予算特別委員会質問(教育委員会)
平成26年3月12日(木)
1 幼児期・児童期における情操教育について
はじめに、「幼児期・児童期における情操教育」について伺う。
情操教育については、明確な定義はなされていないようであるが、美しいものを素直に美しいと感じる心や優れたものに触れて感動する心、創造力や知的好奇心、思いやりの“心を育む”教育だと理解しており、すべての教育における基本となるものだと考えている。
来年度の重要施策体系表を見ると、「『確かな学力』の育成」の次に「『豊かな心』の育成」が掲げられており、私はこの順番が逆ではないかと感じている。「豊かな心」を育むことができないと、「確かな学力」もついてこないし、情報教育を施すにしても、思いやりのある「豊かな心」が育まれていないなかでは、活用の仕方を誤ってしてしまうのではないかと思っている。
情操教育の成否は、子どもを取り巻く環境にかかっており、大切なのは、情報を言語で処理できない早い段階から心に響くような体験をたくさん重ねることにより、いかに感性を磨いていくことができるかに懸かっている。
『豊かな心』の育成の項の最初に掲げられている「兵庫型『体験教育』」では、小学生向けには、「環境体験事業」、「自然学校」を行うこととなっている。
体験教育は、知識として身に付けるのではなく、疑似体験も含めた体験を通して心に感性を培っていく事につなげていくものであり、「豊かな心」を育む観点から、特に幼児期・児童期においては自然と触れ合うことに加えて、音楽・美術・文芸など、芸術部門で行う情操教育が重要と考えるが、この点についてどのように認識しているのか、所見を伺う。また、育むべき「豊かな心」についてどのように考えているのか、併せて伺う。
2 小学校における「ことばの力」の育成について
次に、「小学校における『ことばの力』の育成」について伺う。
平成23年度より、小学校において新学習指導要領が全面実施され、5、6年生を対象に、年間35単位時間の「外国語活動」が必修化された。文部科学省のホームページには、「外国語活動においては、音声を中心に外国語に慣れ親しませる活動を通じて、言語や文化について体験的に理解を深めるとともに、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成し、コミュニケーション能力の素地を養うことを目標として様々な活動を行います。」とされている。
「生きる力」の基礎になるのは、「コミュニケーション能力」であり、その土台の上で初めていろいろな能力が効果を発揮する。その「コミュニケーション能力」を支えるのは、母国語である「日本語力」であり、それを「ことばの力」(言語活動)と表現していると私は理解している。
さらに、小学校5、6年生において必須としていた「外国語活動」を、正式に教科とし、小学校3年生から英語教育を開始する方針が文部科学省より発表された。その狙いは初等教育の段階からグローバル化に対応した教育を充実することで、国際社会の中で活躍できる人材を育成することといわれている。
母国語である日本語でのコミュニケーションが出来なければ、英語をはじめ他の言語で伝えたいことを伝えられるはずもなく、特に小学生の間においては、「日本語力」を身に付けていくことを優先させるべきではないかと思う。
しかしながら来年度の当初予算案を見ると、「『ことばの力』の育成のところで、昨年度まで実施していた小学生を対象にした事業が姿を消している。
例えば、今年度までは、教員、保護者、県民等を対象としてひょうご「ことばの力」ステップアップフォーラムを開催し、児童生徒による発表会を実施していたが、学校における言語活動が浸透したのか来年度は姿を消している。
発達段階を問わず、家庭に任せる部分があるのは当然であるが、幼稚園・小学校における教育が基礎にあってこそ、中学・高校での教育が意味を持つことは、教師の方々もいつも言っておられることであるが、来年度、小学校において「ことばの力」をどのように育成しようとされているのか伺う。
3 幼児期における教育の充実について
次に、幼児期の教育の充実に向けた取り組みについて伺う。
先ほどより、「豊かな心」、「ことばの力」の育成について、質問したが、いずれも、幼児期における教育をしっかり行うことにより、その充実が見込めるものである。
本県における幼児期の教育は、記者発表資料を見る限りでは、文部科学省の委託事業を、受託実施しているのみの状況が続いている。ちなみに、今年度は、いわゆる「小1プロブレム」への対応として「幼児期と小学校の『学び』の接続充実事業」を実施しており、来年度は、「幼児教育質の向上支援事業」として、幼児期の教育において、体験を通して言葉の豊かな成長を支える教育を推進する実践研究を行うとのことである。
幼児教育は、遊びの中から、体験として、自然・人・物との関わり、「ことば」「表現」を通した「伝え合う力」を育む、ということから「ことば」で表現する力等を育成する方向に変わってきているのではないかと感じている。
しかしながら、幼児期から小学校低学年までは、「ことば」だけではなく、音や絵などでの表現や身体を使った表現も「心」の形成に大きく寄与するものである。
幼児期の教育は、基本的に市町が担う部分が大きいのは理解しているが、基本的な生活習慣の欠如やコミュニケーション能力の不足、小学校生活への不適応など、県としても積極的に幼児教育に取り組んでいく必要があると考えるが、幼児期の教育における県教育委員会の役割についてどのように認識しているのか、また、今後幼児期の教育をどのように充実させていくのか併せて伺う。
4 小学校におけるキャリア形成について
次に、「小学校におけるキャリア形成」について伺う。
来年度の当初予算(案)を見ると、①キャリアプランニング能力、②コミュニケーション能力、③課題対応能力等を社会的自立に必要な能力として育成するとしている。
また、小学校の教員用に「キャリア教育指導資料」を新たに作成するとしている。先ほど質問したとおり、「コミュニケーション能力」は日本語力を高めていくことで身につくと考えている。また、「課題対応能力」は、状況を読み解く力、例えば、理科の実験に代表されるように「なぜ?」から始まり、実験結果から新たな課題を見つけ解決していくことで身につくものである。
小学生・中学生の間は、このような「コミュニケーション能力」や「課題対応能力」の育成に重点を置く段階であって、将来のあり方や生き方について考えるキャリア教育は高校生になってから十分であり、早くてもせいぜい中学生くらいからだと考える。
そこで、ここで言う「キャリア」とは何か、また、小学校におけるキャリア形成の考え方とともに伺う。
5 いじめを許さない集団づくりについて
最後に、いじめを許さない集団づくりについて伺う。
いじめや問題行動に対して、いろいろな施策を行っていただいていることには感謝申し上げる。
いじめへの対応を行っていくにあたり、まずは、目の前で現に起きているいじめへの対応が優先され、対処療法的になってしまう部分があるのは、一定やむを得ないと思っている。
来年度予算でも、いじめの未然防止について対策を講じられているが、その中で、「いじめを許さない集団づくりの推進」について、以下2点お伺いする。
(1)今年度の成果について
今年度、高等学校においては「いじめを許さないという意識を徹底させるため、人間関係を築き、協力をして問題を解決する力や、思いやりの心を育てる実践的な取組を推進する」とされている。また、新年度から「いじめを許さない集団づくりの推進」として、各学校において、児童生徒が児童会、生徒会活動を通して、いじめ防止や命の大切さを呼びかけるなど主体的な活動に取り組むなどによっていじめを許さない集団づくりを推進するとしている。
今後は高等学校における取り組みを踏まえ、小・中学校へ拡げるものと理解しているが、今年度の高等学校での取り組みについて、どのような成果があったのか伺う。
(2)いじめの原因・背景に対する分析・研究の状況について
昨年2月議会の一般質問において、私は、同学年の児童や生徒の間で共有されている地位の差としての「スクールカースト」について取り上げた。スクールカーストについて、生徒側と教師側の捉え方に差があることを指摘したうえで、「スクールカースト」がいじめを生み出す温床となっているとし、これまであまり重要視されてこなかったクラス内における生徒間の人間関係について平時からその現状について把握する必要性があることを質問した。
その答弁では、「今年度、心の教育総合センターを核として、兵庫教育大学を初めとする専門機関の様々な知見を得ながら、現在の子供社会の変化やその背景を踏まえ、集団行動、集団心理も視野にいれつつ、いじめの原因・背景について、しっかり分析・研究を進め、今後の施策に反映できるように検討する」とのことであった。
そこで、今回、「いじめを許さない集団づくりの推進」を新たに取り組むにあたって、先の答弁にあった、いじめの原因・背景についてどのように分析したのか、その状況について伺う。