経済競争はますます激しさを増しております。
 その中にあって近年においては特に、環日本海諸国との交流は活発化し、21世紀は、環日本海地域が大きく発展する可能性が期待されています。
 環日本海諸国の経済圏は、日本、朝鮮半島、中国東北地方、ロシア極東地域を合わせて、面積は760万平方キロメートル、人口約3億、GDP約5兆ドルと、世界全体の20%を占める一大経済圏とも言われています。
 地域の経済発展段階のギャップや、朝鮮半島をめぐる緊張の高まりといった課題が続いているものの、日本海側の14府県と環日本海諸国との貿易は輸出入とも日本全体の約15%を占めるとともに、同地域との友好姉妹都市交流数も55組に及んでいる中、中長期的な観点からこの地域を見た場合、世界に残された数少ない経済フロンティアとも言うべき大きな潜在力を秘めた地域と言えます。
 去る11月30日にロシアのメドベージェフ大統領が年次教書演説で触れた、「ロシアと日本を含むアジア太平洋地域との経済関係の強化、日本はロシアの近代化を進めるためのパートナー」といった表明を待つまでも無く、今後とも、環日本海諸国の人口・天然資源、高い技術力と資本力などが密接に結びつくことで、環日本海諸国との経済交流はますます重要視され、活発化していくことが期待されるところです。
 本県でも例えばロシア・ハバロフスク地方や中国広東省・海南省と友好提携を交わして交流を図りながら、進出企業への支援や経済交流に係る派遣事業等を推進する一方、外国・外資系企業の県内立地やビジネススタートに向けた支援や人的交流等を進めているところですが、先月もロシア極東・ハバロフスク地方政府のヴァチェスラフ・シュポルト知事が井戸知事を表敬され、経済交流を進めていくことが合意されたと伺いました。
 また、ロシア極東のウラジオストツクや、神戸港とも密接な関係がある韓国との交流についても深化させる必要もあるのではないかと考えております。
 昨今の緊迫した国際情勢や、円高の影響による経済情勢等は、確かに予断の許さない状況ではありますが、そうした状況を踏まえたうえで、経済発展の著しい環日本海諸国との経済交流の深化に向けた取り組みの必要性について所見を伺いたいと思います。

5 持続可能な経済社会に向けた今後の環境政策について

 質問の第5は、持続可能な経済社会に向けた今後の環境政策についてであります。
 近年、乾燥地域の拡大や氷河の後退、異常気象の頻発、海面の上昇など、地球温暖化の影響によるものと指摘される事象が地球規模で顕在化しています。
 過去100年間で地球の気温は0.74℃上昇し、我が国の平均気温も100年当たり1.1℃の割合で上昇しており、21世紀末には、20世紀末と比較して気温が6.4℃上がりことも予測されているなど、地球温暖化防止に向けた取り組みが喫緊の課題です。
 世界が深刻な地球温暖化問題に直面する中、日本には世界の環境政策をリードしていく責任があり、あわせて、環境立国を目指す我が国が地球温暖化防止に向けた国民的取り組みを、より一層推進する必要があります。
 こうした背景のもと、我が国は、昨年9月22日の国連総会の気候変動サミットにおいて、温室効果ガスの排出量を1990年比で、2020年までに25%削減する中期目標を表明しましたが、その達成に向けては、個々の対処療法に止まらない、企業や国民への抜本的アプローチが必要となっております。
 しかしながらその一方で、アジア諸国をはじめとする発展途上国の状況を顧みるまでもなく、環境対策と生産・消費活動の両立のバランスの課題もこれまで度々指摘されてまいりました。
 近年の新興国を中心とした経済成長とアフリカなどの途上国を中心とする急激な人口増加と経済活動の活発化が、地球的規模での環境負荷の増大を招いてきたといった事案は、環境と経済活動が密接な関係を有することに対する証左といえます。
 経済活動が活発になり好景気になれば温暖化ガスは増大し、経済活動が鈍化し不景気になれば削減されるということですから、私たちが絶えず生活レベルの向上を目指していることから考えても相反する問題で、その解決は大変難しい問題であります。
 更に国内では、環境対策として、エネルギー効率化や省エネなどがよく挙げられますが、それだけではやはり十分とはいえません。人々のCO2を初めとする温暖化ガスの排出削減に向けた意識が高まった結果として、環境に優しい製品が作られても、その製品を大量に生産し、消費すれば、大量の資源とエネルギーを消費することとなり、大気中の温暖化ガス濃度の増大とそれに伴う環境悪化を促進することにつながりかねません。
 環境問題の解決に向けては、「いかに事業と温暖化ガスの排出削減を両立させ」、「最終エネルギーの消費をいかに押さえたか」が大切であり、そのことを県民にご理解を頂いていかなければなりません。
 本県でもこれまで、“環境適合型社会”の実現をめざし、環境の保全と創造、環境学習・教育施策の総合調整等を行ってきたところであり、現在、次期地球温暖化防止推進計画の策定を進められているところでありますが、経済活動の持続・拡大の中で蓄積されてきた環境負荷との関係における、予防的観点から、今後の県の環境政策のあり方をお伺いします。

6 関西国際空港に対する認識について

 質問の第6は、関西国際空港に対する認識についてです。
 関西3空港問題ではこれまでも「関西3空港の有効活用のあり方」や、「伊丹空港の廃止」、「関西国際空港こそ無駄ではないか」、「神戸空港も廃港すべき」などといった様々な立場・視点からの議論が新聞紙上をにぎわしてまいりました。
 関西広域連合を設立し、オール関西としてしっかりと一枚岩になって、関西の地盤沈下を食い止めなければならないこの時期に、空港問題でこのように意見が分かれてきたことは余りにも悲しい限りです。
 関西国際空港のハブ空港化は国の基本方針であることは皆様もご承知の通りであります。
 そういった中、明確な跡地利用の計画すらないままに利便性の高い伊丹空港廃港を前提とした議論はやや乱暴であるとは思っておりますが、今後とも都市部の内陸地にある空港が抱える問題がある伊丹空港が廃港論から無関係でいることは難しいのではないかと思っております。
 現在NEMIC(国家危機管理国際都市)構想も本格的な議論が始まったところではありますが、伊丹空港の場所に国がしっかりと責任を持ったプロジェクトを推進すると決定したときに、伊丹空港を存続することが北大阪地域の浮上につながる最善策なのかといったことなどについて、いずれの可能性も排除することなく真摯な姿勢を持って議論していくことが必要であると考えております。
 さて、その関西国際空港でありますが、関西空港会社はその空港島建設に当たっては約1兆円を超える有利子負債を空港会社に負わせていますが、その債務は関西国際空港株式会社の収入の12倍以上に及んでおり世界中を見渡してもこのような空港会社は存在しないではないかと考えております。
 羽田空港では過日第4滑走路の供用を開始しましたが、約1兆円の借入は社会資本整備事業特別会計空港整備勘定から捻出しております。その一方で、平成21年度決算における関空会社の負債は年間で約210億円の利払いをさせる一方で営業利益は約130億円であり、関空会社は大きな負担を強いられながら運営しているのが現状であります。
 知事も関空のハブ機能強化を急ピッチですすめることなどを国に要請しておられますが、関空の国際競争力を高めるには、巨額債務を解消し、着陸料の引き下げをする等の対策が不可欠であるとともに、土地の国有化や債務の抜本的な切り離し、また、債務の株式化などといった取り組みも検討していくことが必要です。
 かつて、伊丹空港から関空に半ば強制的に北海道や沖縄の長距離国内路線を持ってきた際に、伊丹空港と比較して需要がついてこずに失敗に終わったこともありましたが、関空へのアクセス手段やLCCの誘致など、今後ともオール関西で取り組むべき課題は山積みしています。
 関西における空港のあり方は、騒音課題をはじめ、各地域での過去から積み重ねられてきた様々な経緯や事情が折り重なって、現在の状況に陥っているということを再認識したうえで、取り組んでいかなければならない問題であり、そのことを忘れてしまえば、東京をはじめとする他地域から、「関西は各地域のエゴばかりでまとまらない」などと指弾されることにもなりかねません。
 関西3空港問題では伊丹空港の存廃ばかりがとりあげられる傾向がありますが、そのことは問題の本質ではありません。
 過日、関西空港と伊丹空港を一体運営する新会社を設立する経営統合案が発表れました。
 これはこれで一つの前進ではありますが、伊丹空港の利益だけでは関西空港会社の負債を根本的に解決することにはなりません。
 関西におけるこれまでの様々な経緯や問題を含んだ関西3空港問題に関しては、まずは関西国際空港のハブ化ということを念頭においた議論が大切であると考えますが、関西国際空港に対する知事の認識をお伺いします。

7 特別支援教育の推進について

 質問の第7は、特別支援教育の推進についてです。
 近年、子どもたちの障害が重度・重複化する傾向にある中、教育はもとより福祉・医療・労働など関係機関が密接に連携した適切な対応が求められています。
 平成19年度から「特別支援教育」の制度が開始され、従来の対象である障害だけでなく、児童生徒数の約6%存在しているとされる、学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症を含め、特別な支援を必要とする幼児児童生徒の自立や社会参加に向け、一人一人の教育的ニーズを把握して、その持てる力を高めるとともに、生活や学習上の困難を改善、または克服するための適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うことが位置づけられました。
 しかしながら、この特別支援教育を取り巻く状況に関しては、特別支援学校等に在籍する障害のある幼児児童生徒の増加や、障害の多様化が進行している一方、これに対応すべき、教員の専門性に課題が見られることから、極めて厳しい環境にあるといわざるを得ません。
 今後とも、充実した特別支援教育を推進するためには、「特別支援教育制度」創設の理念を踏まえた取り組みをさらに推進しつつ、様々な障害に対応できる支援体制づくりや、学校間や関係機関との連携、校内連携、教職員の専門性の向上などの取り組みを一層強化してくことが大切であります。
 本県では、平成19年に「特別支援教育推進計画」を5カ年計画として策定し、県立特別支援学校の整備推進やLD、ADHD等の理解と支援、後期中等教育の充実、教職員の専門性の向上など、様々な取り組みを精力的に行ってこられましたが、その一方で、平成18年度より全国に先駆けて取り組むとともに、市町からも高い評価を得てきた、教員免許を所持する者による「スクールアシスタント配置事業」については、平成22年度をもって、県補助事業が廃止され、特別支援教育支援員を配置する市町単独事業へと、移行される運びと伺っています。
 子どもたちの障害の種類や程度に応じて、一人一人の個性を尊重するとともに、個人の才能を伸長して、自立に向けた成長を促すためには、障害のある児童生徒をとりまくすべての人々が特別支援教育への理解を深め、一層きめ細かく適切な支援を強化していく努力が欠かせません。
 そこで、学校現場の厳しい教育環境を十分に踏まえたうえで、特別支援教育推進計画に係る取り組みを今後どのように促進していかれるのか、さらに、厳しい財政状況にある市町における特別支援教育推進員配置の継続実施に向け、どのように市町へ助言・指導を含む支援を行われるのかについて所見を伺いたいと思います。

8 若年者の薬物乱用の防止について

 質問の第8は、若年者の薬物乱用の防止についてです。
 全国的に薬物に関する事件が相次いで発生し、大きな社会問題となっておりますが、全国の薬物事犯の検挙状況は、覚せい剤・シンナー等有機溶剤事犯が減少傾向にある一方で、大麻事犯は増加を示しているなど極めて深刻な状況にあります。
 薬物乱用の背景としては、薬物に対する規範の低下から罪の意識が低くなり安易に手を出すケースや、インターネットの普及により簡単に情報が入手しやすい環境にあるといった事情が大きいようであり、大学生による大麻の栽培や所持売買事件、大相撲の現役力士による大麻所持や使用、芸能界における大麻・覚せい剤の使用による事件など、若年層や主婦層にまで急速に拡大している報道は跡を絶ちません。
 警察庁によると、昨年、大麻所持などにより摘発された約3,000人のうち、未成年と20歳代は約6割を占めていたとされています。
 さらに、去る10月21日に、関関同立大学が、今春に入学した新入生を対象に行った薬物に関する意識調査で、「大麻が手に入る」と答えた学生の割合は3分の2にのぼり、昨年の新入生の3分の1から倍増していたという状況が判明するなど、薬物の誘惑が年々身近に迫っている実態が浮き彫りになりました。
 言うまでもなく、薬物の乱用は、使用者の身体や精神、生命に危害を及ぼすばかりでなく、家族崩壊や更なる事件への発展、青少年の健全育成への阻害など、社会の秩序を乱す、許されない行為であります。
 警察庁では平成20年8月に、「第三次薬物乱用防止五か年戦略」を策定しましたが、その中で、「薬物乱用の根絶を図るための戦略目標の一つとして、再乱用防止のための総合的な対策を行政機関,民間団体が連携して実施する必要があるとの認識のもと、薬物乱用者に対する治療・社会復帰の支援及びその家族への支援の充実強化の推進を掲げて取り組むべき」と述べておられます。
 加えて、去る11月19日には、インターネットを利用した薬物密売の根絶や、再発防止対策などを盛り込んだ「薬物対策重点強化プラン」を策定し、全国の警察本部に通達、取り締まりの強化や関係機関との連携を指示したとのことです。
 本県にあっても、これまで薬物の実態解明の徹底及び、薬物を許さない社会形成の推進を基本方針とした取り締まりや薬物押収の活動を推進してこられたところですが、こうした取り締まりの実績と効果をお伺いするとともに、若年者を薬物から守り、健全な社会を実現するため、検挙と防止の両方の視点から、今後の実効性ある対策強化についてお伺いします。