議会の動き

黒田 一美議員が一般質問を実施

質問日:平成29年9月28日(木)
質問者:黒田 一美 議員
質問方式:分割方式

1 神戸電鉄粟生線における住民の「参画と協働による特色ある駅づくり」について

神戸電鉄粟生線の利用者数は、人口減少やマイカーの普及に伴って、ピーク時の年間約1,800万人から、ここ数年は800万人台にまで半減し、一時は粟生線の存続すら危ぶまれる状況でした。
こうした状況を受け、県と沿線市では、平成24年度から5年間にわたり40億円の無利子貸付を行う等の支援を行い、その結果、鉄道事業の収支は改善し、会社全体の経営成績も堅調とお聞きしています。

今年度からは、県と沿線市が車両更新等に対して協調支援を行い、来年2月、4月と新型車両2両が導入される予定で、また、沿線市では各種の利用促進に取り組まれています。
このところ、粟生線の利用者数の減少には歯止めがかかっていますが、今後の人口減少の進行等を考えますと、行政による支援に頼るだけではなく、地域の課題として住民も積極的に参画して、持続可能な利用促進に地道に取り組む必要があるのではないかと考えます。
駅に賑わいを取り戻し、駅に人が集まる仕掛けを講じなければなりません。北条鉄道では、駅にボランティア駅長を置き、駅舎内にパン屋を開いたり、婚活相談所を営まれる等して誘客を図っています。

北条鉄道と粟生線では規模が違いますので、同様の取組はうまくいかないかもしれませんが、何か駅に特色を持たせることはできないでしょうか。
例えば、沿線の保育所、幼稚園や小中学校、高等学校、あるいは地域のサークル等で制作された絵画や工芸品等の作品を展示する展覧会を各駅で開催し、各駅を回遊するような仕組みは考えられないでしょうか。

また、それぞれの駅で、スペースを工夫して、今、流行ってきている将棋や囲碁、マージャンをする、また、地域の方のパッチワーク教室や、折り紙教室をする。
さらに、各駅でイチゴやスイカ、野菜等の四季折々の地域の農産物や加工品等を販売するのもいいと思います。

それぞれ小さな取組ですが、単独の駅で行うのではなく、色々な駅で連携して行い、乗客が色々な駅を楽しんで回れるよう、モデル的なマップを作ってはどうでしょうか。
粟生線では、一般の方から公募・選考された「粟生線ブログ駅長」が粟生線沿線を中心とした沿線情報を発信されていたり、利用促進のためのジャズ列車等の企画列車を運行されたりしています。また、神戸電鉄粟生線活性化協議会に地区代表の方々が参画されておりますが、さらに広く地域の方々の参画を求め、地域独自のアイデアを募ることが有益と考えます。
住民が積極的に参画して特色ある駅づくりを行い誘客を図ることが、少なからず粟生線の利用促進と、その地域の振興にもつながるのではないかと考えますが、住民の「参画と協働の特色ある駅づくり」について、当局のご所見をお伺いします。

2 最低賃金制度の県民への周知について

兵庫県の「地域別最低賃金」は、来月10月1日から、1時間819円から25円アップの844円に改定されます。
近年、「地域別最低賃金」は従前と比較すると大幅な引き上げが続き、また、このところ、景気も緩やかな回復基調が続いていると言われますが、生活者にとってあまり景気回復の実感はないのではないでしょうか。パートや派遣等で働く非正規雇用者の割合は約4割にのぼり、生活保護受給者数は200万人を超える等、低所得層の増大や格差の拡大により社会は不安定さを増しているように感じます。

このような社会において、誰もが将来に希望が持てるよう、賃金のセーフティネットである最低賃金制度が果たす役割は改めて重要であると考えます。
「最低賃金法」は、賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的として、昭和34年に制定されました。

同法に基づき、昭和34年には、まず、「企業内の賃金水準を設定する際の労使の取り組みを補完するもの」として、産業別の「特定最低賃金」が設定され、その後、昭和46年にすべての労働者の賃金の最低限を保障するセーフティネットの役割を果たす「地域別最低賃金」が設定されました。
こうした最低賃金制度の重要性や意義が、広く県民に浸透していないのではないでしょうか。

最低賃金に「地域別最低賃金」と産業別の「特定最低賃金」がある事自体も、知らない県民が多いのではないでしょうか。
最低賃金制度の周知については、地方労働局が中心となって実施すべきものとは考えますが、現在の社会情勢から見ても、「特定最低賃金」も含めた最低賃金の重要性は高まる一方であり、この制度と役割を県としても広く県民に周知すべきではないかと考えますが、ご所見をお伺いします。

3 粒子線治療の普及について

(1)神戸陽子線センターの特色と地域医療連携について

本年12月には、全国屈指の粒子線治療実績を持つ「県立粒子線医療センター」の附属施設として、最先端の陽子線治療装置を備えた「神戸陽子線センター」がポートアイランドの県立こども病院の隣接地に開設される運びとなっています。

「県立粒子線医療センター」は、たつの市にございますが、この「神戸陽子線センター」が利便性の高い神戸市に開設されますことは、今後のがんの治癒率の向上に寄与するものと私も大いに期待しているところです。

「神戸陽子線センター」は、県立こども病院と一体となった小児がん患者への陽子線治療をはじめ、「県立粒子線医療センター」と連携し、成人も含めたあらゆる年代の患者に陽子線治療を提供する施設として整備されると伺っています。

そこで、「神戸陽子線センター」が神戸市に開設されるメリットや「県立粒子線医療センター」の附属施設として果たす役割や特色について、お伺いします。
また、県立病院はもちろんのこと、周辺の専門の医療機関と適切な連携を図ることが、さらに多くの患者に高度な治療を提供する機会の増加につながると考えますが、どのように連携を図っていこうとしているのか、お伺いします。

(2)粒子線治療の普及方策について

県立粒子線医療センターでは、他の病院で治療が困難と判断されたがんの治療に積極的に取り組んで実績を上げておられ、粒子線治療は「難治がん」に対する治療方法として期待されるものです。

しかしながら、県民の皆様が粒子線治療をどれくらい知っているのか疑問に思います。と言いますのも、先日、私の県政報告紙に粒子線治療の記事を掲載したところ、すぐに私の元へご相談が寄せられました。
その相談は、ご自身のがんが粒子線治療に適しているのか、どうやって調べてもらえばいいのか、どうやったら粒子線治療を受けることができるのか、といった内容でした。
もし、県民の皆様が、粒子線治療をあまりご存知なく、より適切な治療の機会が失われているとすれば、非常に残念なことです。

今や、医師は、患者に対して取り得る治療方法を示し、患者がその治療方法を選択する時代となっています。患者が粒子線治療とはどのようなものか、どのような疾患に効果があるのかを知っていなければ、医師から説明を受けたとしても、どうしても一般的な治療法である、手術や抗がん剤治療を選択するのではないでしょうか。
また、患者が最初にかかる医療機関の医師が粒子線治療について熟知しているのかどうかということも疑問が残ります。医療が高度化・専門化してきている中で、粒子線治療の有用性について医師に理解を深めてもらうことも、粒子線治療の普及に向けた課題ではないかと考えます。

さらに、治療費の問題があります。粒子線治療には300万円弱の費用がかかります。小児患者については保険が適用されることになっていますが、成人患者については、保険適用となっている粒子線治療は一部の特殊な疾患のみと聞きます。できる限り多くの患者さんに粒子線治療を選択してもらうためには、保険適用疾患の拡大が喫緊の課題でもあります。
粒子線治療が世の中にまだまだ浸透していないのであれば、神戸陽子線センターが開設される、この機に乗じて粒子線治療の普及を図るべきではないかと考えますが、ご所見をお伺いします。

4 学校教育における人権教育、平和教育について

(1)原爆被爆者の被爆体験を通じた教育について

本年、7月7日、ニューヨーク国連本部の会議で、「核兵器禁止条約」が採択されました。
この条約は、ありとあらゆる核兵器関連の活動を禁止しています。
8日前の9月20日に条約の署名が行われ、発効に必要な50か国の批准が初日に達成され、90日後に発効します。

コスタリカのホワイト・ゴメス議長は、「現在と将来の世代の希望と夢に応えることができ、感無量です。」「世界は核兵器の全面廃絶に一歩近づいた。」と述べました。
しかし、アメリカ、ロシアをはじめとする核保有国と唯一の被爆国、日本が参加せず、北朝鮮も話し合いに加わっていないのが残念でなりません。
ともあれ、この歴史的な「核兵器禁止条約」の採択には、核兵器の被害を体験した被爆者の活動と被爆体験の訴えが、大きな原動力になりました。

改めて、戦争の悲惨さを伝え、平和の大切さや命の尊さに気付かせる平和教育の大切さを感じるところであり、その重要な取組として、原爆被爆者の方の自らの体験を聞き、戦争の悲惨さを考える教育の必要性を再認識しました。
しかし、戦後72年が経過し、被爆者の方々の高齢化が相当進み、体験を直接語り継ぐことが困難になってきています。

被爆者の中には、そもそもご自身の悲惨な体験を語りたくない、思い出したくないという方も多く、現在、自らの体験を語る「語り部」をしていただける方は、大変貴重な存在となっています。そのため、広島市では、被爆体験を受け継ぐ「伝承者」を養成しているところです。

兵庫県の被爆者の団体であります兵庫県原爆被害者団体協議会の方々も、今のうちに一人でも多くの人に、子どもたちに伝えたい、その機会が欲しいと切実にのぞんでおられます。
県でも、「語り部」を通じた教育を行われているところですが、少しでも多くの子どもたちへ語り継ぐためにも、残された機会を有効に活用し、さらに積極的に計画的に原爆被爆者の体験を聞く平和教育を行っていくべきではないかと考えますが、ご所見をお伺いします。

(2)肝炎患者の体験を生かした教育について

子どもたちへの教育において、様々な方々の実体験を聞いて社会の現実に触れ、「なぜ、どうして」と考えを深める中で知識や考え方を身に付けることが、生きる力を育むことにつながると考えます。

特に人権教育では、実際に不当な偏見や差別を受けた当事者の方の話を聞く機会を設けることが、人権の意義・内容や重要性について理解を深めるうえで大切です。
兵庫県内では、最近、B型肝炎への偏見や差別をなくそうと、中学校や高校へ出向き、自らの体験に基づき講義を行うB型肝炎患者の方々の活動が始まっています。
B型肝炎は血液や体液を介して感染し、日本脳炎などの集団予防接種の注射器使い回しによる感染被害者は40万人以上とされています。しかしながら、「肌が触れただけで、同じ鍋をつついただけでうつる」といった間違った知識のために偏見を受け、病気を理由に就職を断られることもあります。

こうした差別をなくそうと県内で活動されているB型肝炎患者の方々は、何のつてもないままに、自ら市町の教育委員会や学校を訪ねて、体験談を語る場を設けてもらえるよう働きかけ、講義に至っています。

これまで、B型肝炎患者の方々は、病気が重症化して肝硬変や肝がんになると、医療費の負担が増加し、そのうえ重症化すると働くことが難しくなって収入が激減することから、生活苦や健康不安を抱えて医療費助成の実現に向けた活動等に力を注がれていました。
その厳しい現実の中から、最近では、患者の声を直接聞き、何が正しいのかを自ら考えることで、人が人に寄り添える社会になることを願い、また何か社会に貢献できないかということで、こうした教育啓発活動に力を入れておられるのです。

講義の内容は、B型肝炎患者の経験に基づくものですが、これは間違った知識が、偏見や差別につながるといったものです。このことは、人権教育そのものではないでしょうか。
そういった意味で、B型肝炎患者の方の講義は大変意義深く、すでに県内で数校の学校で実施され、高い評価がなされております。
さらにこの活動が広がるよう何か後押しができないだろうかと考えますが、こうした講義を人権教育として中学校や高等学校で行うことについて、どのようにお考えか伺います。