議会の動き

小池 ひろのり議員が質問(健康福祉部)を実施

質問日:平成29年10月11日

質問者:小池 ひろのり 委員

1 児童養護施設の現状と課題について

この問題は、昨年の予算委員会で質問しましたが、あまり改善されていないようですので、再度、取り上げたいと思います。

戦後、親を亡くした孤児を中心に、生活基盤を提供してきた児童養護施設は、最近では、児童虐待等で親と分離すべきと判断された子供が、入所者の6割を占めるようになりました。いずれにしても、実質的に扶養してくれる人がいない子供のために、行政が親代わりに手を差し伸べているのが児童養護施設と言えます。

都市部の大規模な児童養護施設では、100名近くの子供が集団生活をしています。生活の基盤は、一応確立されていると言えますが、数々の問題が生じています。

まず、これだけ多くの子供たちが入所していると、目の行き届く保育、個性に合った養育をすることは至難の業であると思われます。更に、子供たちは、施設から小・中学校や高校に通い、卒業し就職をすると同時に施設を去って独り立ちして行きますが、その間、施設の職員が、いくら懸命に子供と関わっても親代わりは出来ません。

また、施設で親や家族の愛、家庭という憩いの場を知らずに育った子供は、社会生活の面でも問題を引きずる場合が多々あると聞きます。特に0~3歳の乳幼児期に家庭を知らずに育つことの問題がいかに大きいかは、想像に難くありません。

ルーマニアのチャウシェスク・ベビーの研究では、“施設で2歳まで育った子供は、里親委託された子供に比べ、甚大な脳の障害を負う”というデータを公表しています。そして、今では家庭の愛を知らない“アタッチメント障害”が定説となってきています。その結果、イギリスのように、全ての施設入所者を里親制度に移管している国も出て来ています。

そこで、厚生労働省は改善策として、当面、大規模施設入所者の割合を減らし、小規模グループホームや里親制度の充実を図ろうとしています。その割合を1:1:1になるような数値目標まで掲げていました。更に、今年8月に厚生労働省の有識者会議から提出された「新しい社会的養育ビジョン」では、3歳未満の子供については、概ね5年以内に75%以上を里親委託する等の数値目標を掲げています。

兵庫県は、他県に比べて乳児院・児童養護施設が多く存在し、里親委託率はわずか15.9%という現状です。特に、乳幼児の里親委託は47人と言う状況で、里親全体での委託率は、大変低く施設に頼り切っているという傾向が強いと言えます。

そこで、質問をします。厚労省の「新しい社会的養育ビジョン」の数値目標に近づける為に、県はどのような施策に取り組んでおられるのかお伺いします。

2 赤ちゃん縁組(特別養子縁組)制度の充実について

この問題も、是非、積極的に県が関わって欲しいと思いますので、再度取り上げます。親が育てられない6歳未満の子供を、別の夫婦が引き取り、法的にも親子となる制度として特別養子縁組制度があります。

他に生みの親に代わって育てる里親制度がありますが、こちらは特別養子縁組とは異なり、法律上の親子関係はありません。

いずれにせよ、生みの親が育てることができない子どもを育ての親に託すのであれば、早ければ早いほど良いという専門家の意見があります。

望まない妊娠や生みの親が養育できない、またはしないという赤ちゃんを、妊娠中から相談を受け、産科医と連携して、特別養子縁組を前提に、里親に託すという制度が、愛知県では30年以上前から進められています。

これは、「愛知方式」と呼ばれる赤ちゃんの養子縁組ですが、これを始められたのは、当事、児童相談所の職員であった社会福祉士の方です。生みの親が育てられない生後間もない赤ちゃんをそのまま乳児院へ入れるという慣例化したシステムに疑問を抱き、「民法にも、児童福祉法にも、児童相談所が赤ちゃん縁組をしてはいけないとは、どこにも書いていない。子どものためになることなら、何をやってもいい。」と、当事としては異例の赤ちゃん縁組を実践されたそうです。

児童相談所には、学校や市役所、保健センター、病院、時には本人から、子どもを育てられないといった相談が入りますので、育てられないと確認できれば、特別養子縁組の親を探すといった流れになるのです。

また、国の施策に於いても、特別養子縁組制度が見直されつつあり、先ほど述べましたように、家庭養育優先の理念の基、里親委託や特別養子縁組を推進していく施策が進められています。

そこで、30年以上も続けられている「愛知方式」と言われる赤ちゃん縁組の歴史を考えるに、なぜ兵庫県では、赤ちゃん縁組は進んでいないのか、また、赤ちゃん縁組の取り組みに対して、どのようなお考えなのかお聞かせ下さい。