議会の動き

木戸 さだかず議員が質問(予算審査・財政状況)

質問日:令和4年3月4日(金)

質問者:木戸 さだかず 委員

ロシアがウクライナに対する「全面的な侵攻」に踏み切り、連日、テレビやネットで配信されています。

そこに映し出されるのは、普通の生活を送っていた市民、街の姿です。

ロシアは軍事施設を標的とするとしながら、首都キエフや東部ハリコフなどの戦闘において、民間人も含めた多くの人々の命が奪っており、わが県議会でも断固抗議の決議文を採択したところです。 まずは、この惨禍により命を落とされたすべての方がたへ、深く哀悼の誠を奉げ、大切な家族や友人を失った方、負傷された皆様に、衷心よりお見舞い申し上げさせていただきます。

1.県政方針「躍動する兵庫」の予算への反映について

齋藤県政となり、県予算をより堅実に県民に分かりやすく伝えるために取組まれた大きな3点、将来見通しを試算する上で採用する経済成長率を「成長実現ケース」から「ベースラインケース」に変更すること、県債管理基金への預託金や内部・外部基金の集約を解消すること、企業庁との貸借関係を段階的に解消することは高く評価したい。

知事が本定例会一般質問でも答えられていたように、兵庫県財政の状況を他府県と適切に比較できるようにすることは至極まっとうな取り組みであり、これらの取組みにより将来の財政指標は悪化するが、心ひとつにわたしたちも厳しい財政状況を乗り越えていきたいと思う。

時に、井戸県政から齋藤県政へ変わり、予算編成も手法が大きく変化した。

新しく、職員一人一人から自律的、多発的に業務の創意工夫や変革の提案がなされる県政の実現を目指すというイノベーション型行財政運営をテーマに掲げられているが、こういった職場風土が醸成されれば県民にとってこの上ない利益になると思われる。

また、本定例会の石川議員の「県政改革における県職員や県民との情報共有そして協力関係の構築方法について」という一般質問では、小橋新県政推進室長より、予算編成にあたっては庁内協議を見直し、結果、各部内で議論する時間が増えたこと、事業レビューによる見える化やSNSなどによる発信により県民への理解を深めていきたいとの回答があった。

答弁を聞く限りは、庁内の雰囲気は変わってきているのかなとも思うし、職員の予算への取組も精力的になったものと期待したい。

一方で、最も重要なのは、その取組みが令和4年度予算にどのような形で実を結んだのかである。

知事は、予算方針の大きな柱として「オープンな県政、ボトムアップ県政、誰も取り残さない県政」を編成方針に掲げられている。

ボトムアップ、誰も取り残さないという言葉は、まさに大切な言葉であるが、言葉だけが踊るようではいけない。

令和4年度予算を見ると、確かに県民に正直に厳しい財政事情をオープンにしていると思われるが、前知事以上の県民ボトムアップ、誰も取り残さないという姿勢が予算編成にどのように反映されたのか読み取ることは難しい。

そこで、最初に、齋藤知事の3つの大きな予算方針、オープンな県政、ボトムアップ県政、誰も取り残さない県政は予算にどのように反映されているか、当局の所見を伺いたい。

2.県税収入見込みについて

内閣府による令和4年1月17日の「令和4年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」では、令和3年9月末の緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置の解除以降は、厳しい状況は徐々に緩和されており、このところ持ち直しの動きがみられる。ただし、オミクロン株を含めた新型コロナウイルス感染症による内外経済への影響、供給面での制約や原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意するとともに、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要があると報告されている。

本予算では、県税収入については、企業の業績回復に伴う法人関係税、特別法人事業譲与税、輸入額の増加に伴う地方消費税の増加などにより対前年度比14.2%の増収を見込んでいる。

このような持ち直しが続けばよいが、先にあげた内閣府の報告にも、コロナ感染症による内外経済への影響などによる下振れリスクに十分注意とあるように、今後も予断を許さない状況は続く上に、2月24日に勃発した「ロシアのウクライナ侵攻」により、経済の先行きはさらに不透明な状態となっている。

こういった状況下を踏まえ、県税収入見込みについて、主な税目について、それぞれどのように見込まれたのか所見をお伺いする。

3.シーリング見直しについて

厳しい財政事情を鑑み実施された「シーリングの見直し」で、令和10年度までに新たに累計150億円の効果額を生み出した。これを単年度に換算すると21.4億円となる。県では令和3年度にも、将来の財政見通しが厳しいということで行政経費のシーリング強化により15億円の削減を実施したところであった。

2018年、キャピタルアイの「財務担当に聞く」という特別企画において、当時の宇野企画県民部企画財政局財政課資金財産室長兼副課長は、財政回復に向けた取組みについてインタビューにこう答えている。

「職員数は一般行政部門で、2007年度対比で3割削減し、1999年度対比ではおよそ4割減った。これは全国でもトップレベル。2007年度以降の削減率はトップとなっている。投資的経費の抑制については、1999年度対比での削減率は約6割に達した。」

このインタビューに象徴されるように、これまで兵庫県は様々な行政改革を行い、

令和元年度の決算特別委員会では、戸梶企画県民部長が、既にこの11年間の行財政構造改革の中で、乾いた雑巾を絞るような取組をしてきた中であるので、余力があるわけでは当然ない中、基本的な維持費を除く行政経費について、令和2年度に約12億5,000万円節減することを報告されている。

内容的には、効率的、効果的な事務執行や在宅勤務の推進などによる事務的経費となっている。

つまり、大変厳しい改革をしながらも、雑巾を絞るような取組みの最中ではあるものの、令和2年度で、さらに行政経費を12億円節減したところであった。

このような状況であるが、令和3年度には財政見通しが厳しい見通しとなり、緊急・臨時的な対応ということでシーリング強化を実施し15億円の効果額を、そして本年度はさらに財政見通しが厳しくなるとのことで、再びシーリングを行い、さらに10億円、これはビルドへの活用分を差し引いた額なので、実質は20億円を超える効果額を生み出したという事実がある。

こうなってくると、これは経年で毎年のように生み出すことができる金額なのではないかとさえ思えてくるが、まずは、この点について当局の所見を伺いたい。

4.事業見直しについて

先の質問に続くが、本年度予算ではシーリング見直しと同時に事業見直しも行い、令和10年度までの累計効果額165億円、単年度に換算すると23.5億円の削減が実施されている。

これら事業見直しについては、各方面から賛否あり、一次案から若干変更はあったものの相当な覚悟を見て取れた。

特に、この事業見直しが最初に示された令和3年12月の案には、表紙にわざわざ、「この方針は、「課題と検討方向」で示した検討方向等を踏まえ、行財政運営本部副 本部長である副知事のもと、全部局で検討を行い、新県政推進室が中心となって、 行財政運営方針の見直し(一次案)としてとりまとめたものである」との注釈までうってあった。

要は、この方針はあくまでも職員による案であるということを強調しているのである。これにどういう意味が込められていたかはわからないが、批判があることもわかっていただろう痛みを伴うこの事業見直しを職員がつくりあげたことには敬意を表したい。

他方で、この事業見直しには議員だけでなく県民からも様々な意見が寄せられ、合意形成の在り方、ボトムアップ県政推進にあたっては課題が見つかったのではないかと思われる。知事も、本定例会の一般質問で合意形成の在り方については今後検討していくという趣旨の答弁をしておられる。

そこで、本事業見直しにおける成果と課題についてどのように考えているか所見を伺う。

5. 県債について

1) 資金調達の現状と今後について

本県の県債発行の考え方は、令和3年度予算特別委員会において、増山議員の質問に答えているように、日銀によるマイナス金利政策の導入以降、国内金利が超低金利で推移する中、資金調達に有利なこの市場環境を生かし、年限が10年を超える超長期債の発行にも積極に取り組んでいるとのことで、発行額に占める超長期債の割合は、マイナス金利政策が導入された平成27年度は3割程度であったが、令和2年度では4割程度まで増加をしている状況である。

令和元年度第2回資金管理委員会の議事録要約によると、資金調達に関して、金利の低位安定が続く中、超長期債の発行割合を増やしてはどうかとの意見や、超低金利の継続は従来にも増してより確実となったといった意見があった。

金利が上昇していく局面では、超長期債を発行しておくのが良いが、低金利が続いていく場合には短期債の方が、利率が低く有利となる。

コロナ感染症に加え、ロシアのウクライナ侵攻も市場の先行き不透明感を増大させており、今後の県債発行については細心の注意を払っていく必要がある。

令和3年度の予算特別委員会では、30年の満期一括公募債について、発行予定額100億円に対し5倍以上の需要が確認できたとの報告があったが、直近の投資家需要はどのような状況と捉え、年限割合を今後、どのようにしていこうと考えているのか県の所見を伺う。

2) 兵庫県債の信用力について

国債、県債はリスク・ウェイトゼロの債券であるが、発行体の信用力が他より劣後する場合、スプレッドに差をつけなければ債券を買ってもらえないという世界でもある。

2018年6月13日の大和証券の報告では、R&Iがかつて全ての市場公募団体に付与していた勝手格付で、北海道、大阪府、大阪市、神戸市と並んで兵庫県も「顔悪銘柄」とされたことで、なんとなく買い難いと市場参加者が敬遠し始めたとされている。

近年は、他団体と同じスプレッドで起債できているが、3年前まで兵庫県債もスプレッドに格差をつけないと資金調達できない状況であった。

地方債の日銀担保の対象拡大により、県債は売り手市場であると思うが、やはりしっかりと兵庫県債の信用を高めておくことは重要である。

県債発行方針では、信頼性をあげるために、透明性ある資金調達の実施に加え、投資家に訴求するIR資料を活用した効果的なIR活動の継続が挙げられている。

令和元年度の資金管理委員会では、委員からIRを強化してきた成果が上がっていることへの称賛があったように、着実な取り組みと実績は評価したい。

一方で、20年ぶりの知事交代により、財政の見える化、堅実な将来予測が行われた結果、県財政の将来負担比率、実質公債費比率ともに将来予測は上振れし、令和7年に実質公債費比率は18%を超えるとの試算となった。

神戸経済ニュースによると、これらの行財政改革姿勢は債券市場では一定の評価を得られそうだとまとめられているが、県として投資家の反応をどのように受け止めているか。

また、今回、新たにSDGsを意識したグリーンボンド債を発行することになり、時代を捉えた取組みだと感じるが、これらも含めて兵庫県債の市場における信用評価の現状について県の所見を伺う。

3) 資金調達と基金運用の最適化について

県の資金管理は、資金調達と基金運用で構成されている。当然のごとく、これらを最適に運用していくことが県として求められているが、資金調達が基金運用額を拘束することから、運用の最適化には資金調達と資金運用を一体的に捉える必要があると言われている。

資金調達と基金運用の組み合わせは複雑ではあるが、兵庫県にとって最適な組み合わせは何かを解析しておくことは有益であると考える。

県では、この点はまだ取り組みがされていないと聞く。

埼玉県財政課及び会計管理課職員の論文「マイナス金利政策時代に求められる自治体の財務戦略」では、埼玉県が「資金調達と基金運用の最適モデルの構築」に取組んだことが紹介されている。

そこでは、自治体によって資金調達及び基金運用の管理体制は大きく異なる事、資金調達と基金運用は表裏一体の関係にあると認識し、それらを一体的に運用する仕組みづくりはどの自治体にも必要ではなかろうかと論じられている。

以上を踏まえ、本県における資金調達と基金運用の最適モデルに対する所見を伺う。

6.ふるさとひょうご寄附金について

1) 令和3年度の取り組み効果について

ふるさとひょうご寄附金は、これまでから定例会をはじめ各種委員会で多くの議員が質疑をしている非常に関心の高い事業である。

ふるさと納税の本来の目的に沿って事業を行っていくべき、県だからこそ出来る取り組みをすべきといったものや、積極的な財源確保を求めるもの等、様々な意見が出されてきた。

県では、これまで制度本来の趣旨、目的を誠実に読み取り、施策を展開し、折々に内容を変更・充実させてきたと理解している。

令和3年度予算特別委員会では、ふるさとひょうご寄附金の取組に対して、「プロジェクト方式による寄附は、ここ数年、目標額を達成しているプロジェクトは全体の約半数にとどまっていることから、ひょうごe県民制度と連携し、プロジェクトの概要や事業に携わる生の声をメルマガなどで定期的に配信し、ふるさと納税サイトの拡充、また、そのサイトのアンケート機能を活用した寄附者のニーズ把握などの取組を実施し、さらには、返礼割合を1割から2割に引上げ、内容も充実する」と答弁があった。

来年度は、更に返礼品を充実させると聞いているが、まずは令和3年度の取組効果についてどのように自己評価しているか県の所見を伺う。

2) 来年度の取り組みについて

ふるさとひょうご寄附金は、ふるさと兵庫を応援したい・ふるさと兵庫に貢献したいという方からの寄附制度であり、応援したいという気持ちを汲み取ることが大切である。

これは誰もが思っているところである。

一方で、わが県は、齋藤知事になり、本来、投資しなければならない事業も凍結しなければいけないほど厳しい財政事情にある。

令和元年度決算特別委員会での税務課長の答弁にあるように、個人県民税の均等割・所得割については、ふるさと納税に係る控除額の増加により10億円の減収となっていることがわかっている。

このような状況下であることを踏まえると、今後は返礼割合を上限の3割とするなど、積極的な財源確保策として取り組むべきと考えるか県の所見を伺う。