H27予算特別委員会部局審査(健康福祉・掛水委員)
1 生活困窮者への支援について
認知症・障碍者・介護疲れ・家庭内暴力等多数の要因が絡まって、お金もなく、仕事もなく周囲から孤立している人を自立に導くことは大変です。生活保護に頼らず働いて自立できるよう生活困窮者支援制度が4月から本格実施となります。県では、先行して、モデル事業を実施されましたが、課題解消するための仕組みつくりは進んでいるでしょうか?
県では、平成27年度予算案で生活困窮者への支援を拡大することを打ち出し、新たに任意事業の「就労準備支援事業」1,146万円などを計上されています。同事業は、一般就労に必要な知識・技能を習得するための訓練等を実施するもので、任意となっていますが、今後の生き方にも関わる重要な事業と考えます。
一般社団法人・協同総合研究所がまとめた「社会的事業体が取り組む就労準備事業から持続性のある中間的就労創出に向けた制度・支援に関する調査研究」によると、まず、①さまざまな困難を抱えている被支援者に対しては、伴走型の相談事業を合わせて実施することが望まれる、②中間就労は社会的企業が担うか、NPOとの連携実施が望ましい、③一般就労という出口についても行きつかない被支援者には、中間的就労は、就労訓練型と合わせて継続就労型が必要となる」とされ、先進事例として、豊中市・釧路市・京丹後市の報告があった。豊中市の事例は、多くの自治体が福祉部門中心であるのに対して、労働部門(市民協働部雇用労働課)が中心となっていることです。全庁的連携を容易にし、各分野の就労支援を支える共通の業務となっています。生活困窮者自立支援の他、分野ごと・対象ごとに進む自立就労支援をつなぎ、それぞれの良さを発揮できるように、地域や自治体をベースにした「総合的な就労支援」「地域政策としての就労支援」のための仕組みが欠かせないと記されています。
この調査研究では、生活者自立支援制度は、新しい課題として提起されており、自治体の雇用・就労支援策の見直し・体系化のアプローチともなると考えます。その観点では、この制度の推進は産業労働部との連携が鍵になると考えます。
また、今後の生活困窮者対策に向けての課題として、現状の若年層の雇用状況から考えると、近い将来の無年金者の増加、すなわち高齢者の生活困窮者のさらなる増加が危惧されます。4月から実施の生活困窮者自立支援制度が、将来の無年金者の問題に対応できる制度となっているのか気になるところです。
そこで、生活困窮者自立支援制度の4月からの本格実施に当たって、産業労働部初めとした他部局との連携を含め、どのように取り組んでいこうと考えているか伺います。
【答 弁】
2 男女共同参画社会づくり条例の実効性について
企画県民部の審査では、男女共同参画の視点での長期ビジョンの改訂をと述べてきましたが、政治・経済・雇用分野での女性の進出と平等の実現は著しく遅れています。特に、DVや性被害など女性の人権侵害の事象が深刻さを増しています。また、多くの女性は、非正規雇用を余儀なくされ、女性の貧困が進んでいます。
今年は、北京世界女性会議が開催されてから20年の節目をむかえます。国の「男女共同参画第3次基本計画」も5年目の最終年をむかえ、男性の働き方に言及するなど、新しい切り口がありました。兵庫県では、「新ひょうご男女共同参画プラン21」の改定をされますが、条例の実効性を担保するため、どのような点に重きを置いて改訂されるのかお尋ねします。
【答 弁】
3 DV対策について
2014年1月改正DV防止法が施行され、裁判所が加害者に接近禁止命令を出せる範囲が拡大されました。DVの認知件数も増加しています。
兵庫県においても基本計画を改定し、推進方策として6つの目標を決定しました。①NPO法人との協働による大学や高校でのデートDV防止出前講座等DV防止に向けた啓発・教育の推進、②市町のDV対策の促進、③相談体制の充実、④緊急時の安全確保、⑤自立支援の推進、⑥専門人材の育成と連携強化です。さらに、被害者の一時保護を受け入れる施設の確保、民間支援団体が運営するシェルターへの支援・連携強化が記されています。
また、2013年10月改正ストーカー規制法が施行され、自治体に公的な相談所の活用や民間避難施設などへの支援を通じ、被害者救済に努めるよう求めました。DV・ストーカー被害者が安全に生きることができる施策推進が急がれます。今ここで、売春防止法に基づき設置された婦人相談所に対する要望が相次いでいます。相談が増加する中、まず、駆け込むのが、婦人相談所である女性家庭センターという公の施設です。しかし、原則として、福祉事務所か警察を通しての相談でないと受け入れられない、また、一時避難も2週間程度、共同生活・外出制限・中学生以上の男子の同伴禁止など制約が多く、被害者が敬遠するケースもあると聞きます。一方民間シェルターは、継続した対応ができ、アパート一室を利用しているため長期滞在でき、被害者に避難先を紹介したり、加害者への対処法のアドバイス、働くことも含めて継続的に支えています。公的な責任で仕事をする女性家庭センターと継続した支援が可能な民間シェルターは双方に長所があります。
兵庫県の女性家庭センターは、平成26年度運営費の最終予算額は1億3,628万9,000円です。女性家庭センターは「売春防止法」に基づいて設置された機関ですが、DV防止法制定により配偶者暴力相談支援センターの位置づけも加わり、DV被害者の相談・一時保護を行っています。DV被害者にとって緊急一時保護できる機関・施設があることは、生きることを示すものです。しかし、あくまで緊急時ですので、今後の生活を考えた時、保護期間が短く、また、生活のための住居や就労を考えた時そのサポートも充分でないケースもあります。兵庫県においてはNPO法人が被害者に寄り添い、生活をサポートしていると聞きます。しかし、十分な財政援助があるわけではないので、このままの状態では、消滅しかねません。平成27年度当初予算には、売春防止法に基づき設置されている婦人保護施設2か所への入所委託費として計1億2,025万円が計上されています。婦人保護施設も調査に行きましたが、入所者にとって使い勝手が悪い状態であったと聞いています。現在は、DV被害者も多く入所していると聞きますが、入所委託費の事務費は定員に基づき支払われているため、入所者数が減っても、それ程変動していないようです。一方で、民間シェルター支援事業は96万円の家賃補助です。DV被害者の実質支援を考えたら、このままでいいとは思えません。もちろん女性家庭センターの活動も重要ですが、有効な予算の使い方を考えることも必要です。
そこで、DV対策については、民間シェルター等への支援を充実させるなど予算配分の見直しを検討するとともに、民間シェルター等の施設の運営に当たっては、NPO法人との連携のあり方を見直し、(企画県民部審査でも提案したような、ボランティアとは異なり、しっかりと自立し、行政の補完ではなく、課題解決に向けた対等パートナーとなる)新しい公共としてのNPO法人と協働できる仕組みを作ることが急務ではないかと考えますが、所見を伺います。
【答 弁】
4 子どもの性被害を防ぎ子どもを守る取組みについて
昨年7月に施行された「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が一部改正され、単純所持の罰則が新設され、児童の保護に関する規定も整備されました。
厚生労働省による全国の児童相談所への調査では、全体の虐待対応件数は過去15年間(H11とH25の比較)で約6倍に増加しましたが、性的虐待は2.7倍の増加にとどまっています。これは、性的虐待が少ないのではなくて隠されているためと、子どもに「言わないで」と頼まれたという理由や被害を受けた責任の一端は自分にあるのではというバイアスが通告を阻んでいると考えられます。また、性的虐待の定義が「親権者・監護責任者」によるものと限られていることも要因と考えられます。
児童虐待に関する通告・相談があれば、児童相談所はまず子どもの安全確保を行いますが、多くの場合、性的虐待の被害は思春期以降まで隠されること、その影響は成人になっても続くことから、性暴力被害者支援センターの重要性を実感します。兵庫県内では、尼崎市内で立ち上げていますが、1カ所で県全域をカバーすることは難しいです。しかし、必要な施設と考えます。被害児童に対して早期に介入、ケアできれば、その後の悪影響は少ないという話を臨床医に聞きました。
そこで、県では、こども家庭センターで子どもに性的虐待が考えられるケースを見つけた場合、どのように対応されているのか、課題も含めてお聞きします。
【答 弁】
5 ピアサポートの拡大と充実について
心を病んだ人や認知症等が入院する精神科病院、全国では32万人を超す人が入院していて、3人に1人は5年以上の長期入院です。兵庫県の入院者数は約1万1千人(平成24年)と聞いていいます。その精神疾患患者の方々の地域社会への移行のために活躍しているのが、ピアサポーターのみなさんです。県議会の超党派の議員連盟「精神保健研究会」で平成23年度に淡路地区を調査した時、新淡路病院の取り組みを詳しく聞くことができました。また、今年度調査をした伊丹地区では、ピアサポーターのみなさんと交流する機会がありました。
ピアサポーターの皆さんの活動がより拡大し、充実していくことが求められますが、一方で、ピアサポーターの皆さんの生活・仕事が大きな課題となっています。ある雑誌に掲載されていたデータによると、生活困窮者の現況は生活保護受給者を除く低所得者が85%でほとんどですが、そのうちニート・ひきこもり・母子家庭と精神疾患を抱える者が40%台という状況となっていました。単に、病院からの社会への移行だけでなく、後から課題となる、地域社会で生きていくための方策も合わせて進めなくてはならないと考えます。
富山型福祉について、企画県民部で言及しましたが、私は何度も訪問しているNPO法人「にぎやか」では、全国からの訪問調査に対して説明をしている方達は、ピアサポートの有償ボランティアです。説明する回数が多くなってくると、自分なりに工夫して楽しく仕事をしているとの主催者の言葉です。
そこで、ピアサポートの拡大と充実に向けて、ピアサポーターのみなさんへの研修の充実について伺うとともに、ピアサポーターのみなさんを含めた精神障害者の方々が地域社会で生きていくための生活・就労についてのお考えをお聞きします。