第312回2月定例会 予算特別委員会質問(教育委員会)
2012年3月12日(月)
産業労働部に引き続き、人的多様性、ダイバーシティの観点から質問をする。
1 県立阪神昆陽高等学校、県立阪神昆陽特別支援学校について
(1) 両校が目指す共に学ぶ教育について
旧県立武庫荘高校跡地(伊丹市)に県立阪神昆陽高等学校と県立阪神昆陽特別支援学校が4月から開校する
阪神昆陽高等学校は、単位制・多部制の学校で、多様な生徒のニーズに対応
阪神昆陽特別支援学校は、障害のある生徒の社会的・職業的自立を支援するための職業教育に重点
同じ敷地内に設置され、学校行事を一緒に開催したり、交流スペースを設けるなど、「交流及び共同学習」を通じて、「社会におけるノーマライゼーションの理念を進展するための礎」となる学校を目指すもの
全国でも例を見ない共生社会の実現へ向けた一歩へのチャレンジでもあり、期待と不安がある
両校での取り組みは、年に数回、「特別支援学校と県立高校が交流をする」ということではなく、日常から互いが助け合い、理解し合って、共に学び、共に生きるというノーマライゼーションを目指すものだと理解しているが、先例のないことでもあり、多難を極めるのでは?と感じている
★「社会におけるノーマライゼーションの理念を進展の礎」を築くために、具体的にどのような「交流及び共同学習」を行うのか、またどのような生徒を育みたいのかを含め、両校が目指すビジョンを明確に示してほしい。
<コメントor再質問>
・縦軸に「受け入れる」「受け入れない」、横軸に「変わる」「変わらない」とした場合、
・自分も相手も変わらないで、互いを受け入れないのは、排除
・自分は変わらないが相手が変わり、互いを受け入れないのは、同化
・互いに変わらないが、互いを受け入れるのは、棲み分け
・互いに変わり、互いを受け入れるのは、共生
・県立阪神昆陽高等学校と県立阪神昆陽特別支援学校が目指すところは、共生であることを確認したい
(2) 両校の運営体制と教員の支援について
同じ敷地内に、学校の種類の異なる県立学校が設置され、しかもノーマライゼーションの理念を進展するための礎となる学校を目指すと言うことで、その実現のためには、両校の適切な情報共有や連携が不可欠
全く新しいことにチャレンジするのだから、開校前には想定していなかったようなことも起こるかもしれないし、確固たる姿勢を保ちながらも、柔軟に物事に対応できる体制が求められる
生徒にとっては、学校生活のやり直しはないわけで、出来たばかりの新しいスタイルの学校であっても、生徒にとって本当に必要な教育を提供しなければならない
現場の先生方においては、多様な生徒のニーズに応えながら両校の生徒の交流も深める工夫をし続けたり、トラブルが起こったときの対応もしなければならず、非常に忙しく、大変な現場になると思われる
平成24年度予算案によれば、研究指定校での実践研究や、指導者研修などには、100万円程度の予算が付いているが、取り立てて、阪神昆陽高等学校、特別支援学校の教員を支援するような予算は見当たらない
先生方も新しい学校の運営や現場で起こる事に悩むこともあるだろうし、現場に活かせるヒントを得たり、誰かに相談できるような機会が必要では?と思う。
★両校の校長は豊かな経験を持った方が兼務されると聞いているが、その他の学校づくりのための運営体制や、現場の先生を支援したり応援するような場の創出についての考えを伺う。
<コメントor再質問>
・生徒がいきいきと学校生活を送る、素晴らしい学校を期待している訳だが、他校では起こらないような困り事も起こってくるだろう
・現場の先生方の柔軟性や高度な指導力、経験や専門性が問われる
・教職員人事は、まだ先の話ではあるが、適材適所の人事がされることをお願い
・また、学校内だけで進めようとせず、現場の先生が有識者の意見を取り入れたり、「交流及び共同学習」の実践のヒントを得るような、機会を是非とも設けてほしい
・これまでにない新しい学校を作り上げていくのだから、固定観念にとらわれずに、どんどんトライする、先生にとっても開かれた学校へ。
(3) 地域との共生について
この場所は、住宅が近いために、県立武庫荘高校の時から、登下校時のマナーなどの注意が必要だった。
とりわけ、単位制・多部制の高校なので、夜遅くに帰路につく生徒も多く、バイクや自転車で通学する生徒もいるはず
遅い時間の話し声や騒音などで、近隣が「いやだな」と思ってしまったら、非常に残念なこと
様々な背景を抱えた子どもたちが通う高校だけに、地域の見守りの眼、暖かい目があってこそ、生徒も伸びやかに過ごすことが出来る
★登下校時に想定できる問題について、どのような対応を予定しているか。また、地域の理解や交流という点から、どのような地域との接点の持ち方を考えているか。
<コメント>
・市立伊丹高校の定時制が、3年後に統合される
・市立伊丹高校はユニークな学校で、定時制も部活動が盛んだったり、学校全体に「地域に積極的に出て行く」雰囲気があり、市のイベントに参画したり、吹奏楽部が様々な施設で演奏をしたり、正に地域の学校として愛されている
・その校風は、定時制に通う生徒を育む一部である
・阪神昆陽高等学校、特別支援学校は、伊丹市に設置されるのだから、伊丹市とも積極的に連携を図りながら、
・市のイベントの中で、地域との交流を図ったり、例えば、生徒の作品などを地域で展示するような機会を作ってみるなど、地域との共生も積極的に進めてほしい
・県立だから県でガンバル!という事ではなく、地域を早い時点で巻き込んでほしい
2 子ども多文化共生教育支援事業について
ひょうご人権ジャーナルに掲載されていたチラシにこう書かれていた。
「勉強したい、この国で。私は、日本で中学生になった。学校に行くのは、しんどい。何を言っているのか、わからない。しゃべりたいけど、しゃべれない。勉強も好きでなくなった。」
NPOが行っている、経済的な理由で高校進学を断念する外国人の子どものための奨学金を案内するチラシの一説だが、子どもの心情をストレートに表していると思う。
(1) 子ども多文化共生センターの課題と必要性について
子ども多文化共生センターは、2003年10月に県立国際高等学校内に設置され、日本語指導が必要な外国人児童生徒に、授業などの通訳をする子ども多文化共生サポーターの派遣の調整をしたり、
教育現場からの相談に応じたり、外国語の書籍や衣装などを貸し出すなど、学校現場の支援をしている
文部科学省の調査によると、平成22年9月1日現在の県内の日本語指導が必要な外国人児童生徒の数は739人248校となっている。また、平成23年度においては802人、276校にのぼっている
平成22年度の子ども多文化共生サポーターの派遣実績としては、134名が326校の支援を行っている。
平成22年度の教育相談は、413件で、最も多い相談内容は進路指導について
相談者は、サポーターからの問い合わせが122件と最も多いが、次いで、教育関係者からの相談が110件とほぼ並んでいる状態。
子ども支援だけではなく、学校支援の側面も強いと感じている
センター自体は、県立国際高等学校内の一角にひっそりと小さなスペースで運営されていた
★日本語指導が必要な外国人児童生徒も増加傾向、多様化している中で、子ども多文化共生センターの課題と必要性について、ご所見を伺う。
(2) 子ども多文化共生サポーター派遣事業の課題と今後の事業継続について
派遣基準は、在日歴や外国人児童生徒の状況に応じて、週1回~週3回までの派遣がある。
従来は、在日歴が3年未満までしか派遣できなかったところを、現在は、国の緊急雇用対策の財源を活用して、3年以上たっても日本語指導が必要な児童生徒に対して派遣を行っている。
いずれにしても、毎日、毎時間、通訳をしてくれるサポーターが入ってくれる訳ではなく、サポーターが来ない時の、外国人児童生徒の心情を思えば、どれほど心細いかと思う
日本語指導が必要な外国人児童生徒は、親の仕事や結婚など、自分で選んで来日している訳ではないことが多い。
子どもの権利条約第28条で保障された子どもの教育の権利を、国籍にかかわらず守ろうとする取り組みであり、現実の世界の中で悲しい気持ちになりそうな子どもに手をさしのべる取り組みであり、将来の人材を育てる事業だ。
近隣府県の様子を見てみると、日本語指導が必要な外国人児童生徒の多い順に、大阪府、三重県、滋賀県、兵庫県、広島県。三重県、滋賀県は、特定言語の集住傾向があるが、兵庫県の場合は多言語化・散在化という傾向にあり、様々な言語ニーズがある。
実際に、平成22年度における子ども多文化共生サポーターの派遣実績では、中国語、フィリピノ語、ポルトガル語をはじめ、モンゴル語やダリ語など24言語にも及んでおり、人材の確保・派遣なども苦心しておられるのではないか?と思う。
★多種多様な言語ニーズがある上に、ただ教室での通訳をすればよいというだけではなく、子どもへの対応も求められてくるわけだが、子ども多文化共生サポーター派遣事業における課題と今後の事業継続のあり方について、ご所見を伺う
<最終のコメント>
□人にまつわる、子どもの教育にまつわる事業である。
□心配をしているのは、平成24年度当初予算1億3800万3000円のうち、4852万9000円が緊急雇用を財源としていることである。
□子どもの教育は保障していかなければならないから、事業がとぎれることの無いように
□子ども多文化共生センターの支援を受けて育った子どもたちが、今度は、自分よりも小さな子どもたちの支援が出来るような、ぐるぐる回る仕組みを作ってほしい