議会の動き

◆15年2月定例会 代表・一般質問

概要  代表・一般質問  議案に対する態度と考え方  討論

代表質問  石井 秀武議員

一般質問  山本 千恵議員・上野 英一議員 岸口 実議員・黒田 一美議員
質疑    前田 ともき議員

代表質問

(石井 秀武 議員)[発言方式:一括]

1 平成27年度当初予算に対する基本的認識について
2 ポスト震災20年における兵庫の将来像について
3 県民の健康増進等による元気な兵庫の実現について
(1)健康寿命の延伸について
(2)スポーツの振興について
4 活力と元気あふれる地域経済の実現について
5 県と神戸市の連携による開港150年に向けた神戸港の観光振興について
6 地域や産地の自立を促す力強い農林水産行政の展開について
7 交通事故対策の推進について

質問全文

第326回 2月定例県議会 代表質問

質問日 : 平成27年2月20日(金)

質問者 : 石井 秀武 幹事長

1 平成27年度当初予算に対する基本的認識について

本県では、時代の変化に対応し、県民の要請に的確に応え、持続可能な兵庫の基盤を作るため、平成20年10月に制定した「行財政構造改革の推進に関する条例」に基づき、行財政構造改革の取り組みを進めています。
今年度は、平成25年度に実施した3年毎の総点検を踏まえた第3次行革プランの初年度にあたり、今年度から平成30年度までの5年間で、トータルでは1,655億円、毎年続くことが見込まれる収支不足を、平成30年度には収支均衡させ、持続可能な行政構造を確立するために、来年度に向けても同プランを着実に実行していくことが求められます。

そういう状況の中で検討された平成27年度当初予算案であるので、依然として厳しい財政状況が続くことは明らかですが、そういう中にあっても、我が会派より知事への当初予算編成に対する申し入れ等の場において繰り返し主張している、「限られた財源の中、優先順位を見極め、より徹底した「選択と集中」を図ること」、「県民が将来に渡り希望を持つことができる社会の実現に向けた予算編成とすること」などについては、予算編成に当たっては不可欠な視点としてあることは言うまでもありません。

一方で、我が国においては、人口急減・超高齢化、大都市と地方との格差が顕在化する中で、昨年末には地方創生関連2法案が成立し、地方の再生に国を挙げて取り組もうとしており、今定例会でも、「兵庫県地域創生条例」案が提案されますとともに、知事の提案説明では、地域創生について「安全の確保と並んで取り組むべき最優先課題」との発言もあり、地域の元気が回復する予算となることを大いに期待するところであります。

そして、また、平成27年度は、先月17日の震災20年を経て、ポスト震災20年のスタートとなる年となります。県民のみならず、全国から兵庫県が安全安心社会の実現に向け、どのような予算案を打ち出すのか注目していると思います。

昨年2月の我が会派の代表質問に対し、知事は、平成26年度予算を「安全元気ふるさと兵庫スタート予算」と位置づけたと答弁されました。これまで述べた観点に対する見解も含め、平成27年度当初予算案に込めた知事の思い、メッセージと合わせて、基本的な認識について伺います。

2 ポスト震災20年における兵庫の将来像について

ポスト震災20年のスタートとなる平成27年度の兵庫の姿を、当初予算案に込めた知事の思いとして確認しましたが、続いて震災20年を経て、知事が描く兵庫の将来像について伺います。

昨年の2月定例会での代表質問において、「震災の教訓を生かす兵庫づくり」について伺いました。それ以降の1年間で、震災20年という節目を経過するとともに、人口減少問題などの様々な社会問題が顕在化するなど、兵庫の将来を考える上での社会情勢が大きく変化したと考えます。そういう観点から、「ポスト震災20年における兵庫の将来像」について伺います。

先月17日、未曾有の被害を持たらした阪神・淡路大震災の発生から20年を迎え、天皇・皇后両陛下のご臨席のもと震災20年追悼式典が行われました。ただ、そこで残念に感じたのは、昨年、不慮の交通事故で亡くなられた貝原前知事の出席が叶わなかったことです。そして、もう一人、イスラム諸国訪問のため安倍首相の出席がなかったことです。震災20年追悼式典以外にも、今年度は震災20周年ということで、昨日も私の地元では「震災20年事業 西区防災シンポジューム」が開催され、災害時の備えについて、地域での活動が報告されるなど、様々な周年記念事業が県下各地で年間通じて開催され、いろんな形で震災後20年間の復興に向けた取り組みの総括がなされたものと考えます。特に、この20年間で、一般社会の中に「ボランティア」や「NPO」、「こころのケア」などという言葉が一般的となるとともに、県政推進の理念としての「参画と協働」が県政各分野で定着するなど、震災復興の過程の中で生まれた新しい取り組みが県政全般や一般社会の中に定着・浸透していきました。この20年間の県政は、まさに震災復興とともに歩んできたと言っても過言ではないと考えます。

一方、現在の我が国は、少子高齢化の進展や人口減少、大都市圏と地域との格差の拡大などの構造的な課題に直面しており、本県においても同様の課題を有しています。そんな中、このような課題に立ち向かい、力強く克服していくため、先程も触れましたが、本県では、地域の個性と特色を最大限活かしながら、安全で元気なふるさと兵庫を実現することを目的とした「兵庫県地域創生条例」案が今定例会に提案されました。

同条例案では、将来にわたって活力を維持することのできる地域モデルを確立し、また、県民及び市町等とともに我が国の将来を兵庫から切り拓いていく気概を持って地域創生に取り組むとしており、知事の並々ならぬ決意がうかがえます。このような全国共通の大きな課題に対し、全国に先駆けて取り組み、兵庫の地域創生手法を全国に発信していくことになることからも、本県の特色でもある震災復興の過程から生まれた県政各分野での様々の手法を結集し、ポスト震災20年における兵庫の将来像を見据えて取り組んでいかなくてはならないと考えます。

特に、今月5日に総務省が公表した平成26年の人口移動報告によると、全国40道府県で転出超過となっており、さらに兵庫県は7,092人の転出超過、北海道、静岡県に次いで全国で3番目に転出が転入より多かったことが判明しました。加えて、本県がこのように人口転出において全国上位となるということは、これまで郡部の課題として捉えられていた人口減少問題について、東京・名古屋圏を除く都市圏、すなわち本県では神戸・阪神地域からの人口転出が顕在化してきているということであり、その点での対策の必要性も指摘されています。いずれにしても、今回提案された兵庫県地域創生条例案では、地域創生のための人口対策にも取り組むとしていますが、人口流出が極めて顕著なことが判明した本県においては、危機感を持った対策が求められます。

そこで、人口減少や大都市圏と地域との格差の拡大などの様々な課題が顕在化する中、ポスト阪神淡路20年における県政の今後の展開について、人口減少対策への対応を含め、知事はどのような兵庫の将来像を描き、取り組みを進めようとしているのか伺います。

3 県民の健康増進等による元気な兵庫の実現について

(1)健康寿命の延伸について

元気な兵庫を実現するには、県民の健康的な元気を確保・維持することが不可欠であり、より多くの県民が健康で充実した人生を送れるよう取り組むことが、県政の最重要課題であると言えます。そういう意味で、健康上の問題がなく日常生活を普通に送れる状態、すなわち健康寿命の延伸を具体的な目標として、様々な健康増進対策に取り組むことが重要であることは言うまでもありません。

厚生労働省が昨年10月1日に発表した平成25年の健康寿命は、男性が71.19歳、女性は74.21歳となっており、前回調査の平成22年からそれぞれ0.78歳、0.59歳伸びました。また、健康寿命の延伸は、医療費や介護費など社会保障費の増大を抑制し、持続可能な財政運営を可能とする観点から重要であり、そういう意味では「平均寿命と健康寿命の差」、すなわち「健康上問題があって、日常生活を普通に送れていない期間」を短くしていくことも具体的な指標として重要と考えます。

そういう中、本県においては、平成23年に「健康づくり推進条例」を制定し、翌年には条例に基づく基本計画として「兵庫県健康づくり推進プラン」を策定、さらにその翌年には同プランの基づく具体の実施計画となる「兵庫県健康づくり推進実施計画」を策定し、県民の健康づくりの推進を総合的に進め、特に、その中で推進における数値目標の1番目に健康寿命の延伸を上げ、具体的には平成29年度までの健康寿命の1年延伸を掲げて取り組んでいる点は大いに評価できると考えます。

さらに、県では、このような目標達成のため、食生活、運動、休養等の健康な生活習慣づくりを、健康づくり推進条例第2条で県民の責務として規定しています。私は、その中でも、適度な運動を習慣的に続けることが健康の維持には極めて重要であり、適度な運動により、規則正しく健全な食欲が生まれ、適度な疲労感から睡眠等の充実した休養につながると考えます。

一方で、健康維持には運動が必要と頭や理屈でわかっていても、なかなかできないものであります。徳島県では、県民が適度な運動に取り組むきっかけへの工夫として、徳島大学等の協力を得て、平成18年に阿波踊りにストレッチの要素を盛り込んだ「阿波踊り体操」を開発しました。本県においても、今年度より市町や各団体が取り組む「健康体操」の普及促進に取り組んでおり、約60の「健康体操」をHPで紹介しています。今後は、一人でも多くの県民が、理屈ではなく、楽しんだり喜んだりして、自発的に参加するような工夫を凝らしていくことが、県民全体の健康寿命の延伸という真の成果につながっていくと考えます。

また、各地域で特色ある健康づくりの取組みを進めることは、国全体で進める地域を元気づけるための「地方創生」の柱にもなると考えます。県としても、県内外問わず特色ある取組みを行い、実際に指標として成果の上がっている地域の研究や分析を行い、健康づくりの大きな運動へと展開していくことも重要ではないかと考えます。

そこで、本県における健康寿命や、平均寿命と健康寿命の差の現状と、その背景となっている本県の健康づくりの課題をどのようなものだと把握しているのか伺いますとともに、県民が適度な運動に継続的に取り組むしかけづくりをはじめとした、「健康寿命の延伸」を図る施策に今後どう取り組んでいこうと考えているのか伺います。

(2)スポーツの振興について

健康維持には適度な運動が重要なことは十分認識されていると考えますが、取り組むきっかけや継続的に行えることを考慮すると、高齢者まで続けられるスポーツの振興が効果的と考えます。

本県においては、「スポーツ立県ひょうご」の実現をめざし、平成7年には、地域住民の生活範囲内の施設を拠点として日常生活の中に運動・スポーツを取り入れることができるよう「総合型地域スポーツクラブ育成事業」がスタートし、その後、平成12年からは、その育成補助事業として県内の全小学校区でのクラブ設立をめざす「スポーツクラブ21ひょうご」がはじまり、平成17年度には全小学校区で設立され、多様なスポーツ活動による県民の健康の増進に大いに貢献しています。

また、震災復興の経験と教訓や兵庫・神戸の魅力を国内外にアピールするとともに、ランニングを核とした県民スポーツの振興を図る「神戸マラソン」も、今年で5回目となり、例年、参加申込は3~4倍の高倍率となっております。さらに、県下では今年から姫路市で世界遺産姫路城マラソンも開催されるなど、人々の健康への意識の高まりもあって、世間では空前のランニングブームとなっていますが、一方、ランニングを継続できなかった人の約7割が、半年以内にやめてしまうというスポーツ会社の調査結果もあり、スポーツを継続的に続けられるような取組みが必要であります。

私も、山登り、マラソン、自転車等、適度な運動を十数年間、継続的に続けており、それが健康の第一の秘訣と考えていますが、競技として続けることも含め、各県民にとって高齢になっても継続的に続けられるスポーツの振興、定着を図っていくことが、県民の元気、健康の維持には重要と考えます。

そういう中、昨年11月にはシニア世代を対象とした総合スポーツ大会である「日本スポーツマスターズ2017」の兵庫県での開催が決定しました。競技志向の高いシニア世代が対象ではありますが、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年の関西ワールドマスターズゲームズ等の開催への機運と含めて、あらゆる世代の県民へのさらなるスポーツ振興につなげる絶好の機会と考えます。

そこで、日本スポーツマスターズ2017兵庫大会の開催に向けた体制づくりも含め、あらゆる世代にわたる元気な兵庫実現に向け、県民のスポーツ参加を推進し、継続して続けられる生涯スポーツとしての定着を図るための取り組みについて伺います。

4 活力と元気あふれる地域経済の実現について

先日、今年度の国内総生産の実質成長率が、前年度より0.5%減と発表されました。来年度は1.5%増と回復することが見込まれているものの、今年度の結果は消費税率の5%から8%への変更や日銀の大胆な金融緩和の影響を含めた物価上昇による個人消費の予想以上の落ち込みなどが大きな要因と指摘されています。

このような中、安倍内閣においては、地方創生と銘打って、地域再生のための地域の元気づくりを経済立て直しの柱とする一方で、円安などにより業績好調の企業が多く、また来年度からの法人税減税を通じた企業収益の拡大を労働者の賃上げに振り替えることで、家計購買力を増し、個人消費を回復させ、それがさらに企業の業績を押し上げるという「経済の好循環」を狙っています。

また、昨年末の「経済の好循環実現に向けた政労使会議」においても、賃上げに最大限努力することで合意がなされた後、今年に入って使用者側である経団連において、春闘交渉に臨む経営側の方針を示す「経営労働政策委員会報告」で、「賃金の引き上げを前向きに検討することが強く期待される」などと踏み込んだ表現で賃金上昇を明記しています。安倍内閣におけるアベノミクスによる「経済の好循環」を生み出そうという取組みには、日銀による国債の大量買い入れを前提にしており、それができなくなった場合の財政破綻などのリスクに関しては、強く疑問を感じるところですが、賃金上昇から始まる「経済の好循環」については、ようやく、政・労・使が足並みをそろえた取組みとして期待するところであります。

一方、本県に目を移すと、今年度のGDPは4~6月、7~9月とも前年同期よりマイナスとなっており、加えて、個人消費も基調としては緩やかに持ち直しているものの、地域経済の活力と元気を取り戻す動きへの兆しは見えない状況にあります。新年度予算案においても、活力ある地域経済や地域の元気創造を目指した様々な施策を提案していますが、その様々な県事業を賃金の上昇、地域の活力と元気、個人消費の回復につなげる仕組みづくりが必要ではないかと考えます。例えば、日銀神戸支店の管内金融経済概況でも報告されているように、公共投資は高水準で推移しており、それらの公共投資の効果を県下の中小・零細業者にも浸透させるよう、下請、孫請業者等の公共事業に関わる全ての業者にも適切な水準の賃金が支払われるような仕組みづくりを行い、賃金上昇から始まる「経済の好循環」を県内でも実現を図るような取り組みが期待されます。

特に、公共工事に係る賃金の面を考えてみると、本県の公共工事の設計労務単価は、公共事業労務費調査等の結果を受け毎年改定が行われるとともに、急激なインフレ等で請負代金額が著しく不適当となったときは変更請求ができる制度もあります。このような制度やしくみがありますが、これらの好影響が下請、孫請業者等にも浸透し、県下の中小・零細業者の労働者の賃金増加につながっているか疑問であります。労務単価改定に関しては、2月16日の緊急経済対策の質疑の中で、「建設団体等に対して、下請企業を含めての賃金引き上げをあらゆる機会を通じて申し入れている。」との答弁がありましたが、労働者の賃金上昇に確実につながる制度や仕組みをつくることが、今、求められていると考えます。

また、東京都新宿区等では、公共サービス基本法に基づき、発注元による不当なダンピングで人件費にしわ寄せが及んだりすることの防止も含めて、公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件を確保するため、公共事業を実施する事業者の労働条件審査が導入されており、県下の中小・零細業者の労働者の賃金確保の観点からも県としても導入の検討をすべきではないかと考えます。

そこで、以上の点を踏まえ、公共事業における下請、孫請業者等全ての地元中小・零細業者にも適切な水準の賃金が支払われるような仕組みづくりを含め、県として様々な事業展開を通じ、賃金の上昇、個人消費の増加、県内の景気浮揚、地域活性化につなげ、活力と元気あふれる地域経済を実現していくことが求められると考えますが、今後、いかに取り組んでいこうと考えているか伺います。

5 県と神戸市の連携による神戸港開港150年に向けた観光振興について

神戸港は、古来「大輪田の泊」と呼ばれていた時代から大陸との交流が行われ、平安時代には国際貿易の拠点として発展しました。室町から江戸時代には「兵庫の津」と呼ばれ、鎖国政策下での交通の要衝として重要な役割を果たした後、1868年に開港しました。それ以降、第1回のブラジルへの集団的移民が1908年に神戸港から旅立ち、その後、約25万人もの人々が神戸港からブラジルへ移住するなど、日本人の海外へ旅立ちの窓口となるとともに、殖産興業による軽工業や重化学工業の発展、高度経済成長による貿易の拡大などにより、世界を代表する港として大きな発展を遂げ、まさに兵庫・神戸のシンボルとなりました。

また、ジャズやゴルフ、洋菓子など西欧の華やかな文化が、港から神戸の街に文化として定着し、ファッション、スウィーツ等、現在の華やかで先進的な魅力的で住みやすいというまちのイメージをつくるきっかけとなりました。

このようなめざましく、華やかな発展の中で、20年前の阪神・淡路大震災により神戸港もまた甚大な被害を受けた。震災前の平成2年に世界第5位を誇った神戸港のコンテナ取扱量は一気に約半分に落ち込み、その後、量的にはかなり改善してきたものの平成24年には世界第52位という状況にあります。一方、神戸への観光客については、震災前の平成5年度水準に平成13年度には回復し、平成24年度には大河ドラマ「平清盛」の効果もあり、約3280万人と統計開始以来最高を記録しました。

そんな神戸港も、2年後の平成29年1月1日に開港150年を迎えます。神戸市では、先月23日に行政や経済団体、港湾業界団体、地元大学など約50団体で組織した「神戸開港150年記念事業実行委員会」を設立しました。開港150年を先に迎えた横浜港や函館港の事例や国際会議の開催など過去の周年行事の状況等が報告され、記念イベントの進め方などについて意見交換されたとの報道がありました。

めざましい発展の後、震災による壊滅的な被害、そして復興と、辿ってきた歴史はまさに兵庫・神戸の象徴であります。震災から20年が経過し、その復興を広く内外にアピールし、ポスト震災20年のスタートとしてさらなる神戸の発展に向けた取り組みの意味でも、神戸港開港150年を契機とした観光振興に、神戸市と連携して県としても取り組んでいくべきと考えます。

また、神戸市との連携強化については、国内外の都市間競争が激化する中、「2016年神戸サミット」等の開催誘致や「関西ワールドマスターズゲームズ2021」の開催調整等における首都圏での連携や、神戸市による航空・宇宙分野、IT分野等での経済・人材交流の強化・促進を支援するための米国西海岸での連携を深めるため、東京及びシアトルの事務所の共同化を4月1日から行うこととしています。それに続く取組みとして、開港150年に向けた神戸港の魅力向上に対して、県としても各種イベント等を通じた誘客促進、観光振興に神戸市一体となって取組み、国内外に震災復興を強くアピールするとともに、兵庫・神戸経済のさらなる活性化を図るべきと考えます。

そこで、ポスト震災20年のスタートとしての取り組みという観点からも、兵庫の玄関口神戸港の開港150年を契機としたさらなる観光振興に、県と神戸市が密接な連携のもとに取り組んでいくべきと考えますが、ご所見を伺います。

6 地域や産地の自立を促す力強い農林水産行政の展開について

本県の農林水産業については、「厳しい情勢」というのが枕言葉のようになっており、毎年、当局の懸命なご努力に対して「厳しい質問」をせざるを得ない状況となっていますが、明るい話題として、知事も提案説明で述べられていましたが、私も何度か提案してきた新品種のイチゴが県内農家の協力のもと県立農林水産技術総合センターで育成され、「あまクイーン」と「紅クイーン」と命名されました。今後の生産拡大や需要拡大等の取り組みを経て、本県農林水産業の「厳しい情勢」を救うような特産品となることを期待するとともに、当局のご努力に敬意を表し、地域や産地の自立を促す力強い農林水産行政の展開について、質問します。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の進展など、戦後農政の一大転換期を迎えている今、より一層競争力のある力強い農林水産業の確立が求められます。そういう中で、越年したTPP交渉の本格化、その後の妥結も見据え、現在、政府は国内の農業競争力強化を図るために全中の権限廃止などの農協改革を進めるなど、農地集積、六次産業化、輸出促進の3本柱でかなり大胆な農政改革を行おうとしており、まさに大きな転換期を迎える地域の農林水産業にとっては、それらに打ち勝つ力強さが必要となります。

一方、農林水産業は、農地や森林の保全による県土保全の機能に加え、地下水の維持や美しい景観や環境、生物多様性の保全のほか、地域の伝統や文化の継承という、公益的かつ多面的な機能もあることを注視しなくてはならないと考えます。欧州では、このような農林水産業のもつ機能はお金で売買することができず、これらの維持費用は農産物販売で回収できないことから、税金を使ってこの公益的かつ多面的な機能を維持するという考え方があると聞きます。

その点に着目し、個々の農家で行ってきた競争力強化に向けた取組みについては、農林水産業の維持、公益的かつ多面的な機能の維持の側面もあるとして、地域や産地全体での取り組みを促進させ、行政としても地域や産地を守っていく側面からの支援をしていくべきと考えます。すなわち、地域や産地の将来へのビジョンを描き、その実現に向けて農業による地域の自立を促していく仕組みづくりが必要と考えます。

昨年2月の代表質問では、農業を強い産業とするため、生産から流通に至るまでマーケットインの発想に基づいて、オール兵庫で取り組んでいく姿勢が必要と提案し、今年度、「農」イノベーションひょうご、大規模施設園芸団地の整備等に取り組み、マーケットインの発想に基づく付加価値を高める施策を推進していくとの答弁がありました。一方で、先程から申し上げているとおり、大都市と地方との地域格差の拡大、全国各地での大きな人口減少の見込み等が、今年度に入って地方における大きな課題として顕在化してきています。そういう意味で、地域や産地の農業による自立を図るため、少しずつでも、具体的な成果を見せていき、地方の元気回復につなげていくことも重要と考えます。

そういう中、県では、農業改良普及センター等のコーディネートにより、農業・農村が元気で活力ある新たな取り組みに向け、地域や産地を消費と強く結びつけ、地域や農業に流通・加工等の異分野の仕組みや考え方を取り入れ、自立をめざす、ひょうご元気な「農」創造事業に平成24年度から取り組んでおり、特産品の開発や新たな販路開拓などにつながった取組みもあると聞きます。このような事業の成果を踏まえ、他品目・産地についても同様の成果を導き出し、地域全体の元気回復につなげていくことが必要であり、また、激化する国内外の競争に打ち勝つ産地や仕組みづくりが期待されます。

そこで、農協改革をはじめとする農政の一大転換期を迎えるわが国の農林水産業を巡る厳しい現状に打ち勝ち、地域や産地が自立する力強い農林水産業の実現に向けて、農林水産業による地域の元気回復が実感できるような施策を県として仕掛けていくべきと考えますが、今後どのように取り組んでいこうと考えているのか伺います。

7 交通事故対策等の推進について

交通事故対策については、昨年の代表質問において、本部長の決意をお聞きしました。その後、昨年末に死亡事故が急増したことを踏まえ、先の12月定例会では我が会派の藤井議員からもお聞きしました。昨年の死亡事故死者数は、昨年9月末までは115人で、過去最少であった平成21年同期の113人とほぼ同じペースで推移していましたが、その後一転して10月以降の3ヶ月間で67人もの事故死が発生し、結局、182人で前年より5人少なかったが、全国ワースト3位という結果となりました。

特に、平成26年中の高齢者の死亡事故者数は103人で、全死者数182人に占める割合は56.6%で昭和61年以降、過去最高となりました。また、道路横断中になくなった53人のうち8割に当たる43人が高齢者との結果も出ており、高齢者等の交通弱者への安全対策という課題が浮き彫りになりました。

また、全国的にみても、主な原因が75歳以上の運転による死亡事故の割合が年々高まっており、平成25年のデータで全体の12%、458件にのぼるとともに、免許保有者当たりの死亡事故率は75歳未満の2.5倍となっており、高齢者の自動車運転への不安が数字となって出ている現状もあります。

高齢者への対策をはじめ、交通事故には様々な背景、要因、課題がある中、昨年の代表質問では、警察庁でも交通部門の要職を歴任されてきた本部長に対し、「安全」と「円滑」に配意した交通社会の実現への思いをお聞きしました。特に、「安全」面での交通事故の課題について、死亡事故が多い兵庫県において、知識と経験を生かして、少しでも改善できれば、と着任会見で述べられておられました。

そこで、昨年の本県での交通死亡事故等の状況、要因等を踏まえ、本部長の知識、経験から、本県の交通事故の現状をどのように認識しておられるか伺いますとともに、今後の交通事故対策をどのように進めていこうと考えているのかあわせて伺います。

石井 秀武

(神戸市西区)

一般質問

(山本 千恵 議員)[発言方式:分割]

1 成熟した多文化共生社会の構築に向けた取り組みについて
(1)多文化共生推進プランの策定について
(2)日本語指導が必要な外国人児童生徒の高校進学について
2 女性の就労環境の整備支援について
3 地域包括ケアシステムの構築に向けた定期巡回・随時対応サービスの充実について
4 大規模災害時における被災者支援拠点について

質問全文

質問者 山本 千恵 議員(民主党・県民連合)

質問日:2月23日(月)

【分割質問・分割答弁方式】

(1(1)~(2):一括、2~3:一括、4)

今任期の最後の一般質問は、人口減少がますます進む将来の兵庫県の姿を念頭に置いて行います。

21世紀兵庫長期ビジョンでも一つの目標年度として示されている2040年の姿について、冒頭で再確認しておきたいと思います。

今から25年後の2040年、私は60代後半を迎えています。兵庫県の人口は、約467万人と予測され、1970年頃と人数的には同水準です。しかし、65歳以上の人口割合は、1970年に6.9%だったのが、2040年には36.4%。人口総数が同水準とはいえ、その内訳は全く異なります。

一方、1968年(昭和43年)度の県の予算は、県税収入が609億円、一般行政経費は700億円、一般行政経費の伸び率は16.1%、公債費比率は3.5%。明石海峡大橋の建設が確定的になり、開発や水道事業をはじめとするハード整備が重要施策でした。ちなみに、昨年度決算の県財政に公債費が占める割合は14.5%でした。

マンパワーも充実し、生産力や財政的な弾力性もあった時代から、生産年齢人口に効率性と高負担が求められる時代になります。

社会が変化に対応できる、しなやかで強い地域づくりに向けて、以下4項目5問の質問を行います。

1 成熟した多文化共生社会の構築に向けた取り組みについて

(1)多文化共生推進プランの策定について

この質問を取り上げるのは、最初の一般質問に次いで2回目となります。地域の国際化や多文化共生について現在根拠となっているのは、平成6年に策定された「地域国際化推進基本指針」と、平成16年に取りまとめられた「兵庫国際化新戦略懇話会報告」です。最初の質問時でも、後者の報告を元に、外国人県民共生会議など、多文化共生に関する施策を進めているとの答弁がありました。

国の動きは、昭和62年の旧自治省「地方公共団体における国際交流のあり方に関する指針」、昭和63年「国際交流のまちづくりのための指針」、平成元年の「地域国際交流推進大綱の策定に関する指針」、平成18年の総務省の「地域における多文化共生推進プラン」と変化し、生活者としての外国人が増えてきた社会変化に鑑み、第三の柱として「地域における多文化共生」を位置づけることを求めています。

兵庫県では、外国人県民共生会議において、外国人県民の状況や課題の吸い上げを行い、施策に反映させながら取り組みを進めており、今困っていることについては、一定の施策展開を進めようとされていると思います。

一方で、全体の進め方として、国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的差異を認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくような、地域における多文化共生の推進を、計画的かつ総合的に実施するためには、10年前の報告を根拠にするにとどまらず、プラン策定を具体的に検討すべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

(2)日本語指導が必要な外国人児童生徒の高校進学について

平成26年度の「日本語指導が必要な児童生徒の受入れ状況等に関する調査」によると、兵庫県内で日本語指導が必要な外国人児童生徒は802名で、母語別では、中国語、ベトナム語、フィリピノ語の順です。

平成26年3月卒業の日本語指導が必要な外国人児童生徒の進路状況を見ると、卒業生30名のうち、公立全日制5名、定時制12名、私立全日制8名、就職1名、無職・その他4名となっています。

中学校卒業生の高校等への進学率が98.3%、日本語指導が必要な外国人児童生徒の進学率が83.3%であることからわかるように、学習機会の公平性が十分でないといえるでしょう。

平成23年3月に文科省が出している「外国人児童生徒受入れの手引き」では、新たな課題として、母語・母文化の習得援助に次いで、義務教育終了後に、将来に希望を持てる適切な進路指導の必要性が示されています。なお、同手引きには、当時の県教育委員会事務局人権教育課長が作成協力者として加わり、県の「子ども多文化共生センター」の取り組みが、好事例として紹介されています。

さて、この問題については、先の決算特別委員会において、わが会派の藤井訓博議員が質問を行い、外国人入試特別枠に関する研究を進めている旨の答弁がなされたことから、進学後のフォロー体制の充実もあわせて求めたところです。

外国人入試特別枠の設置に関しては、入試制度の変更を伴うことでもあり、引き続き十分に調査を進めていただきたいと思いますが、まずは、当該児童生徒について、十分に状況を把握していくことが非常に重要だと考えます。

大阪市の場合、市立学校にセンター校を設置し担当教員が付くことで、生徒の状況を把握し、学習理解のレベル測定を行っています。このことにより、必要な具体的な支援が明確になり、的確な進路指導を行うことができます。兵庫県においても大阪市と同様の取り組みを市町教育委員会に促すとともに、外国人児童生徒が、なぜ進学できなかったのか、どの様な理解レベルだったのか等の情報を県で集約する必要があるのではないでしょうか。

文科省が平成26年1月に発行した「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント」(DLA)を活用できる人材を育成し、当該生徒の日本語能力の測定・評価を徹底することにより、中学を卒業するまでに必要な支援、検討すべき入試制度の形や入学後のフォロー体制の検討ができるのではないでしょうか。

子どもを取り巻く課題を解決するに当たり、まずは、状況をしっかり把握することが重要だと考えますが、現状と今後の方針について、ご所見をお伺いします。

2 女性の就労環境の整備支援について

国において「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案(仮称)」が検討されたことに見られるように、持続可能な地域づくりや地域経済の維持、少子高齢化、人口減少の突破口の一つとして、女性の活躍推進に大きな期待がかけられています。

兵庫県では、就業促進やワーク・ライフ・バランス推進などは産業労働部が、子育て支援や男女共同参画推進などは健康福祉部が所管しています。目指すべき具体的な将来像が各部局間でずれていたり、各部局間文化の違いを乗り越えなければ、高い事業効果は望むことはできませんので、ここは力を合わせ、組織横断的に頑張ってもらいたいと思います。

さて、①働く女性の割合が高い国ほど、出生率が高くなる傾向がある。②夫が育児を手伝わない国では、出生率が低くなる傾向がある。③子どもが多い国は、アメリカのような自由主義風の「フレキシブル社会」か、スカンジナビア諸国に見られるような福祉国家風の「優しい社会の」いずれかで、中途半端な社会では出生率が低い。

これは、2008年9月30日の東洋経済オンラインで佐々木紀彦氏が、「ニューヨークタイムズマガジン」の「No Babies?」という記事の要点を紹介したものです。

女性の社会参画や就業率が高いことと出生率に相関関係があるということは、労働力人口の低下を食い止めるという意味合いだけではなく、地域維持の要ということでもあります。

県の取り組みを、対象別に捉えてみると、出会いの創出・子育て支援・再就職支援などの当事者支援と、育休・介護休暇取得代替要員や再雇用助成金や協定制度や表彰などの間接支援(企業支援)とみることができます。

女性の年代別の就業状況を確認してみると、結婚や第1子出産時に退職して、再就業の時にはパート・アルバイトになる人が多く、逆に第1子出産時に仕事を辞めなかった人は、第2子、第3子出産時にも仕事を辞めない人が多いことが分かります。

裏を返せば、結婚や第1子出産時に、就業継続を選択できる環境や条件を整える、そのための就業環境を変えていくことに挑戦する必要があるということではないでしょうか。県が来年度から取り組む在宅勤務への挑戦のように、子育てや介護をしている従業員の働きやすい仕組みの開発などに取り組む場合の支援があってもいいのではないかと考えます。

厚生労働省が「ポジティブ・アクション能力アップ助成金」を平成26年度に新設しました。現時点まで兵庫県下の利用実績はありません。これは、新制度であることに加え、道案内人がいないことが原因だと思います。

ひょうご仕事と生活センターで展開されている、育児・介護休業の代替要員確保や再雇用の助成制度に加えて、企業の仕組みづくりや新しい挑戦を支援するような、(出生率の向上や女性就業率の向上から見れば)間接支援の充実が必要だと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

3 地域包括ケアシステムの構築に向けた定期巡回・随時対応サービスの充実について

団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題を目前に、2017年より本格的に構築に向けた取り組みをスタートさせなければならないのが地域包括ケアシステムです。そもそも2000年にスタートした介護保険制度は、介護福祉の社会化を目指した制度でしたが、急速な高齢化に制度疲弊を起こしていると言わざるを得ません。この現状を鑑み、「可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるように」という表現で、今一度、介護を地域や家庭に戻していくのが、この地域包括ケアシステムなのです。

兵庫県の高齢化率は26%(H26.9末)、人数にして約144万人(H26.9末)です。特別養護老人ホームは、中重度要介護者に重点化する、基本的に要介護3以上の方しか利用できない方向性が打ち出されていますが、この要介護3以上にあたる方は、約8万8000人です。

ところが、施設の整備状況を見てみると、計画通り(前倒しによりそれ以上の)整備が進んでいるとはいえ、特別養護老人ホームのベッド数は、約2万3000床(地域密着型の特養を含む)。有料老人ホームなどもありますが、特別養護老人ホームを利用している人のうち約8割が低所得者であることを鑑みれば、特別養護老人ホームのベッド数の不足具合が感じ取れると思います。

入所を希望しても入所できないとなると、比較的重度であっても在宅介護にならざるをえません。地域包括ケアシステムでは、24時間定期巡回・随時対応サービスがカギになってきますが、兵庫県の利用実績は、平成25年度は、前年度に比べて飛躍的に増加したとはいえ、計画値4,168人に対して利用は1,115人です。また、サービスを提供する事業所数は、平成27年1月末で、神戸市の9事業所のほか、尼崎市、たつの市など、全部で17事業所にとどまっています。

地域包括ケアシステムのニーズを見据えたスタートを切るためには、定期巡回・随時対応サービスの普及・充実が欠かせませんが、潜在的なニーズに対し、事業所数に顕著な増加が見られない背景として、一般的には看護と介護の連携不足や訪問看護師不足などの問題が指摘されています。

そこで、現在の利用状況を踏まえ、県としての現状の課題に対する認識、今後の取り組みの方向性についてお伺いいたします。

4 大規模災害時における被災者支援拠点について

阪神・淡路大震災から20年の節目の年を迎え、来年度予算でも防災・減災関連の事業拡充に見られるように「伝える」「備える」「活かす」取り組みが強力に進められています。

阪神・淡路大震災では、県内6,402名の死者のうち、919名(14.35%)の震災関連死がありました。南海トラフ巨大地震・津波の被害想定では、建物や人、生活支障など、各被害想定がなされていますが、震災関連死については具体的な被害数値が記されていません。表現が難しいデータであることは理解していますが、東日本大震災においても、震災関連死が全体の16.27%であったことを考えると、一定程度、震災関連死が発生してしまうことが予想され、過去の被災経験から、高齢者や障害者などの要支援者にその危険性が高い傾向があります。

一度は助かった命を落とさないためには、発災後の被災者支援のあり方についても、備えを進めていく必要があります。

兵庫県は、災害時要援護者支援指針や避難所管理運営指針などを策定し、その具体的な実施については、自助・共助を基本としつつ、市町が中心となって準備を進めています。しかしながら、南海トラフ巨大地震など、超大規模災害の場合、災害時に地域のリーダーになってくれそうな人も、同時に被災者であり、市外・県外からリーダーを派遣してもらう必要性があると思われます。例えば新温泉町から伊丹市に派遣をしてもらった場合でも、すぐに即戦力として活動してもらえることが望ましいと思われます。

阪神・淡路大震災、中越沖地震、東日本大震災の支援活動に入ったメンバーで構成される「次の災害に備える企画実行委員会」では、多様な被災者ニーズに応え、備えるために、「被災者支援拠点」という考え方を提唱しています。これは、避難所や被災者への調査・評価(アセスメント)を徹底し、標準化することがベースになります。例えば避難者台帳の様式を充実させ、アレルギー配慮などの特別食の必要数やトイレ介助等移動支援が必要な人数などが一目で分かるようにすることで、避難所の運営にあたる人員の所属に関わらず、円滑で効率的な避難所運営ができるようにすること、また標準化することにより避難所に来たくても来ることができない地域の要支援者への働きかけ(アウトリーチ)も可能にするという考え方です。

現在の県の取り組みを見ていますと、「防災」「減災」への取り組みは積極的に自ら進めているけれども、「発災後」、特に発生直後から中期の取り組みとなると、どうしても市町や各業界での専門的な対応にゆだねる部分が多くなっています。しかし、現在の市町においては、避難行動要支援者名簿の作成も未だ十分ではない状況にあります。被災者支援拠点という視点から見た場合、つまり命を落とさないために必要な情報の把握と整理による標準化については、県がイニシアティブを取る必要があると思いますが、ご所見をお伺いいたします。

山本 千恵

(選挙区:伊丹市)

(上野 英一 議員)[発言方式:分割]

1 人口減少対策について
(1)人口減少社会を生み出した要因について
(2)地域創生に向けた農業への支援について
2 道徳教育について
(1)人権教育と道徳教育について
(2)道徳の教科化に向けた県教育委員会の認識について
3 人口減少社会におけるふるさと意識を持った人材の育成について

質問全文

第326回 2015年2月定例会 一般質問

質 問 日:2015年 2月24日(火)

質 問 者:上野 英一 議員

質問方式:分割方式

私は、今、日本は人口減少社会という国難にあると考えています。地方経済を元気づける当面の対応も必要ですが、一時的な景気対策でなく、真に地方を含めて日本を一から作り直す国家ビジョンが必要ではないかと考えます。評論家の中には、地方創生には「平成の合併」を元に戻すしかないと言われる方もいますが、その是非はともかくとして、国家100年の計を打ち立てなければなりません。人口減少対策に特効薬はありません。今、「3だけ」人間(「今だけ」「自分だけ」「金だけ」)と言われていますが、自分の出世と金儲けだけを考えるのではなく、自分の生まれた町や日本の将来を根本において人生を考える、そのような教育しかないのではないでしょうか。いつの世も国難を切り拓いてきたのは「教育の力」だと思います。「国家100年の計は教育にあり」です。

と申し上げ、以下3項目5点について分割方式で質問致します。

1 人口減少対策について

(1)人口減少社会を生み出した要因について

日本創成会議・人口減少問題検討分科会(座長:元岩手県知事 増田寛也氏)が発表した将来推計人口調査は、社会全体に大きな波紋を拡げ、人口減少対策はその後の国・自治体にとって最重要課題となっています。推計によると2040年には全国896の市町村、実に全国の自治体の約半数が「消滅可能性都市」として、今後、持続的な行財政運営が困難になってくるとされています。県内でも21市町がこの消滅可能性都市に該当しており、神崎郡の3町も含まれています。さらには、896自治体のうち、523の市町村は人口が1万人未満となり、消滅の可能性が極めて高いと報告しています。人口減少の要因は、20~39歳の若年女性の減少と地方から大都市圏(特に東京)への若者の流出の2点であり、少子化対策と東京一極集中の是正を行う必要があると述べられています。

ちなみに、神崎郡における新成人人口と出生数の状況を見てみますと、福崎町の平成27年1月の人口は19,736人で、そのうち新成人数は234人、また23年から25年までの1年間の平均出生数は160人、市川町の27年1月の人口は12,522人で、そのうち新成人数は143人、1年間の平均出生数は73人、神河町の27年1月の人口は11,510人で、そのうち新成人数は149人、1年間の平均出生数は59人、と3町ともに新成人数と比べて出生数が大幅に減少しており、確実に少子化が進んでいます。また、平成26年2月時点における県内の市町別の高齢化率の状況を見てみますと、神崎郡では神河町が32.7%と県内で6番目に高く、次いで市川町が31.9%と県全体の高齢化率25.3%を上回り、福崎町が25.1%とわずかに下回る状況であり、人口減少とともに急速に高齢化も進んでいることが分かります。

なお、神崎郡3町における20年後の人口を新成人数に対する出生数の割合をもとに単純化して試算してみますと、福崎町で現在の19,736人から約68%程度の13,420人にまで減少し、同じく市川町で51%程度の6,386人、神河町で40%程度の4,604人まで減少することなります。もちろん、人口の増減は様々な要因があることは承知していますし、市川町や神河町はここまで人口が減少しないかもしれませんが、ただ、現状もそうであるように神河・市川町の多くの若者が結婚をして福崎町に住んでいるという状況が見られ、自分が生まれ育った地域になかなか人口が定着しないという傾向が今後ますます拡大するのではないかという不安を抱いております。

県においても過去に国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口結果に基づいて、独自に2040年の将来推計人口予測をしており、そのなかで、本県の総人口は2010年をピークとして2040年には現在の553万人から467万人まで86万人も減少することになっています。

確かに、数字的な現象は、増田氏の述べられているとおりだと思いますし、地方においては若年世代の東京や大都市への人口流出が人口減少の大きな要因であると思いますが、やはり根底には効率を優先したまちづくり・国づくり、大企業を中心とした効率を優先した産業・経済構造にあると私は考えています。また、若者を地域に引き留めるには雇用の場の確保が必要だと言われますが、神崎郡で言えば中播磨や東播磨、北播磨、西播磨を通勤圏内と見れば雇用の場は決して少なくありません。十分にあります。しかしながら、地域の優秀な企業が求人を出しても、応募がないということがよく言われます。

こうした現状や先の日本創成会議の予測において、都市部への人口流出が続くことを前提により厳しく試算していることを考えると、県の将来推計人口予測については、少し楽観的な印象を受けるのですが、ここで改めて危機感を持って将来予測を見直すことも必要だと思います。

そこで、本県においても本格的な人口減少社会を迎え、人口減少対策が急務の課題となる中で、今後、各自治体の創意工夫をこらした施策に期待をするところですが、まず、県としてこの人口減少社会を生み出した要因について、当局のご所見をお伺いします。

(2)地域創生に向けた農業への支援について

私が考える個別具体的な人口減少対策として、農業分野について質問いたします。この点については、本定例会で上程されました「兵庫県地域創生条例案」でも地域創生のための人口対策として、農林水産業部門における雇用の創出が掲げられているところです。

本県の農業は全国と比べると兼業農家の割合が高く、また、農業就業人口に占める高齢者の割合も全国平均を上回っている状況にあります。こうした状況を受け、県では新規就農者の育成や6次産業化の推進、さらにはブランド力の強化など農業振興に多面的に取り組まれているところです。

農業の振興という点については、これまでも多くの議員から質問が行われ、県下の事例が示されてきたところであります。私は地域に根付いてきた産業が衰退してしまっては、地域の活性化はないと思っています。神崎郡で言えば、やはり農林業の再興なくして地域再生はないのです。ただ、農業は決して規模の大きなものではなく大部分が米作を中心とした兼業農家と、牧畜・酪農・米作を営農する専業農家が自立した暮らしをされていました。農業が再び活気づくことにより、休耕田や耕作放棄地がなくなれば、自然環境や景観の保全にもつながり地域の魅力もアップし元気になります。

先日1月30日に、姫路農業改良普及センターの皆様と年1回の懇談会を行いました。そのなかで、様々の具体的な取り組みの報告・成果など職員の皆様の熱い思いを受け取りました。懇談会では中播磨野菜増産大作戦、中播磨地域の集落営農の状況、中播磨地域の認定農業者の状況及び中播磨6次産業化塾の取組について意見交換を行いました。私は、集落営農や認定農業者への支援など普及センターの基本的な業務はもちろんでありますが、特に中播磨野菜増産大作戦と中播磨6次産業化塾の取組に大変興味を持ち、今後の生産者組合への成長や起業家の掘起しや起業支援の在り方としてモデル的取組ではないかと感じました。

どちらにも共通していることは、農業生産者や農産物の加工に関わっている方々を集めて、視察・研修や情報・意見交換を行うほか、野菜増産大作戦では、栽培技術・知識、規模拡大とともに、営農意欲の向上に努めることで、野菜出荷組合の結成と域内流通業者との提携という実を結び、また、6次産業化塾では、農産物の加工基礎技術の習得、商品力アップ・経営の把握、販売力強化のネットワークづくり、さらにはイベントでの販売体験等々を通じて、農家レストランの開業(1件:古今)、1グループが商標登録の取得(黒かんべぇ:熟成ニンニク・卵黄ニンニク)、一人は国の6次産業化総合化事業計画の認定(1億円)を受け、パスタ工房(ラビオリほか)・農家レストランを建設するなど成果を生み出しています。また、新しい加工商品8品(シフォンケーキ、黒ニンニク、ふくちゃんいなり、さきちゃん巻ほか)を生み出しています。

このように地域農業の振興にとって農業改良普及センターが果たす役割は非常に大きく、技術支援にとどまらず地域に根ざした取組みを提案し支援していくことは地域農業の活性化には欠かせません。成功するかしないかは、生産者や起業をしようする人の意欲・意識・努力がすべてですが、農業の活性化にとって重要なことは、主要産業として規模を大きくすることではなく、農業の担い手が自立していくことだと考えています。そのためには6次産業化やブランド化といった持続可能な取組みにもチャレンジしていく必要があるわけです。それらを支援することこそが県の果たすべき役割であると考えますし、そのためにも農業改良普及センターの充実・強化が必要と考えますが当局のご所見をお伺いします。

2 道徳教育について

(1)人権教育と道徳教育について

小学校では2018年度、中学校では2019年度から特別の教科として位置づけられる「道徳の時間」について、質問をいたしたく思います。道徳の時間については、学習指導要領に示された内容について体系的な指導により学ぶという各教科と共通する側面がある一方で、学級担任が担当することが望ましいと考えられること、数値などによる評価はなじまないと考えられることなど、各教科にはない側面があることを踏まえ、「特別の教科」として位置づけられています。記述式とは言え評価をすることについては、相当に困難な作業になるだけでなく教員にとっても大きな負担となることと推察いたします。と言いますのも特別の教科である道徳を要として学校教育全体を通じて行うという要素があるからだと考えます。そこで理解を深めるために、事例として改めて人権教育と道徳教育の違いについて押さえておく必要があると考えます。

兵庫教育大学准教授 淀澤勝治先生のレジュメを引用しますが、私は道徳教育とは、いじめや差別に関わって、いじめてしまったり、傍観者になってしまったりするといった「弱さ」「醜さ」が自分にもあることを、気付き・自覚し、葛藤もしながら自分の生き方を見直し、価値の内面的自覚を図り、心を耕し成長することだと考えています。

一方、人権教育とは、人権尊重の精神の涵養を目的とした教育です。昨今、大きな問題となっているいじめについて、なぜいじめ・差別は起こるのか。どうすればいじめ・差別はなくなるのか。じっくりと考えさせる。いじめを受けた者のつらさ苦しさを理解させる。いじめ・差別の構造を理解させる。「いじめは許されない行為で絶対あってはならない」ということを理解させることだと考えています。言い方を変えれば、人権教育は人権尊重の精神を理解し、それが態度や行動となって現れるよう指導する教育であり、道徳教育は心の内面の変化・成長を見守る教育ではないかと考えます。

そこで、人権教育と道徳教育の違いも踏まえた上で、道徳教育のあり方について、当局の考え方をお伺いいたします。

(2)道徳の教科化に向けた県教育委員会の認識について

道徳教育は、先の質問でも確認したように、心の内面が人間的に変化・成長するものであり、同時にまた、多様な価値観が認められるものでなくてはなりません。

教育評論家の尾木直樹法政大教授は、『教科化は一つの価値観を押し付ける。評価が導入されれば、子どもは本心を隠して迎合した発言しかしなくなる。教員はそれが分かっていても、発言を額面通りに受け取って評価せざるを得ない。子供は「先生は何もわかっていない」と不信感を持ち、関係性が崩れるだろう。道徳で大切なのは、多様な価値観の中で子供たちが自ら考え、自由な意見を言えることだ。』と述べられています。また、政治評論家の屋山太郎氏は、『道徳の教科化に賛成だ。「おはようございます」というあいさつや電車でお年寄りに席を譲るといった普通のしつけ、心の優しさを教えるのが道徳教育。子供たちの生活習慣も変わり、親も道徳を知らず、教える場がなくなっている。反対する人たちは、教科にすると右翼が育つと思っているが、道徳はイデオロギーではない。小さいころに教えれば、やさしい社会になる。他人に親切な日本社会を持続させるために必要だ。』と述べられています。

特定の価値観の押し付けでなく、規範意識や思いやりの心豊かな人間性を育む道徳教育を目指すために何が必要なのか、学習指導要領改訂案が示されました。また、夏ごろには検定教科書作成や指導の目安になる要領解説をまとめるとされていますが、現時点における学習指導要領改訂案への対応、並びに県版副読本をどのように活用していくのか、当局のご所見をお伺いします。

3 人口減少社会におけるふるさと意識を持った人材の育成について

冒頭の質問で人口減少社会を生み出した要因について質問をいたしました。また、知事は今定例会の提案説明の中で、「人口の絶対数を増やすのは、相当長期的な課題として、人口の「自然増」と「社会増」の両面からアプローチしていかなければならないという認識のもと、人口の自然増対策については、出会いや結婚支援の充実を図り、だれもが子どもを産み育てられるよう、子育て支援や就業支援などを充実し、人口の社会増対策については若い世代の地域への定着を進めることが必要であるとして、やる気のある働き手が地域に根ざした仕事に就ける環境をつくり、「住みたい」と思える魅力と個性にあふれる地域を兵庫に増やしていかなければならない。」と述べられました。私は、結婚・子育て・就業環境の整備と若い世代の地域への定着「地域に愛着を感じる」意識の問題を述べられていると考えます。

つまり、私は言い方を変えれば、人口減少社会を救うのは家庭、学校、地域における「人を育てる力」ではないかと考えています。知事の仰っている「ふるさと意識の醸成」もそうではないかと、知事がそのことを打ち出された時から色々なところで、そのことを話させていただきました。

これまでは「世界的に活躍できる人づくり」あるいは、「大企業の一線で活躍できる人材の育成」等に偏重しすぎたのではないかと思います。もちろん世界の、大企業の一線で活躍する人材を育てることはそのとおりですが、晩年にはその経験を「郷土の発展に貢献したい・恩返しをしたい」と考えるような人材の育成、あるいは、家族や地域、郷土にこだわり、地域の発展や地域で活躍しようとする人材の育成など、多様な価値観が求められるのではないでしょうか。団塊世代が成人を迎えた昭和45年ごろまでは、いいか悪いかは別として長男あるいは誰かが家を継ぐとの考えがあり、そのために家から通える範囲で仕事を見つけてきたと思います。それでも、幸せな家庭を築き豊かな人生を送ってこられたのではないかと思います。

人口減少社会を救う、国難を切り拓くには、家庭、学校、地域におけるふるさと意識を持った人を育てる力が必要ではないかと考えますが、当局のご所見をお伺いします。

上野 英一

(選挙区:神崎郡)

(岸口 実 議員)[発言方式:分割]

1 高齢者介護支援体制の充実
(1)弱小の社会福祉法人への対応について
(2)離職防止対策について
(3)介護人材の新規リクルートの開拓について
(4)介護離職防止のための仕事と介護の両立について
(5)介護保険制度利用による福祉用具購入等の支払い方法について
2 農水産物の輸出促進におけるオール兵庫での連携について

質問全文

第326回 2月定例県議会 一般質問

質問日 : 平成27年2月25日(水)

質問者 : 岸口 実 議員

質問方式 :分割

1 高齢者介護支援体制の充実

質問の第1は、高齢者介護支援体制の充実についてです。

2015年を迎えました。団塊の世代の方々が65歳を迎え、10年後には後期高齢者となる2025年問題が目前です。介護に関連する項目を纏めて質問します。

介護保険制度がスタートし15年が経過しました。全国の75歳以上の後期高齢者は900万人から1,560万人へ増加、2025年には、2,200万人を超えるとの推計があります。県下では現在の約67万人から約100万人となるとのことです。

このような高齢者人口の激増に伴い制度の必要性はますます高まりますし、要介護状態となった方々が尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう安定した制度の運営を図らなければなりません。

一方、今年度の介護報酬総額は、制度スタートの2000年度の3兆6,000億円から約3倍となる10兆円に、また、2025年にはその2倍となる20兆円近くなると見込まれることなど、制度の維持・安定は非常に厳しい状況にあります。

このような中、国では3年に1度の介護報酬の見直しを行い、2.27%の引き下げを決定しました。

今回の見直しにより、税金、保険料、利用者の総額2,000億円を超える負担軽減がなされることや、介護サービスの充実については報酬の引き上げが行われますが、施設介護現場では介護サービスの質・量の低下についての懸念や問題提起がされています。

(1)弱小の社会福祉法人への対応について

まず1点目として、弱小の社会福祉法人への対応について伺います。

財務省が全国の特別養護老人ホーム6,126施設中1,087施設を対象に行った財務調査では、全国の特別養護老人ホームの内部留保が合計1.8兆円、平均3億円あることや、収支差率が8.7%と中小企業の2%台を大きく上回っていることなど、いわゆる「儲けをため込む特別養護老人ホーム」との指摘がされ、その結果、介護施設事業者に対する報酬の5%削減が決まりました。

これに対し、全国老人福祉施設協議会からは、同協議会、また東京都が行った同様の調査では収支差率はいずれも4.3%と指摘の半分であることをはじめ、特別養護老人ホームの内部留保は一切の法人外資金流出を禁止されており法人内に蓄積せざるを得ない資金であることや、介護保険事業・社会福祉事業に供する資金であること、法人設立にあたり施設の土地・建物は寄付金はじめ補助金・制度融資を活用したものでそもそも自己資本比率が高いこと、また、事業用資産として投入され現預金として積み立てていないことなど多くの誤解があると反論しています。

また、地元明石市内の特別養護老人ホームでお話しをお伺いすると、これらに加え、今回調査の内部留保は純資産の部の「その他の積立金」と「次期繰越活動収支差額」の合計であり、「国庫補助金等特別積立金」を減価償却したものが収益として「次期繰越活動収支差額」に加算され、結果として収支差率を押し上げることとなったもので、社会福祉法人の会計処理方法自体に問題があること、また2ヶ月遅れとなっている介護報酬を補うための運転資金や施設・設備の修繕費等を含んだものであること、施設ごとに内部留保、収支差額に大きくばらつきがあることなど現場の実態をお聞かせ頂きました。

確かに今回の調査での内部留保は1施設あたり平均3億円となっていますが、内部留保の多い上位5%、54施設での平均は13.5億円、下位30%、326施設では平均0.25億円と非常に大きな差が見られました。中でも8.5%・92施設は0またはマイナスとなっています。入居者定員数の大きな施設ほど多くの内部留保を保有し、定員100人以上の施設と29人以下の施設では入居者1人当たりの平均が1.3倍の開きがみられました。

そこで、今回の引き下げが県下の特別養護老人ホームなどの施設にどのような影響を与えるのか、また特に弱小の法人・施設への影響が大変懸念されますが、県としてどのように把握し、支援体制を築くのかをお尋ねします。

(2)離職防止対策について

2点目は、介護人材の離職防止についてです。

1月5日の朝日新聞に「介護職員の相次ぐ退職と採用難のダブルパンチにより新たな入居の受け入れを休止」との報道がありました。明石市内でも人手不足によりショートステイの受け入れを見合わせるなど、一部の影響が出始めました。2025年には介護職員が250万人必要とされ、このままでは30万人が不足すると予測され、人材の確保は待ったなしの課題です。

「介護労働安定センター」の2013年度の介護労働実態調査によると、介護従事者の離職率は前年度比0.4ポイント減の16.6%と2年ぶりに改善したものの、全産業平均の15.6%よりも高いことが発表されました。

離職理由については「結婚・出産」をはじめ、「事業所の理念や運営に不満」や「職場の人間関係」、「収入が少ない」など、職場環境・待遇によるものが大半を占めています。

これらの職場環境の向上について、一昨年の9月定例会で「介護現場の職場環境の改善に向けた介護保険制度の周知・啓蒙について」を質問しましたが、引き続き事業者・利用者とものマナーやモラルを向上させ、介護現場でのトラブルの発生抑制と介護職員のモチベーションの低下を招かないようにしなければなりません。

このような中、県では福祉人材のキャリアアップを支援するため、実務経験年数に応じた基礎研修や専門研修を実施するとともに、在宅での終末期ケアのニーズに応えるため、介護支援専門員協会が実施する介護支援専門員チームケア推進リーダー養成研修などの支援を行っていますが、これらに加え介護職全体の社会的な評価の向上が必要です。

また、待遇面ではこれまで「介護職員処遇改善交付金」や「介護職員処遇改善加算」により待遇の改善を図ってきましたが、福祉施設介護員の平均年収は307.2万円、ホームヘルパーは289.1万円と企業規模10人以上の産業平均年収463.6万円に比べ賃金水準はまだまだ低い状況にあります。

今回の「介護職員処遇改善加算」の拡充により、介護職員の待遇が月額12,000円のアップが可能となりましたが、介護報酬全体が引き下げられたことから、介護職以外の職員とのバランスを考えると介護職員の待遇が本当に改善されるのかとの懐疑的な見方もあります。

そこで、県として介護職全体の社会的評価の向上や処遇改善などの職場改善がすべての事業所において徹底して取り組みがなされることが必要ですが、これらを踏まえ、離職防止対策にどのように取り組まれるのか所見をお尋ねします。

(3) 介護人材の新規リクルートの開拓について

3点目は介護人材の新規リクルートの開拓についてです。

週末の新聞折り込みの求人チラシには、本当に多くの介護人材の募集広告が掲載されています。昨年10月現在の介護関係職種の有効求人倍率は、全国で2.42倍、兵庫県では2.53倍と高い水準で、全国的に都市部ほど求人倍率が高くなる傾向がみられるなど、県下でも阪神間など都市部での採用難の厳しさが伺えます。

先もお話しした地元明石市内の特別養護老人ホームによると、これまでの退職者の補充などの求人は、給与など待遇を引き上げることにより何とか人材を確保することが出来ていたようですが、最近では、待遇を引き上げるだけでは人材の確保が出来ず、また確保ができたとしても市内近隣の施設からの再就職者であるなど複雑な思いがあること、またあわせて介護職員の高齢化も心配とのことでした。

介護業界全体で見ると、これまでは離職者がある一方でそれに見合う参入者があり、何とか成り立っていたものの、最近では介護業界からの離職がとまらず、新規参入者が縮小し続けているのではないかと大きな危機感を抱きます。

このような中、国では厚生労働省の検討会での外国人介護人材の受け入れを容認する中間報告を受け、法改正が行われようとしています。コミュニケーション力確保などまだまだ容易ではありませんが人材確保の有効な手立ての1つとして期待したいところです。また他の都道府県では社会福祉法人が独自に奨学金制度を作り高校と連携を始めたとの報道があります。

県でも、龍野北高校、日高高校への福祉科の設置、県福祉人材センターでのマッチング、介護福祉士等修学資金制度の活用などの人材確保対策が進められ、来年度は医療介護推進基金を活用して介護人材確保が困難な但馬・丹波・淡路地域の事業者を対象とした就職フェアなどに新たに取り組むと提案されていますが、介護分野は慢性的な人材不足の状況にある中、根本的に介護を志す人材を創出することにも、もっと目を向けるべきではないかと考えます。

そこで、介護人材確保に当たっては、中高生への介護職場の魅力発信などのソフト面での充実や、高校の学区ごとへの福祉科設置等の福祉を志す若者を後押しする就学支援などにより、新規リクルートにつながるパイプを太くしていく取り組みが必要と考えますが、所見をお尋ねします。

(再質問・・1(5)まで質問、答弁終了後)

トライやるウィークも、保育の施設には希望が多いですが、介護施設には積極的に来てくれません。そうした意識の改革も必要だと思いますが、当局の所見を伺います。

(4)介護離職防止のための仕事と介護の両立について

4点目は、介護離職防止のための仕事と介護の両立についてであります。

2025年に団塊世代が後期高齢者に、そしてその子どもである団塊ジュニア世代の方々は50歳を過ぎた頃となります。子育てはおよそ一段落し、まさに働き盛りで、社会の第一線での活躍が期待される頃となります。また同時に両親の介護にも直面することになります。介護は高齢者だけの問題ではなく我々自身の問題でもあります。

明治安田生活福祉研究所とダイヤ高齢社会研究財団が「仕事と介護の両立と介護離職」に関する調査を行いました。親の介護を経験「した」、または「している」40歳以上の男女のうち介護開始時の働き方が正社員の人を対象に2,268人から回答を得たものです。

この調査結果によると、介護を理由とした転職者や介護専念者の5割強の人が介護開始から1年以内に離職しています。離職のきっかけは「自分以外に親を介護する人がいない」との回答が男・女、転職者・介護専念者を問わず20%を超え最も多い一方で、介護専念者の女性の5人に1人が「自分で親の介護をしたかった」と自ら進んで決断しているのが特徴的でした。また女性の転職者は「仕事と介護の両立に精神的限界を感じた」や「これ以上会社にいると迷惑がかかると思った」、「職場での理解が得られなかった」など職場環境に要因のある回答が多くあります。介護をするためにある程度の覚悟を持って転職、離職を決断した人が、正社員に転職できたのは男性3人に1人、女性5人に1人で、平均年収も男性では556万円から341万円に、女性では350万円から175万円へと大幅にダウンするなど、自分の選択を否定する者が多くあり、転職を後悔している人も少なくないと分析しています。

あわせて男性の場合、配偶者ありや年収が多い場合、また男女とも子育ての所得確保が必要なケースでは離職は抑制される一方で、男女とも資産が多い場合は離職のハードルが下がっています。また、介護専念者の7割が自分の選択に肯定的であることも分かりました。

さて本題です。離職することなく同じ職場で働き続けている方々も多くあります。これらの方々は一般的な休暇に加えて、「介護休暇制度」や「労働時間や日数の短縮制度」などさまざまな社内の制度を利用し、「職場の介護に対する理解・支援」が得られたとしています。職場環境が支えとなり、本人の仕事を続けたいとする意思が介護離職を防いでいることが分かりました。

このような中、県では、平成21年度にひょうご仕事と生活センターを開設し、中小企業を中心に、介護等の理由で離職した者の再就職支援や介護休業代替要員採用に当たっての助成等を通じ、ワークライフバランスの確保に努めていますが、先のアンケートにあるように大変厳しい現実があります。

冒頭申し上げましたとおり、2025年には県民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者となります。企業等の経営者や介護する人と同じ職場で働く人はもちろんのこと、全ての人が介護を自らの問題と考え、理解を深めていくことがまず必要です。その上で、少し長い取組みになるかもしれませんが、社会全体として働き方を変え、介護しながら働くことが当たり前の世の中にしていかなければ、急激な人口減少と高齢化が同時進行する状況の中では、社会全体が深刻な雇用の不安定な状況となることも危惧されます。

そこで、県として介護離職の現状や再就職が困難な状況を踏まえ、休暇がとりやすい職場の環境整備など仕事と介護のバランスの確立にどのように取り組んでいくのかお尋ねします。

(5)介護保険制度利用による福祉用具購入等の支払い方法について

高齢者介護の項の最後の質問は、介護保険制度利用による福祉用具の購入および住宅改修費の利用者の支払い方法についてです。

介護保険制度利用による、福祉用具の購入および住宅改修費を利用者に支払う際、利用者がその経費を全額事業者に支払った上で保険者に対し介護保険の申請を行う「償還払い」が基本となっていますが、市町によっては利用者が保険適用分の経費の1割を事業者に支払い、残る9割を利用者の委任に基づき市町から直接受領委任払い登録事業者に支払う「受領委任払い」を可能とするところもあります。

県下の市町の状況を見ると、住宅改修費については高砂市等を除き「受領委任払い」が可能となっていますが、福祉用具購入費については神戸市はじめ、尼崎市、西宮市などまだまだ「償還払い」の自治体が多くあります。

福祉用具の中にも高額なものもあるようで、今すぐ必要とする利用者の一時的な経済的負担の軽減も必要です。

そこで、県下の全市町で「受領委任払い」を可能とすべきと考えますが、県として、この件をどう認識し、課題解決に向けいかに取り組んでいこうと考えているのか伺います。

2 農水産物の輸出促進におけるオール兵庫での連携について

質問の第2は、農水産物の輸出促進におけるオール兵庫での連携についてです。

TPP交渉が大詰めを迎えており、今後の交渉次第では県内の農水産業に大きな影響を及ぼします。先の緊急経済対策の補正予算にも農産物直売所での購入促進キャンペーン事業が盛り込まれていますが、これまで県では農・漁業者の経営安定のため、農水産物の出口対策として消費拡大・販路拡大を目指し6次産業化の推進や直売所の整備などを進めてきました。また、平成22年に「ひょうごの美味し風土拡大協議会」を設立し輸出促進に取り組んでいますが、安全性・品質などの優位性を発揮した海外での兵庫県産ブランドのより一層の確立を進め、さらなる輸出を拡大しなければなりません。

しかしながら、輸出は容易なものでなく、現地の食文化や販路開拓、輸送方法・コストなど解決すべきいくつもの難題があり、これらを克服するのに多くの時間とコストを費やすことになります。

これまでの県産農水産物の主な海外展開を見ると、平成24年2月に神戸ビーフをマカオへ初輸出したのを皮切りに、香港、米国、タイ、シンガポール、EU等へと順次販路を拡大させるとともに、兵庫県産米についても平成24年11月の香港への輸出を皮切りに、オーストラリア、ドイツ、台湾、アメリカなどへの輸出が始まっています。また、輸出促進に向けては、会派でも平成25年11月に現地調査を行いましたが、県が香港の日系スーパーで、JA兵庫六甲、JAあわじ島などと連携し、いちじく、柿、たまねぎなどの県産農産物の試食販売、消費者調査を行う「兵庫農林水産フェア」の開催や試験的な通年販売を実施しましたが、好評により平成26年6月からは、淡路島たまねぎ、いちじくなどの県産農産物の通年販売を行っていると聞いています。

一方の水産物では、兵庫県漁業協同組合連合会がブラジルでの海苔販売を目指し5年前から現地での販売調査を行い、今年、現地での焼き海苔販売や焼き海苔加工についてパラナ州等で説明会を開催したと聞いています。

これらは一例ですが、それぞれの取り組みは確かな成果を上げており、販売ルートなど貴重なノウハウを蓄積しています。それぞれの農・漁業者がこれらの情報を共有することにより輸出へのハードルは確実に下がり、一体的な取り組みにより輸送コストの削減をはじめ、メリットも多く出てくると考えます。

そこで、農水産物輸出で築き上げた販売ルートなどのノウハウを相互に活用したり、各分野中心の取り組みでなく、オール兵庫で県が先導してこれまでの情報を共有させた戦略、取り組みが必要と考えますが、これらを踏まえたオール兵庫での農水産物の輸出促進連携について所見を伺います。

岸口 実

(選挙区:明石市)

(黒田 一美 議員)[発言方式:一問一答]

1 地域住民によるふるさとの自然保護活動に対する支援について
2 生活圏を結ぶ明石海峡大橋の更なる料金体系の見直しについて
3 小児がん対策の推進について
(1)こども病院等との連携を踏まえた新粒子線治療施設の整備について
(2)粒子線治療の保険適用に向けた取組み等について

質問全文

第326回 2015年2月定例会 一般質問

質 問 日:2015年 2月26日(木)

質 問 者:黒田 一美 議員

質問方式:一問一答方式

1 地域住民によるふるさとの自然保護活動に対する支援について

地域の豊かな自然を保護・保全する取組みについては、平成22年12月議会

において、私の地元である神戸市垂水区の福田川上流での事例を踏まえて、県や地元自治体との連携が重要であるとの立場から質問をいたしました。あれから4年が経過し、福田川とその支流の小川流域、いわゆる「小川フィールド」における自然保護・保全活動は、地域団体やNPOなどを中心に地域活動として根付いてきており、地域の住民も積極的に関わるなど活動の裾野が拡がってきました。

今回は、これら地域での活動を更に拡げていくことにより、住民が地域の良さを再発見する契機となり、地域への愛着、つまり知事が言われている「ふるさと意識の醸成」につながるのではないかという視点から質問させていただきます。

神戸市垂水区を流れる福田川は、須磨区白川台の落合池を水源として垂水区平磯で大阪湾に注ぐ二級河川であり、河口付近にはクロダイやスズキなどの魚が豊富に生息しており、下流の平磯一帯は魚釣りのポイントとして人気が高く、また、兵庫ノリやイカナゴの産地としてよく知られています。また、上流の須磨区との境を流れる小川流域周辺は、里山など非常に豊かな自然が残されているなど、都市開発が進む中にあって貴重な存在となっています。特に、サワガニ、カワムツ、ニホンミツバチの群生のほか、絶滅危惧種とされているツマグロキチョウなど多様な生物の生息地です。これら生物種の発見や保護活動は地域住民、団体などが中心となって行っており、これまでから定期的なシンポジウムや発表会を開催するなど、広く地域住民の参加を呼びかけてきた結果、現在では、これらの取組みに対する地域での認知度は高まってきましたが、今後は地域活動の枠に収めるのではなく、地域住民一人ひとりが自らの問題として関心を高め参画していくためには、例えば、「兵庫県版レッドデータブック」への掲載や県において豊かな自然を保護する地域として紹介するなど、活動の幅を拡げる仕組みが必要です。

広い面積を持つ兵庫県には、この福田川上流域をはじめとして、都市近郊にありながらまだまだ知られていない自然豊かな地域が数多くあると思います。なかには絶滅危惧種など貴重な生物が発見されることもあるでしょうし、その地域でしか生息していないような生物が発見される可能性もあります。こうした取組みを将来にわたって継続し発信していくことは、自然保護にとどまらず、命の大切さを学ぶことやふるさとに愛着をもつ健全な子どもの育成、さらには自然豊かな地域のシンボルとしても役立つのではないでしょうか。

そこで、特に都市開発が進む都市近郊における自然環境の保護・保全活動について、地域住民が自らの問題として身近にある自然環境への関心を高め参画していくためには、県としてもこれらの先進的な地域をモデル地域として広く情報発信していくことが必要であると思いますが、当局のご所見をお伺いします。

2 生活圏を結ぶ明石海峡大橋の更なる料金体系の見直しについて

私の地元である神戸市垂水区と淡路島を結ぶ明石海峡大橋が平成10年に開通して以来、淡路島へのアクセスは飛躍的に向上し、県内をはじめ阪神間を中心に県外からも多くの観光客が利用しています。本州四国連絡高速道路が発表した明石海峡大橋の月別交通量によると、昨年1月から12月までの1年間で約12,487千台と前年比104%と順調に推移しています。また、この3月から淡路島全域を会場とする淡路花博花みどりフェアの開催により、更に多くの観光客が利用することが予想されます。

一方で、明石海峡大橋は淡路島への観光ルートであるとともに、特に、神戸沿岸地域や淡路島に在住の方にとって、通勤、通学さらには日常の買い物等で利用する生活の道路としての重要な役割を果たしています。

しかしながら、未だ多くの利用はレジャーや物流が主目的ではないでしょうか。神戸と淡路を結ぶ高速バスの運行により通勤、通学時間は大幅に短縮され、来年度から県立高校も神戸と淡路が同じ学区となるなど、通勤、通学圏はより広範囲になってきました。そういう点で考えると、僅か4キロほどしか離れていない神戸と淡路は同じ生活圏と言えます。例えば、通勤や通学だけに限らず淡路島に新鮮なタマネギやレタスといった野菜を買いに行く、反対に毎週末には淡路から神戸に買い物に行くといったことまで含めて日常的な利用がもっと増えてもいいはずです。

また、私の地元である垂水区の明石海峡大橋の出口周辺の丘陵地では大規模な宅地開発が進められており、大型のショッピングセンターや複合型の商業施設が集積するなど賑わいを見せています。一方、垂水区から目と鼻の先にある淡路島では若者が島を離れ高齢化とともに過疎化が進行しています。同じ生活圏であると言ってよい両地域でこのように違いが出ているのです。私は、淡路島から生活の拠点を移すことなく地域に住民が定着するためにも、明石海峡大橋の生活の道路としての位置づけに大きな意味があると思います。通勤、通学は神戸や大阪方面ですが、住まいは自然豊かな淡路島という選択をする人たちがもっと増えてくるような仕組みが必要ではないでしょうか。

明石海峡大橋を渡って淡路島と神戸が僅か2~3分で結ばれたことにより、移動時間で考えれば淡路と神戸は同じ生活圏内にあると言えますが、私は、これまで以上に地域住民の日常的な利用を増やすためには、通行料金の見直しが必要であると考えます。

明石海峡大橋を含む本州四国連絡高速道路については、平成25年12月に国が策定した「新たな高速道路料金に関する基本方針」を踏まえ、生活対策や観光振興などの観点を重視して、平成26年4月からNEXCOと同じ全国路線網に編入され、新たな料金体系に見直しが行われたところです。

適用された新しい基本料金は、ETCを利用する普通車で陸上部については1㎞28.08円から24.6円に、明石海峡大橋については1㎞404.35円から108.1円にそれぞれ引き下げられ、垂水IC~淡路IC間が900円に、垂水IC~洲本IC間が1,860円とより利用しやすい料金水準となりました。

これらのことから、本四連絡道路は、更なる利便性の向上が期待されるところですが、料金割引制度については、土・日・祝日で30%、平日朝夕で最大50%の料金割引を実施しているNEXCOと比較すると、本四連絡道路の休日割引は区間によって割引率が異なっており、例えば、垂水IC~淡路IC間では基本料金と同じ900円、垂水IC~洲本IC間では1,860円の基本料金に対して1,650円で約11%割引、神戸西IC~鳴門IC間では3,280円の基本料金に対して2,620円で約20%割引の休日料金が設定されるなど、NEXCOと料金割引の格差が生じています。

私は、明石海峡大橋については、レジャーや物流だけでなく、同じ生活圏にある淡路と神戸における地域住民の生活を育むうえで欠かせない生活の道路としての役割を一層果たしていくことが必要であり、そのためには、更なる料金体系の見直しが必要であると考えています。

そこで、明石海峡大橋の料金について、NEXCOとの休日割引と平日朝夕割引の格差を解消することにより、さらなる利便性を高めていく必要があるかと思いますが、当局のご所見をお伺いします。

3 小児がん対策の推進について

(1)こども病院等との連携を踏まえた新粒子線治療施設の整備について

がんは昭和56年から我が国の死亡原因の第1位を占め、本県においても、がんによる死亡者数は全国平均を上回る形で増加の一途をたどっており、平成25年のがんによる死亡者数は16,288人で、全死亡者数54,366人の約30%を占めています。

一方、小児がんについても、我が国において小児の死亡原因の上位を占めていますが、成人がんとは異なり、小児白血病のほか多くの種類の胎児性腫瘍や肉腫などから構成され、発症数が少ないことに加えて症例が分散しているといわれています。それだけに、地域における小児の初期診療を担う医師への教育の充実と経験値を高めるためには、専門の医療施設に患者を集約して医療の質を高めることが重要です。また、小児がんは、抗がん剤等の投与による化学療法や放射線治療によって全体の7割が治癒するようになっていますが、成長や時間の経過に伴って、抗がん剤や放射線による副作用により、発育・発達障害等の晩期合併症が多く発生しており、治療後の長期的なフォローアップ体制が課題とされているところです。

県では、県立こども病院が平成25年2月に小児がん拠点病院として国から指定を受けており、地域における小児の初期診療を担う医療機関と連携しながら、小児がん治療の質の向上を図っておられます。

がんの治療方法としては、主に手術、化学療法、放射線治療の3つの治療があり、がんの種類や進行度等に応じて、3つの治療法から1つ、若しくは組み合わせた治療が行われており、現在、こども病院では手術、化学療法のほか、エックス線による放射線治療が行われています。

しかしながら、放射線治療のエックス線については、正常な細胞が損傷を受けることがあるため、特に小児がん治療においては、晩期合併症などの副作用が指摘されているところですが、この度、平成28年度にポートアイランドに移転する新こども病院の隣接地に整備される小児がんに重点を置いた新粒子線治療施設における粒子線治療は、エックス線治療とは異なり正常な細胞を傷つけることなくがん細胞のみをピンポイントで照射するため、身体への負担や副作用も少ないことから、小児がん治療にとっても大きな治療効果が期待されています。このように、こども病院に隣接して粒子線治療施設が神戸に集約されることは小児がん治療の質を高めていくために非常に意義が大きいことです。

また、既に本県には粒子線専門の治療施設である県立粒子線医療センターが平成13年に開設されて以来、昨年度までに5,987名の治療を行い、昨年1年間では745名の治療を行っています。また、当初は動かない部位(鼻、肝臓等)のみの治療でしたが、現在では技術が進歩し、がん死亡1位で動く部位である肺については、ピンポイントで照射し、治療できるようになっています。すばらしいことです。このように、がん治療において優れた実績を誇っていますが、今後、小児がん専門の粒子線治療施設が開設されることで、それぞれの専門分野の特長を生かして、より多くの患者を治療することが可能となります。

そこで、この新しい粒子線治療施設の整備にあたっては、子どもの命を一人でも多く救うため、小児がん拠点病院としての役割を果たす県立こども病院をはじめ、周辺の神戸市立医療センター中央市民病院や先端医療センター、神戸低侵襲がん医療センター等との効果的な連携が欠かせませんが、平成29年度の開設に向けた小児がんに重点を置いた新粒子線治療施設の整備方針について、当局のご所見をお伺いします。

(2)粒子線治療の保険適用に向けた取組み等について

この粒子線治療については、高い治療効果が期待できるとともに、身体への負担や副作用が少ないことなど、これからの小児がん治療に重要な役割を果たしていくことが期待されていますが、一方で、先進医療として区分されているため治療費は患者が全額自己負担しなければなりません。

現在、我が国では保険診療と保険外診療の併用、いわゆる混合診療は原則として禁止されており、治療行為全体が自由診療として保険の適用が受けられないことになっています。国では、混合診療を無制限に導入した場合、患者に対して保険外の負担を求めることが一般化し、患者の負担が不当に拡大する恐れのあることや安全性、有効性等が確認されていない医療が保険診療と併せて実施されることにより、科学的根拠のない特殊な医療の実施を助長する恐れがあるとして混合診療を規制しています。

なお、平成18年度からは患者負担の増大を防止するといった観点を踏まえつつ、患者の選択肢を拡げるために、厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた先進治療については、保険診療との併用が認められており、現在では粒子線治療を含む107種類の医療行為が先進医療として認められています。

しかしながら、小児がん治療をはじめ、先進医療とされる粒子線治療を選択した場合は、一般保険診療と共通する部分は保険給付されますが、300万円程度とも言われている粒子線治療に係る費用は患者が全額自己負担しなければならず、患者にとって大きな負担となっています。

手術や化学療法では治療が困難な部位や症状においては、この粒子線治療が画期的な治療として期待されているだけに、経済的な理由で治療をあきらめてしまう患者やその家族のことを考えれば、一人でも多くのこどもの命を救うためには、粒子線治療施設の整備にあわせて粒子線治療の保険適用が不可欠となってきます。

がんを治す専門の病院と確立された治療法があるにもかかわらず、治療できずに命を落としてしまう、一人もそういうことがない、すばらしい兵庫を創ろうではないでしょうか。県内で2カ所目となる粒子線治療施設の整備を契機として、環境整備の充実とともに患者の経済的負担を軽減する対策を期待するものです。

そこで、小児がん治療をはじめ成人がんを含めた粒子線治療が保険適用されるためには、どのような課題をクリアする必要があるのか。また、大人に対する粒子線治療の保険適用は非常にハードルが高いと聞いておりますが、小児がんについては、将来ある子どもに対する有効な治療法であるだけに何とか保険適用されることを強く願っています。

そこで、小児がんの粒子線治療の保険適用の見通しについて、当局の取組みも含めてご所見をお伺いします。

黒田 一美

(選挙区:神戸市垂水区)

質疑

(前田 ともき 議員)[発言方式:一括]

1 地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金の独自性等について
2 商店街買い物ポイント事業等について
3 人口減少に対する兵庫創生のビジョンについて

質問全文

平成27年2月 第326回定例県議会

2月補正予算(緊急経済対策)に対する質疑

質問日 :平成27年2月16日(月)

質問者  : 前田ともき 政務調査副会長

質問方式:一括質問・一括答弁方式

1 地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金の独自性等について

民主党県民連合議員団の前田ともきです。

会派を代表して、今回の補正予算案に対して、3項目の質問を行います。

今回の政府補正予算においては、本来は当初予算で実施すべきものの多くが補正予算で計上されており、平成27年度のプライマリーバランスの赤字半減をなんとか実現させるために、補正予算に押し込んでいるのではないかという疑問や指摘が衆議院予算委員会でも多くなされています。そのような疑問を払しょくできるよう、我々もしっかりと努力して参ります。

そこで、本補正予算の目玉とされているのが、総額4200億円の「地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金」であります。地域の消費喚起や低所得者対策の「地域消費喚起・生活支援型」(2500億円)と、地方の活性化につなげる「地方創生先行型」(1700億円)の2種類であります。同交付金は、明確な指標の下で客観的な指標の設定やPDCAの体制整備を求める、新しいタイプの交付金とされ、一括交付金とまではいかないものの、趣旨に合致していれば自治体がある程度は、自由に制度設計できるとされています。

一方で、政府が地方創生の理念等を定めた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」には効果検証を伴わないバラマキは避けるべきと記載されています。読売新聞は社説で、「景気の下支えを名目にバラマキ策が紛れ込む懸念は拭えない。」と指摘し、朝日新聞は「カギは地方の知恵、国に尋ねるのではなく、自治体間の学びあいが大切だ。」と指摘しています。

この交付金がバラマキと批判を浴びるのか、県民の方に効果を実感していただけるのか。この点において、兵庫県の政策立案能力が問われるのが、本補正予算のポイントだと考えます。

そこで、まず、「地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金」について、実施計画の提出には、議会での審議・議決を除くと、実質的な時間が非常にタイトな中での政策立案となりますが、兵庫県の地域事情に対応した独自性や、バラマキと批判を浴びぬような効果的・効率的な交付金活用について、どのように検討されたのかお伺いします。

2 商店街買い物ポイント事業等について

次に、同交付金のうち、「地域消費喚起・生活支援型」を活用した事業について伺います。

地域消費喚起・生活支援型では、ポイント事業や買い物券等で低所得者等への支援を行い、消費喚起等につなげようとしていますが、1999年の地域振興券には、約6194億円の予算をかけたものの、3割程度しか新規消費の創出に結びつかなかったという評価があります。今回も温泉地でのお土産購入券の進呈に11.5億円の予算が計上されるなど、新規消費につながるか疑問符が付く事業も散見されます。

特に、商店街買い物ポイント事業では、約21.7億円の予算が計上されていますが、本事業はアクセスできる人が限定される商店街が対象とされています。商店街振興の重要性も十分理解するところですが、地域消費の喚起という趣旨、公平性の原則を踏まえると、スーパーを含めた様々な規模の事業者を対象とすべきではないかとの指摘もあります。

そこで、商店街買い物ポイント事業や買い物券等を利用した観光・特産品の振興に関して、地域消費の喚起効果と公平性という観点でどのような検討を行ったのか伺います。

3 人口減少に対する兵庫創生のビジョンについて

最後の質問は、もう一つの事業「地方創生先行型」に関連して人口減少に対する兵庫創生のビジョンについて伺います。

安倍政権が訴えている地方創生。民主党政権においても地域主権改革を訴えてまいりましたが、地域のことは地域で決める。という方向性に相違はないと思います。

この創生という言葉は、全く新しく創造し、生まれ変わるという意味です。

急速な人口減少と高齢化の進展など、かつてない課題に取り組む日本においては、創生の字の通り、まったく新しい政策の創生も、また求められています。

今回の補正予算における、地方創生先行型の交付金は大項目として、人口の自然増と社会増が挙げられております。平成27年度からスタートする、兵庫県地域創生戦略の策定に向けた実験的取り組みもあろうかと思いますが、従来通りの自然増と社会増で、はたして十分なのでしょうか。

2年ほど前の本会議一般質問において、私は急激な人口減少に対応するには自然増・社会増対策では不十分であることから、インフラを使うから捨てるへ、縮小都市へ方針転換が必要であり、今後は集落や小規模都市の緩やかな移転・消滅・統合に軸足を置いた施策も実行すべきと提言致しました。

その後、日本創成会議による「消滅可能性都市」は大きな反響を呼び、国土交通省は限界集落を維持したコストと地域拠点に移転したコストの比較検証を始めることを決定しました。地域住民の方の感情や意向に十分配慮する必要はもちろんですが、判断の基準となる定量的な試算を今の段階から進めていく必要があります。

そういう中で、本補正予算においては、兵庫県版の人口ビジョン・総合戦略として「兵庫県地域創生戦略」策定予算が計上されています。秋ごろの策定に向けて検討中かと思いますが、急激な人口減少が想定される中、単独維持・拡大ありきの都市政策からパラダイムシフトし、縮小都市・集落の移転や統合も地方創生に資するテーマとなってくるのではと考えます。

また、人口の社会増対策として、農業版設備貸与制度といった今までになかった独自策も本補正予算では計上されています。とはいえ、社会増対策は全都道府県が同じように実施をしているわけであり、今後はより兵庫県の地域性や独自性が求められてくると考えます。

そこで、兵庫県地域創生戦略の策定に当たっての急激な人口減少に対する知事の兵庫創生にかけるビジョンについて、人口の社会増対策として、他の都道府県にはない人を魅了する兵庫県としての政策も含めてお伺いします。

前田 ともき

(選挙区:神戸市東灘区)